俳句ポスト365結果発表

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第195回 2018年5月3日週の兼題

  • よしあきくん一期一会の一句
  • 初心者向け解説コーナー今週の俳句道場
  • 今週のお便り
  • 人・並選の俳句
  • 天・地の俳句

天

鷲の虹野ねずみの虹シャチの虹
be
対句表現を重ねた三段切れという手法ですが、なんと鮮やかにさまざまな虹が見えてくるのでしょう。鷲は高い位置から虹を見ます。真っ正面から虹を見られるのが鷲の目線です。虹をくぐれそうな高さにいるのが鷲です。かたや野ねずみは地上。首をぐんと上げて、立ち上がらんばかりに虹を見上げているのでしょうか。あれはなんだろうと首を傾げているのかもしれません。シャチは海です。波を蹴ってジャンプした瞬間に捉える虹。広い広い海原を駆けるシャチに、海の虹はさらに色を濃くします。そして雨上がりの空は、次第に青を取り戻していくのでしょう。絵本のようでもありノンフィクションの映像のようでもあり、実に豊かな世界を持った作品です。

地

百葉箱閉じてノートに記す虹
TAKO焼子
理科研究のクラブ活動でしょうか。気象台の職員でしょうか。四角い白い「百葉箱」を閉じて、「ノート」に数字を記入する。その端に、いま頭上にかかっている「虹」のことを記します。これもまた「虹」という季語との出会い。ささやかな季語体験です。
一斉に野球部虹へ飛び出せり
あつちやん
練習中の夕立でしょうか。試合が一時中断していたのかもしれません。やっと雨が上がり、急ぎのグランド整備が終わり、待ちかねていたように「一斉」グランドに駆け出す「野球部」たち。下五「飛び出せり」が勢いのある描写です。
湯沸し器点いてひだるし夕の虹
エイシェン
就業終了時間が近づく夕方。その日職員が使ったカップや来客に出した湯飲みを洗うために「湯沸かし器」に火をつけます。「ひだるし」とは、空腹という意味。仕事終わりの疲れもこの言葉ににじみます。「夕の虹」の淡さも想像できる一句です。
母親が憲法だったころの虹
かをり
どの家庭でも、最初は「母親が憲法」です。お母さんに許可を求め、お母さんがダメと言えば、それはもうダメなのだという「ころ」を作者は懐かしみつつ、切なくも思っているのでしょう。「母親」の介護をする、庇護の下に置くという「ころ」が、作者の現実となっているから、このような感慨を抱くのではないかと思います。
吊橋の揺れをゆたかに虹の立つ
ぎんやんま
「吊橋」のど真ん中まで来て、空に「虹」見つけたのです。あ!虹、と指させば、一緒に渡っていた人たちも、虹だ虹だと声を上げます。中七「揺れをゆたかに」という描写の巧さ。下五を「虹の立つ」とゆったりと言い止めた点もよいですね。
虹の両端は不幸な家ばかり
断定することで詩を生み出す手法です。虹がかかっているのを見られるのは、虹から離れているから。虹の根っこ、つまり「虹の両端」にいると虹は見られないのだ、という寓意も含んでいます。「不幸な家ばかり」は自虐とも、諦めとも、突き放す言葉とも読めるのもこの作品の特徴です。
昆虫の粗き交合さつと虹
クズウジュンイチ
「昆虫」たちの「交合」は、今のがそう?!と驚くほど粗雑だというのです。命を生み出すために愛を育む「交合」という言葉を裏切る「粗き」という一語の斡旋が巧いですね。「さつと」は「粗き交合」の描写でありつつ、「虹」の描写ともなり得ている点も褒めたい作品です。
虹を生むゆびつてきつとかういふ指
とおと
愛の句でしょう。恋人の「指」を見つめているのでしょうか。なんて素敵な指なんだろうと思うのは、音楽を奏でている指、絵を描いている指、愛を確かめ合う指。さまざまな指を思うたびに、この句の世界は豊かになっていきます。「きつと」「かういふ」が、まさに目の前にその指があり、その指に触れているかのような効果をもたらします。愛唱句の一つになりそうな作品です。
さうでした虹に入れぬ色でした
よだか
「さうでした」という独白のなんと切ないことでしょう。「虹に入れぬ色」とは、もしかしたら作者自身を比喩しているのかもしれませんし、自分ではどうしようもない宿命をかかえている人物への思いかもしれません。「さうでした~色でした」という口語のたたみかけるリズムもまた、切ない響きです。
同時投句「古本の乱歩臭つてうすく虹」は、古書店か古い図書館か。この句の世界にも惹かれます。
密林に濡れたる虹の卵あり
笑松
「密林」の激しいスコールがいきなり止んだ瞬間を思いました。降る時も急にして強烈だけど、止む時も急にして鮮烈。「密林」の一語は、一瞬にして読者をワープさせます。その密林のどこかには「虹の卵」があるに違いないという発想が素敵! これから現れるに違いない虹を「虹の卵」という表現で想像させる手法も素敵! 「濡れたる」という描写のリアリティが「虹の卵」の存在を鮮やかにします。
虹二重ゴメスは珈琲園を買った
ウェンズデー正人
読んだ瞬間に、こうきたか!と笑ってしまいました。上五「虹二重」というと、有名句「虹二重神も恋愛したまへり 津田清子」がすぐに浮かんでくるものですから、その世界からのギャップにやられました(笑)。誰か知らないけど「ゴメス」という名は南米を思わせますし、「珈琲園を買った」はゴメス氏の苦労と成功の一代記を想像させます。ゴメス氏の生涯をもっと知りたい気にもなります(笑)。彼の「珈琲園」に架かる「二重虹」。なんと鮮やかな人生と虹。

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