俳句ポスト365結果発表

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第174回 2017年6月15日週の兼題

夏越

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天

水かけて白飯うまき夏越かな
剣持すな恵
陰暦六月晦日(みそか)=最後の日に行われる大祓の神事が「夏越」です。六月と十二月の晦日は、それぞれ春と夏、秋と冬が入れ替わる物忌み(不吉であるとして物事を忌み避けること)の日とされていました。半年の罪や穢れを祓い、残り半年の無病息災を祈願するために、人々は「夏越」の神事に集うのです。そんな神事の時期の実感を、こんな日常的一コマを切り取ることで表現できるのかと愉快になりました。
夏の暑い時期、炊き立ての「白飯」に「水」をかけて食べることがあります。「水飯」という季語もあるぐらいです。「水かけて白飯うまき」という措辞は、「水飯」という季語をそのまま書いているようなものなのですが、下五に「夏越」という季語が出現したとたん、一句の世界が鮮やかに立ち上がります。
「夏越」の頃の暑さはひとしきりで、食欲も落ちがち。「水」をかけてかき込む「白飯」の美味しさに、生きている実感が漲ります。「夏越」の神事に行く前の腹ごしらえでしょうか。「夏越」にて身の穢れを落とした後の昼ごはんでしょうか。「水」の涼やかさ、「白飯」の白の美しさが、「夏越かな」という清々しいの祓いの場への詠嘆を豊かに支えます。

地

夏越の水雲取山に発す水
山香ばし
「夏越」の神事に使う水でしょうか、「夏越」の境内に涼やかな水音を立てる竜頭水でしょうか。この「夏越の水」は「雲取山」からはるばると流れてくる「水」であるよ、という一句。この山がどこにあるのかは知りませんが、雲を取るかのように高い山と呼ばれているに違いありません。「雲取山」に降る雨が美しい伏流水となり川となり、そして今「夏越の水」となって、人々を清めているのです。これも「天」に推したい秀句でした。
夏越かなごひきのりゅうがみずをはく
ちま(3さい)
「夏越かな」という上五の詠嘆から、平仮名ばかりでつづられた「ごひきのりゅうがみずをはく」という措辞が、映像を切り取ります。大きな神社の大きな手水場か。「ごひきのりゅう」が吐いている「みず」の音、ひんやりとした冷たさ、青銅製の「りゅう」たちの凛々しい顔つきまでもが想像できました。
同時投句「夏越かなてんぐのはなにとりがにわ」も実に可愛い。うちの子たちが大好きだった『てんぐさんとだるまちゃん』の絵本を思い出しました。
もっちりと夏越の菓子の透けにけり
時雨
「夏越の菓子」とは、水無月のことですね。白い外郎の生地に小豆を敷き詰め、三角形に切ったお菓子です。小豆は悪魔払い、三角は暑気払いの氷を模しているのだそうです。「もっちりと」がいかにも外郎らしい感触。「透けにけり」もシンプルな措辞で、「夏越」らしさを表現しています。実感のある上品さがいいですね。
心宿ばうばう脈打てる夏越
土井デボン探花
「心宿」は、「中子星」とも書き、「なかごぼし」と読むのだそうです。辞書には【二十八宿の心しん宿の和名】という解説があります。「二十八宿」の意味が分からないので、さらに辞書を引いていくと【黄道に沿う天空の部分に設けた二八の中国の星座。その起源は諸説があって定かではないが、紀元前数世紀にさかのぼるものとされている。各宿にはそれぞれ規準の星(距星)があるが、各宿の間隔は等分にはなっていない。太陰(月)がおよそ一日に一宿ずつ宿るところと考えられた。】というマニアックな解説。さらにあれこれ調べていくと、蠍座のアンタレスほか二星が「心宿」にあたるのだそうです。
アンタレスたちが「ばうばう」と脈打っている「夏越」でありますよ、という一句なのですね。「心宿」という字面の連想力が、「脈打つ」という措辞をつなぎとして、「夏越」という季語の世界を際立てます。赤い夏がここにあります。
船で行く社なりけり夏祓
松尾千波矢@チーム天地夢遥
「夏越」の傍題「夏祓」です。「船で行く社なりけり」という状況がなんとも涼し気。「なりけり」の言い切りも気持ち良いです。水の匂い、風の感触も伝わります。「夏祓」に向かう船上には、明るい高揚感も広がっているのでしょう。
膝上げてくぐる茅の輪や砂利香る
魚ノ目オサム
「夏越」の傍題には「茅の輪」もあります。「膝上げてくぐる」は、神事を行う神主の動作でしょうか。「茅の輪」をくぐる人々の様子、あるいは自分自身を詠んだのかもしれません。中七「や」の強調の後、「砂利」という足元へカットを切りかえるカメラワークが見事。さらに「香る」という感知には、神事の清々しい緊張感も読み取れます。
匂ひ立つ茅の輪の先に力石
夏柿
「力石」は、かつて力くらべに用いた石です。神社の境内や村々の辻に置いてあることがあります。この句の場合は、季語が「茅の輪」ですから、境内の「力石」ですね。「匂ひ立つ」という「茅の輪」の清々しい香りを描き、その「輪の先」に置かれている「力石」を描くことで、鮮やかな遠近感を表現しています。
山靴の夫婦茅の輪を潜りけり
らくさい
「茅の輪」をくぐる人たちの様子を描いた句もたくさんありました。「山靴の夫婦」というたったこれだけの措辞で、そこにいる二人の人物をありありと描く。見事ですね。これから登る山の麓の神社でしょうか。登山の無事を祈りつつ、半年の穢れを祓います。映像の切り取り方が見事な一句です。
背番号順に茅の輪をくぐらせる
さるぼぼ@チーム天地夢遥
先ほどの句は「山靴」という小道具を巧く利かせていましたが、こちらは「背番号」の一語が効率的に働いています。しかも「背番号順」ですから、チーム全員で参拝に来たに違いありません。「くぐらせる」という措辞から、「背番号」をつけたユニホームの子どもたちを想像。監督なりコーチなりが、「背番号順に並んで!」なんて声を張り上げている様子まで見えてきた楽しい作品です。

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