俳句ポスト365結果発表

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第196回 2018年5月17日週の兼題

赤潮

  • よしあきくん一期一会の一句
  • 初心者向け解説コーナー今週の俳句道場
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  • 天・地の俳句

天

赤潮を貫く雨の太きかな
星埜黴円
愛媛県西南部の村で育った私には、赤潮はなじみ深いものです。赤潮の来る日は空気も澱んでいました。湾に押し寄せる赤潮は饐えた匂いを放ちます。堤防に及んだ赤潮に石を投げると、投げた石の大きさの分だけ、穴が空いたように海面が見えます。少し濁ってはいるけど赤潮の下にはいつもの海があるんだなと思ったものです。
赤潮に雨が降り出します。雨粒の大きさの分だけ、一面の赤潮に小さな穴が空きます。そしてすぐに閉じていきます。思いの外に大きな雨粒は、赤潮を貫いては赤潮に溶けていきます。次々に空く雨粒大の穴。それを凝視し「雨の太きかな」と表現できる俳人の観察眼。地味で静かな句ですが、ひたひたと怖い句でもあります。

地

赤潮の一ヶ所波になりきれず
牟礼あおい
「赤潮」の一物仕立て。赤潮の「一カ所」が「波になりきれず」臭く澱んでいるのです。赤潮によって海が死んでいくかのような感覚を、「一ヶ所波になりきれず」と淡々と描写している点に静かな迫力があります。
赤潮と鉄臭そうな桟橋だ
ゆみづき
「赤潮」は赤といいつつ、様々な色合いがあります。オレンジ色、赤色、赤褐色、茶褐色等がありますが、美しいとは言いかねる濁った色合いです。それはまさに「鉄臭そうな」色合いでもあります。錆びきった「桟橋」に寄せる「赤潮」もまた鉄臭い。
モノクロ映画より赤潮の匂ひ
輝 龍明
「モノクロ映画」はドキュメンタリーでしょうか。「赤潮」に眉を寄せる漁師たちが映っているのかもしれません。色もない映画の奥から「赤潮の匂ひ」を感じ取るということは、作者は「赤潮の匂ひ」を生身の感覚で知っているということ。「モノクロ」と「赤」の対比も巧い一句です。
ラヂヲざりざり赤潮を進むとき
一阿蘇二鷲三ピーマン
「ラヂヲ」の後の「ざりざり」は、ラジオの雑音であり「赤潮」の感触でもあるのでしょう。「赤潮を進むとき」とありますから、船体に触れる「赤潮」が「ざりざり」していると読むべき。「進むとき」という下五の表現が、生々しい感触です。
赤潮やささくれ剥けば肉透けて
小泉岩魚
「赤潮や」と強調した後、カットが切り替わります。指の「ささくれ」が気になるものだから一気に「剥いて」しまうと「肉」が「透けて」みえたというのです。「赤潮」の濁った赤と、指先の「肉」の透きとおった赤との対比。赤潮もまた生きるものなのだという思いも過ぎります。
赤潮のにおい金の無心の電話鳴る
村松縁
「赤潮のにおい」がある日はきっと「金の無心の電話」がかかってくる。断りたいが断れない。思い切って断ってみると、どんよりと暗い気持ちが残る。あの日も「赤潮」が来ていたなという嗅覚の記憶が蘇る。そして「電話」が「鳴る」。
酒臭き母が耳打ち赤潮来たよ
24516
「酒臭き母」は昼から飲んだくれているのか。夜の商売から戻ったところか。「酒臭き母」の記憶の中に「赤潮」がある。「耳打ち」の一語が、酒の臭さと熱っぽいくすぐったさ、嫌悪とエロチック等を想起させます。「赤潮が来たよ」という囁きが腥い。
赤潮のひた寄る浦の情事かな
トポル
先ほどの「酒臭き母」を描いたかのような一句。「赤潮」の匂いに封じられているかのような「浦」は、漁に出ることも出来ないまま黙しています。自力ではどうすることもできない「赤潮」への苛立ち、焦燥。「情事」には「赤潮」の匂いが似合うのかもしれません。
赤潮やそういや山も怒っとる
くりでん
漁師のつぶやきでしょうか。何日も去らない「赤潮」に異変を感じ取っているのでしょう。「そういや山も怒っとる」は山の噴火と読みました。転変異変の予感が渦巻く浦。危機感が募ります。
赤潮へマジ切れラーメンへバター
司啓
「赤潮へマジ切れ」とはストレートな怒りの表現。漁に出られない漁師の憤りか、海を楽しむつもりだったのにという旅行者の嘆きか。怒ると腹が減る。腹が減って入ったラーメン屋。「ラーメンへバター」を溶かし込む。美味いが腹が立つ。腹が立つが美味い。

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