俳句ポスト365結果発表

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第169回 2017年4月6日週の兼題

青芝

  • よしあきくん一期一会の一句
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天

青芝に天使の痛覚のはなし
Y雨日
奇妙な句なのですが、一度気になりだしたら逃れられなくなりました。季語「青芝」を描くために、触覚から迫っていく方法は誰でも思いつきますが、まさか「天使」の触覚に発想が及ぶとは驚きました。
目の前にあるのは、柔らかな「青芝」です。一人ではなく、二人かそれ以上の人物が「青芝」に座っているのでしょう。なぜそんな話題になったのかはわかりませんが、「天使」に「痛覚」があるのかないのかについて語り合っているのです。
天から「天使」が落ちてしまった時、生きていられるの? 「天使」って生身の体は持ってない、魂みたいなものじゃないのかな? じゃあこの「青芝」の上に墜落しても痛くない? うーん、どうだろう……。
映画『シティ・オブ・エンジェル』で、女性外科医(メグ・ライアン)と恋に落ちてしまう、「死を告げる天使セス」を演じていたのは、ニコラス・ケイジでした。生身の体を手に入れる=人間になるために、天使セスは、ビルの上だったかなんだったか、高いところから飛び下りるのだったと記憶しています。
「天使の痛覚」は「青芝」の柔らかさを思わせ、その手触りを想起させることによって「天使の痛覚」という詩語が魅力を持ち始めます。下五を「はなし」の一語(平仮名の表記)でさらりとおさめているあたりも、言葉のバランス感覚のよろしさ。次に「青芝」の上に座るときは、わたしも「天使」について考えてみようと思います。

地

ユニホーム青芝つけしまま交換
鯉太郎
試合が終わった後、お互いの健闘を讃え「ユニホーム」を「交換」している場面でしょう。ラグビーでしょうかサッカーでしょうか。「青芝つけしまま交換」という切り取り方によって臨場感が生まれました。「青芝」という言葉が置かれた位置も巧いですね。
青芝に腹這いファウルの笛を待つ
GONZA
激しい接触プレー。「腹這い」のまま「ファウルの笛」が鳴るのを「待つ」という場面を見事に切り取りました。「腹這い」の一語によって「ファウル」をされた方の視点から描いていると分かります。審判にアピールするための「腹這い」でもあるのでしょう。「ファウルの笛」が鳴ると、ゆっくりと立ち上がり、コーナーキックに向かう選手の姿も見えてきました。
青芝やフィールドの投擲の光り
紅の子
スポーツが続きます。「青芝」「フィールド」によって場所が描かれますが、後半「投擲」で映像がさらに明確になります。ハンマー投げを想像したのは、最後の一語「光り」の効果でしょうか。グルグル回ってから、エイヤッ!と放つ「光り」の軌跡が「青芝」の広がりを印象付けます。
青芝や廻りて匂ふさかあがり
しゃれこうべの妻
これもある意味スポーツか。「青芝や」でカットが切れてからの「廻りて匂ふ」という展開に工夫があります。「廻りて匂ふ」って何が?と思ったとたんに「さかあがり」という一語が出現。「匂ふ」実感を読者として追体験させてくれた一句です。
青芝は何故だか雨を甘くする
カリメロ
「何故だか」なんてのは、緩くて甘い言い回しなのですが、こんなふうに使われると、「青芝」に降る「雨」をともに味わっているかのような気持ちにさせられます。「雨」によって鮮やかになる「青芝」の色もまた甘やかなものに感じられます。
青芝に沈むラヂオのダウ平均
かもん丸茶
「青芝に沈む」という描写の後にでてくる「ラヂオ」は、小さなトランジスターラジオでしょう。「青芝」のような場所に「ラヂオ」を持ってきているということは、音楽を楽しみたい人なのでしょうか、いつも聴いている俳句番組を聴き逃したくないのか(笑)。いま流れているのは「ダウ平均」だけど、もうすぐお目当ての番組が始まるという場面か。いやいやひょっとすると「ダウ平均」の数字に一喜一憂している人かもしれないぞ。さまざまな人たちの憩う「青芝」でのささやかな一コマ。
売られたる青芝空が立方体
たんじぇりん金子
「売られたる青芝」とは、売家となっている庭の「青芝」だと読みました。さぞ丁寧に手入れをしてきたに違いない見事な「青芝」のお庭。それが売りに出されているのです。「青芝」の上にある「空」は、その庭のカタチに切り取られた「立方体」。その空の青さも残像として印象的です。
青芝や観光船の笛低し
ちびつぶぶどう
「青芝や」でカットが切れて、次に出てくるのが「観光船」という展開がいいですね。避暑地の湖でしょうか、東京の隅田川かもしれないし、大阪ならば堂島川、土佐堀川、大川なども「観光船」が行きかっています。作者の立っているのは船着き場に続く「青芝」の公園。「観光船の笛低し」という措辞によって、広々とした川面の遠近感が描かれます。特に「低し」という描写の効果を誉めたい作品です。
ぐんぐんぐんぐん青芝迫るパラシュート
めいおう星
おおーこんな発想もありましたか! 「ぐんぐんぐんぐん」というオノマトペの迫力。それが「青芝迫る」様子だと分かった瞬間のスピード感。平面を「青芝」に向かって走っていく「ぐんぐんぐんぐん」かと思いきや、最後の一語「パラシュート」で、それが垂直軸であることが分かる迫力。着地した瞬間の「青芝」の感触も体感させてもらいました。いつか「パラシュート」やってみたくなった!
夏目君発ツ夏芝ノ英国ヘ
このはる紗耶
兼題「青芝」の傍題に「夏芝」があります。「青」という色や柔らかさが印象的な「青芝」に対して、「夏芝」は夏という季節になってグングンツンツン育つ芝のイメージです。
「青芝」ではなく敢えて「夏芝」を選ぶにはそれなりの必然性というヤツが必要ですが、なかなかの技ありの一句。「夏目君」の「夏」との文字合わせ。「英国」という堅い伝統を思わせる国の「夏芝」の印象。夏目漱石の留学の場面をこんな形で表現しつつ、彼が「英国」の「夏芝」に立っている姿も想像させる。見事な企みを堪能させてくれた作品です。

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