俳句ポスト365結果発表

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第197回 2018年5月31日週の兼題

海の日

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天

海の日のカーナビ恐るべく寡黙
蟻馬次朗
最近の「カーナビ」は恐るべき進化を遂げており、右へ曲がれ、左は一方通行だ、検問が近い、そろそろ休め等、大きなお世話だと思うほどにきめ細やかな指示をしてくれます。その小うるさい「カーナビ」が今日は「恐るべく寡黙」なのです。なぜ寡黙かは、上五「海の日」なる季語の力によって想像できます。
長い長い海岸線に沿って車を走らせています。片側の海は夏の光を弾き、冷房の利いた車内には心地よい静けさが広がります。都会の喧噪を離れ、「海の日」の海を味わう大人の休日。「カーナビ恐るべく寡黙」という些事が、季語によって詩に変質します。
「恐るべき」ならば「寡黙」自身の性質ですが、「恐るべく」は「寡黙」が「在る」というニュアンス。この選択も的確です。
※火曜日「俳句道場」にて質問がありました件について、調べました。以下、まとめます。【明治9年、明治天皇が「明治丸」で東北・北海道を巡幸され、横浜に無事帰港されたのが7月20日。これを記念して「海の記念日」が昭和16年に制定されました。さらに、平成8年には、「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」国民の祝日として、「海の日」となりました。】
やはり明治16年は間違いですね。昭和16年でした。

地

司厨長口伝の海の日のスープ
トポル
「司厨長」とは、船舶で食事のことを担当する人の中のリーダー。「海の日」の特別メニューは「スープ」。直接「口伝」を受けたレシピにて作るスープは絶品なのでしょう。この設定そのものが、明治天皇巡行の気分も匂わせるところが、さすが。これも「天」に推したい作品でした。
海の日をひとでのように過ごすかな
神山刻
「海の日」は祝日。その一日を「ひとでのように過ごす」という比喩が愉快です。ただ動かないということか、海辺のデッキチェアに座りっぱなしなのか。はたまた、波打ち際にて何をするでなくじっと濡れているのか。いろんな「ひとで」が見えてきて可笑しい。
海の日に疲れクラゲの図鑑繰る
静里秋希
今度は、「クラゲ」です。これも季語だけど、本物のクラゲではなく「図鑑」に載ってるクラゲだから、季語としての力は弱くなっていますし、敢えてカタカナで書く理由も分かります。
「海の日に疲れ」という措辞に、共感。美しいクラゲや恐ろしいクラゲに見入りつつ、我が体もクラゲになったかのような、楽しい疲れを感じているのでしょう。
性欲を持てあまし海の日は凪
あるきしちはる
「海の日」が比較的新しい夏の祝日であることを思えば、「性欲を持てあまし」のような剥き出しの措辞も受け止めるのだなあと感心しました。「性欲をもてあまし」ていることと「海の日の凪」は何の関係もありませんが、どちらにも苛立ちを抱え、心は荒れているのです。
海の日の瓶の手紙はCokeの香
だいふく
「瓶の手紙」という句材は、それなりにありますし、やってみるとロマンチックになりすぎたりしますが、「Cokeの香」という感じ方に、オリジナリティとリアリティがあります。コカコーラのカッコイイCM映像が見えてくるような一句。
海の日の魚の骨のような橋
ちま(4さい)
たぶん、ちま(4さい)は「橋」を見て「魚の骨みたい!」と言ったのだと思います。それをお母さんが兼題「海の日」と取り合わせてくれたに違いないと。小さな子どもたちへの俳句指導は、子どもたの言葉に耳をかたむけることから始まります。そして、詩になりそうな言葉をつぶやいた時、「いいねえ!今の言葉、いい俳句の種だよ!」と大げさに褒めてやって下さい。子どもたちは、大人に褒められるとやる気になります。
「海の日」に見つけた「魚の骨のような橋」は、読者の脳内にありありと映像化されます。比喩がそのまま映像を描く。子どもたちの直感的比喩は楽しいものばかりです。
うみのひやちょこぱんはちょっとだけわかい
とうい(3さい)@代筆:登るひと
この句も同じです。とうい(3さい)は、大好きな「ちょこぱん」を食べて「これ、ちょっとだけわかいね」と感じたのです。焼きたてだったのか、焼き色がちょっと薄かったのか、いろんな「わかい」があるかと思います。「うみのひ」と取り合わせられることで、子どもたちの呟きが詩になっていく。
やがて、子どもたちは、季語と取り合わせることも自分でやりたがる日がきます。それまでは、子どもたちの言葉に耳をかたむけてやって下さい。
海の日やミルクに浸すかもめぱん
柳児
大人もパンを食べています。「海の日や」と強調したあとに出てくるのが、「ミルク」の白。そこに「浸す」のが「かもめぱん」というのが楽しいですね。カモメの形をしているのか、カモメ屋さんの名物パンなのか。海の明るい朝の光景。
海の日やけふも塩吐く臼あらん
ウェンズデー正人
なぜ海水がしょっぱいかというと、塩を吐き続ける石臼が海底に沈んでいるのだ、という昔話があります。「海の日」がくる頃になると、海で遊ぶ季節になると、きまってこの昔話を思い出すのかもしれません。「けふも」の「も」、「塩吐く臼あらん」の「あらん」など、言葉の斡旋も巧みです。
海の日や魚も人もほおに肉
卯MOON
煮付けた「魚」を丁寧に食べていると、「ほお」にも小さな「肉」があるのに気づく。「人も」の「も」が、我が頬にある肉の存在を生々しく認識させます。
明るく健康的な「海の日」のイメージからすると、少々ギョッとさせる内容ですが、「ほおに肉」や「塩吐く臼あらん」のような発想も「海の日」は受け止めるのだなあと、改めて認識させられました。

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