俳句ポスト365結果発表

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第186回 2017年12月14日週の兼題

石蓴

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天

わたつみのこごりそこねしあをさかも
とおと
今回の兼題「石蓴」は、石蓴でも天草でも若布でもいいんじゃないか?という自問自答との闘いでもありましたね。「天」の一句には生活感がある作品をいただこうと決めていたのですが、この句に出会って、うーむと唸ってしまいました。
「わたつみ」とは、日本神話の海神を指しますが、海や海原そのものを指す場合もあります。海が凝り損ねたものがこの「あをさ」なのかもしれないよ、という発想に強く惹かれます。
私は海の子なので、アオサという季語の現場は近しいものでした。太陽に透ける「あをさ」の緑はまさに春の海原の色であり、半透明のひかりを「こごりそこねし」と表現した点に舌を巻きました。最後の「~かも」という着地の是非は、評価の分かれるところではありますが、「あをさかも」の後の余韻は、つくづく「わたつみのこごりそこねし」モノを眺めているかのような味わいだと受け止めました。比喩を核とした句ではありますが、美しい春の光りと麗らかな潮の匂いが実景としてもゆっくりと立ち上がってくる。それがこの句の真の力というべきかもしれません。
同時投句「あをさ寄すおのころ島の膝がしら とおと」の「おのころ島」は、神々が最初に作った島のこと。イザナギ・イザナミの国生み神話には、春の石蓴の匂いが似合っているのだなあと感銘を受けました。

地

潮を視る暮しに揺れる石蓴かな
ぐずみ
生活感があるという意味では、この句にも惹かれました。海辺の暮らしとはまさに「潮を視る暮し」。その日の満潮干潮が生活と密着しているのです。潮が引けば「石蓴」はペタリと石に張り付き、潮が満ちれば「石蓴」は揺らぎ始める。折々の「石蓴」の表情もまた春の風物詩です。
文語の「かな」に対して「揺れる」は口語。もし文語で統一するのであれば「揺るる」となりますが、生活感という意味では原句の表記「揺れる」のままでもいいかな、と思います。
石蓴掻き海は豊かに濁りおる
シュリ
石についた「石蓴」を搔くと、砂や石蓴屑によって潮は少し濁りますが、すぐに新しい潮と入れ替わります。そんな「海」の豊饒が美しい「石蓴」を育てる。「海は豊かに濁りおる」という措辞もまた春の駘蕩たる気分です。
探鳥の長靴に寄る石蓴かな
かまど
河口の「探鳥」なのでしょう。真水と海水が混じる辺りにも、さまざまな水鳥が集まります。鳥の姿を追ってレンズを覗いていると「長靴」に絡みついてくる「石蓴」に気づきます。春の磯の匂いが、急に濃く感じられる。そんな光景を思い浮かべました。
透きとほる子蟹を宿す石蓴かな
つぎがい
「蟹」は夏の季語ですが、「石蓴」という季語の現場ではこのような光景にもお目にかかります。「透きとほる子蟹」は生まれたばかりの小さな蟹。「宿す」いう動詞の選択は、評価の分かれるところですが、春の命の誕生のイメージを表現したかったのではないかと好意的に受け止めました。「透きとほる」という描写がいいですね。
やどかりの引きずつてゐる石蓴かな
ときこ
こういう光景も見ますね! 「やどかり」は春の季語ですが、こういう場合の季重なりは全く気にする必要はありません。「石蓴」が「やどかり」に引っ掛かっているだけなのでしょうが、それを「やどかり」が「引きずつてゐる」と表現したのが愉快。まさに、春の磯のアルアル感です。
三代目石蓴専用脱水機
かつたろー。
石蓴養殖の現場にも吟行に行ったことがあるのですが、支柱となる杭に張られた養殖網を、舟に据え付けた機械がどんどん巻き上げ収穫する手際に驚きました。
陸揚げされてからの作業も面白かった! 石蓴を洗うための洗濯機みたいな機械もありましたが、この句の「石蓴専用脱水機」は、さらに食品に近づいてからの工程で使われる機械なのかもしれません。「三代目」というのがいいですね。三代目の新しい機械を入れたのかもしれないし、人も機械も三代目なんだけど、これがなかなかにガタが来てる?と読んでも愉快。機械のことだけを言ってるのに、人が見えてくるところがいいなあ。
石蓴干す目視雲量三の空
くりでん
「目視雲量」とは、その名の通り、目で視た雲の量。「目視雲量三」は軽度の曇だけど、お天気でいうと「晴れ」なのだそうです。収穫した「石蓴」を干すにはもってこいの青空。白い雲と緑の「石蓴」のコントラストも美しい春です。
干されたる石蓴ちりちりそそけだつ
はまゆう
「石蓴」の一物仕立て。よく観察し、言葉を選んでいます。「干され」て乾いた「石蓴」を「ちりちり」というオノマトペで表現した句はあるかと思いますが、下五「そそけだつ」という描写が巧い。「石蓴」というモノの質感が表現されていますし、この下五によって中七のオノマトペにリアリティが加わります。
宮島の杓子を垂るる石蓴かな
かもん丸茶
「宮島」という場所から「杓子」という俗なモノが現れ、さらに「垂るる」で何を掬ってるんだ?と思ったとたん石蓴汁の「石蓴」が目の前に突き出される。なんとも愉快な展開です。「宮島」の名物を二つ並べつつ、ちゃんと俳句にしてしまうのですから、なかなか大したものです。

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