俳句ポスト365結果発表

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第170回 2017年4月20日週の兼題

芒種

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天

芒種なり秘詞を次郎に口伝して
谷口詠美
「芒種」とは【芒(のぎ 、イネ科植物の果実を包む穎(えい)すなわち稲でいう籾殻にあるとげのような突起)を持った植物の種をまくころ。】田植えの前の作業の一つ「種蒔き」=稲のもみを苗代にまく作業をするのが「芒種」です。二十四節気の一つ「芒種」は、田の神さまを招く神事とも関係している季語。それを上五「芒種なり」と断定するところから一句が始まります。
「秘詞」とは、田の神を迎えるための祝詞だろうと思います。代々親から子へ伝えられる、「口伝」される「秘詞」を、今年は「次郎」に伝えているというのです。「次郎」は次男の名。では、一家の跡継ぎであるはずの太郎はどうしたのでしょう。病気で亡くなったか、農業を嫌がって別の仕事についたか。はたまた出奔したか、女と駆け落ちしたか。そんな一家の物語が様々に想像されてなりません。

地

暗渠よりどうと吐かるる水芒種
たんじぇりん金子
田植えが近づくと村中の水路に水が走り出します。田に水を張るための水です。「暗渠」から「どうと吐かるる」という描写に臨場感があり、「水」「芒種」と畳みかける着地も、内容に似合います。
あざやかな芒種の雨とおつしやられ
井上じろ
「あざやかな芒種の雨」とは、田植えを前にしての待望の雨であり、田を満たすための水を喜ぶ心でもあります。例えば「あざやかな芒種の雨でありにけり」では、そのまま過ぎて「あざやかな」という美辞が浮きますが、下五「とおつしやられ」と敬語で表現される人物の存在が匂うと、「あざやかな」が俄然、みやびな言葉として味わいを深めます。
顳顬(こめかみ)を絞る芒種の鉄の箍
クズウジュンイチ
「顳?」と文字化けしていましたが、「こめかみ」です。
まずは言葉の意味を確認しましょう。「箍」とは、【桶や樽などの周囲にはめ、その胴が分解しないように押さえつけてある、金属や竹で作った輪。】「顳顬を絞る」は肉体的痛みの比喩ですが、その「絞る」モノが「鉄の箍」だというのです。比喩を重ねながらも破綻してないのがさすがです。
「芒種」の頃の肉体的変調を述べている句ではあるのですが、「顳顬」の痛みを想像しているうちに、まるで己が耕馬になって「鉄の箍」めいた轡をはめられているような気持ちになってしまいました。これも「天」に推したかった作品です。
芒種なり仏の飯はすぐ乾く
うに子
「仏の飯はすぐ乾く」はいくらでもあるフレーズですが、上五「芒種なり」と言い切ることで、この時期の忙しげな農家の仏間が見えてきます。田植えまでの準備の日々。朝炊いて、お供えした「仏の飯」はあっという間に乾き始めます。静かな仏間から、明るい農家の庭も見えます。「芒種」の種蒔きの作業も始まっています。
しゃくしゃくと芒種の空に冷や茶漬け
六々庵
「しゃくしゃく」というオノマトペが、「冷や茶漬け」を食べる音だと分かった時の、食欲という快感。なんとも美味そうな音です。「芒種の空に」という措辞が、忙しい農作業の合間にかっ込む臨場感を醸し出します。同じご飯でも、「仏の飯」とは全く違う健康的な飯です。
芒種病んで無眼の百足産み落とす
ウロ
禾のある植物の種を蒔く時期「芒種」が、無数の脚を持つ「百足」も産み落としているという発想にハッとします。「芒種病んで」という上五の展開に驚きつつ、「無眼の百足」という詩語の恐ろしさに鳥肌が立ちます。
アポロンのくるぶしを刺す芒種の草
ウェンズデー正人
「芒種」は田の神様を迎える頃ですから、どうしても日本的発想になるのですが、神様つながりで「アポロン」を連想した点にオリジナリティがあります。「アポロン」とは、ゼウスの子で【音楽・詩歌・弓術・予言・医術・家畜の神。フォイボス(光り輝く者、の意)とも呼ばれる】神です。「芒種の草」は「アポロンのくるぶしを刺す」勢いでぐんぐん伸びています。「芒種」の雑草に着目した視点も、ひと味違う一句でした。
首謀者のゴーシュ芒種を忘じをり
直木葉子@早口言葉で一句
「首謀者」「ゴーシュ」「芒種」「忘じ」と並べたた言葉遊びでありつつ、「首謀者のゴーシュ」が何かの企みに気を取られて、禾のある植物の種を蒔くことを忘れていた、と読めば、意味としても十分成立します。愉しませてもらった一句♪

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