俳句ポスト365結果発表

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第188回 2018年1月25日週の兼題

  • よしあきくん一期一会の一句
  • 初心者向け解説コーナー今週の俳句道場
  • 今週のお便り
  • 人・並選の俳句
  • 天・地の俳句

天

薇の巣や耳塚に千の耳
小泉岩魚
「耳塚」とは、戦国の時代、敵の首の代わりに切りとった耳を埋めた塚のことです。討ち取った大将格はその証拠の首を持って来いと言い、後の雑兵は数の功労だという理屈のなんと無残なことか。
そしてその耳も数え終われば無用となる。「耳塚」の一語はそんな時代の背景と共に光景も描き出します。「耳塚」があると伝えられる谷は「薇の巣」。薇がうにょうにょ生えている場所だけど、なんだか落ち着かない気配に満ちています。「薇」の形はたしかに「耳」の形。「耳塚」に埋まった「千の耳」の怨念に押し出されるように「薇」が生えてくるのかもしれないと思うと、ますます怖ろしくなります。鬱蒼と暗く湿った匂いが、我が鼻腔に伝わります。

地

ぜんまいの渦のほどけてわゐうゑを
ひろ志
「ぜんまいののの字ばかりの寂光土 /川端茅舎」と詠む俳人もいれば、その「渦」がほどけてしまうと「のの字」ではなく「わゐうゑを」になってしまうよと笑う俳人もおります。歴史的仮名遣いの「ゐ」「ゑ」のカタチも楽しいね。
ぜんまいの頭ほぐしてみたくなり
dolce(ドルチェ)@地味ーず
綺麗に巻いてるのに「ほぐしてみたく」なるのが俳人と子どもの好奇心というヤツでしょうか。「ぜんまい」をじっと観察しつつ、我が頭もほぐしての一句です。
薇のほどけるといふ一仕事
井上じろ
薇の頭をほぐしたいという俳人もいれば、「薇」になりきって「ほどける」という行為がどんなに大変な「一仕事」であるかと想像する俳人もいます。「○○といふ一仕事」という類型を巧く使いこなしているあたりが、ベテランの技です。
薇の空のびやかに天皇陵
あつちやん
「天皇陵」は宮内庁の管轄。一般人の踏み込めない陵には、鬱蒼と暗い場所もあるのでしょう。見上げた「空」の明るさを「のびやかに」と表現。蕨とは違って湿っぽいところに育つのが「薇」。その湿っぽさと春の空の明るさを一気に映像化している点が巧い作品です。
ぜんまいに包囲されたる月見山
葦たかし
「月見山」は月見を楽しむための山でしょうか。暦学(昔の天文学)の学者たちが観測した小さな丘かもしれないなあ、とも想像しました。夜の「月見山」の周りは「ぜんまい」の宝庫だと分かっている。月に誘われるように、今宵「ぜんまい」はゆらゆらと育っていくのでしょう。
ぜんまいや円周率は3で良し
山香ばし
「ぜんまい」から「円周率」を発想した句は幾つもあったのですが、「円周率は3で良し」と言い切ったのがいい。勢いよく、不揃いに育つ「ぜんまい」たちが見えてくるようで、楽しい一句です。
ぜんまいや空ぶん殴る形して
隣安
「ぜんまい」のあの形を、握り拳に見立てる発想の句も沢山届いたけど、それを拳といわず「空ぶん殴る形」とした点にオリジナリティがあります。ただの殴るではなく「ぶん殴る」という大袈裟も徒手空拳の味わい。
座禅だか寝ているんだか薇長ける
雪うさぎ
「座禅だか寝ているんだか」は、座禅を組んでいる人物に対するつぶやかきもしれないし、長けてしまった「薇」の擬人化かもしれない。上五中七の口調が「長け」てしまった「薇」への嫌みのようにも聞こえて、それもまた愉快な一句です。
ぜんまいと嘘つきそうな顔の山羊
ギボウシ金森
「ぜんまい」を採りに入った山里で「山羊」に出会ったのでしょうか。「山羊」ってどっか信用できない顔つきに見えるよね。「嘘つきそうな顔」が人間ではなく「山羊」であるという着地に俳味があります。
ぜつたいは淋し薇食うてみよ
鈴木牛後
「ぜつたい」に約束するよ、「ぜつたい」に逢いに来るよ、「ぜつたい」に決まってるじゃないか。そんな言葉の虚しさを「淋し」と口にするとまた淋しさが募る。
そんなこの句の眼目は後半の展開。「薇食うてみよ」とおどけてみせているのか、静かに諭しているのか。「薇」は淋しい食物かもしれないと思わせられた春です。これも天に推したかった作品です。

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