俳句ポスト365結果発表

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第190回 2018年2月22日週の兼題

三色菫

  • よしあきくん一期一会の一句
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天

どの色の薬で眠い三色菫
多事
「パンジー」ではなく「三色菫」という呼名が意味と意図を持って機能している句として、これを「天」に推したいと思います。
「三色菫」といえば家庭、学校、公園の春の花壇を彩る代表的な花。一見、明るくて可愛い花ですが、よくよく眺めると生き物の貌のようにも見えてくるし、あれでいて種と根には毒を持っているらしいし、色々な切り口を持つ季語なのだなあと再確認しました。
なんでこんなに眠いんだろう。新しく貰ってきた「薬」のせいだろうか。一体「どの色の薬」のせいでこんなに眠いんだろう。あの色の薬か、この色の薬か。色とりどりの「三色菫」を眺めながら朦朧と思いを巡らせているのです。「三色菫」が春の風にゆっくりと揺れる様子を見ていると、まるで催眠術をかけられているような気分にもなります。下五「三色菫」の字余りも、なんだか眠たげです。

地

三色菫校歌覚える宿題す
山香ばし
入学をすると「校歌」を覚える「宿題」が出されるのですね。校庭の花壇か、家庭のプランターか。「三色菫」はメトロノームのように揺れています。「校歌」の格調高く晴れがましい歌詞を眺めつつ、音をとっていく。「校歌覚える宿題」を完璧にやり遂げるには、もう少し時間がいりそうです。
三色菫こども食堂灯されし
Mコスモ
「こども食堂」という言葉が市民権を得る時代です。「三色菫」が足元を彩る「こども食堂」の灯ともし頃。夕飯を食べに集まってくる子どもたちで賑わい始めます。「三色菫」は「こども食堂」の善意のように、優しい色で咲いているのでしょう。上五に季語を字余りで置いて、中七下五でリズムを整えています。
三色菫新駅のがらんだう
クズウジュンイチ
完成間近の「新駅」でしょうか。中はまだ「がらんだう」で、人もいないけれど、外には「三色菫」のプランターが並べられているのかもしれません。「三色菫」の賑やかさと「新駅」の閑散とした無彩色とを対比させた一句。755のリズムで、合わせて17音となります。
アウシュビッツの門に三色菫かな
あめふらし
こんなところにも「三色菫」は並べられているのでしょう。虐殺の悲惨な遺産として残る「アウシュビッツ」。そこを訪れる人たちを明るい「三色菫」が迎えます。上五を「アウシュビッツの」と7音の字余りで置いて、「門に三色菫かな」で12音構成する。7音の季語「三色菫」の使い方としてこんなやり方もあります。
三色菫密かに飛ぶを知らぬとでも
雪うさぎ
「三色菫」はあの花びらを使って飛び立つに違いないという発想の句は沢山寄せられましたが、この句の工夫は後半の語りです。「三色菫」は人間に知られないように「密かに」飛んでいるつもりなんだろうけど、それをこの私が「知らぬとでも」思っているの? 心の奥で嗤う魔女の台詞みたいな作品です。
三色菫鉄琴の音に醒めたばかり
Y雨日
「三色菫」は音符みたい音譜みたいという発想の句も沢山あったのですが、そこからさらに「鉄琴」という楽器を想定したところにオリジナリティがあります。「三色菫」は「鉄琴の音に醒めたばかり」の貌のように見えたという感覚に惹かれます。「三色菫」を鳴らすと「鉄琴」の音がしそうにも思えてきました。
犬はもう飼わないパンジー咲きやがる
大塚迷路
こちらは「パンジー」の一句。愛犬が死んでしまった悲しみ。「犬はもう飼わない」と決めたのに、今年も春がきて「パンジー」が咲いた。あのあたりの「パンジー」にイタズラばかりしていた愛犬のことを思い出す。「犬はもう飼わない」って決めたのに、「パンジー」は明るく「咲きやがる」んだ。そんな作者の気持ちが、読者の心に一気に流れこんでくる作品です。
同時投句「定年と妻と三色菫かな」もほのぼのと佳い。
風にパンジー警察はまだ来ない
蟻馬次朗
追突でもしたのか、はたまた追突されたか。110番通報したが「警察はまだ来ない」という微妙な時間を想像しました。
路肩の細長い花壇には手入れされた「パンジー」が「風に」揺れている。そんな光景が「風にパンジー」という措辞だけで見えますし、「警察はまだ来ない」で状況がありありと理解できます。17音でここまで伝えられるから、俳句って面白い!
パンジーにしゃがめぬ我も修羅なのだ
くりでん
「パンジーにしゃがめぬ我」とは、花壇の世話も出来ないという意味でしょうか。あるいは可愛く咲いた「パンジー」を愛でる心のゆとりがないという意味でしょうか。手入れのできてない「パンジー」の花壇を思ってもよいし、逆に美しく咲きそろったプランターを想像してもよいけれど、「パンジーにしゃがめぬ我」こそがまさに「修羅」なのだという嘆きに、読者の心はハッと動きます。「バンジー」という明るい響きから一転しての「修羅」という響きのなんと生々しいことでしょうか。
パンジーも美味しいかしらグレーテル
ふじこ
様々な色で咲く「パンジー」は、いかにも美味しそうなキャンディーみたいです。が、下5「グレーテル」という人名が出たとたん、様相は一転。だめよ、これは魔女の企みかもしれないわ! 種と根には毒があるらしい「パンジー」からの発想でしょうか。楽しませてもらった一句です。
入り口にパンジー奥にチンパンジー
京野さち
楽しんだという意味では、これも楽しかった! 「三色菫」ではなく、敢えて「パンジー」を選ぶ理由は、まさにこの音。「入口にパンジー」が楽し気に迎えてくれて、その「奥」には「チンパンジー」が鎮座している檻がある。音の楽しさと共に、映像もしっかり描けています。

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