俳句ポスト365結果発表

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第200回 2018年7月12日週の兼題

鰯雲

  • よしあきくん一期一会の一句
  • 初心者向け解説コーナー今週の俳句道場
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  • 人・並選の俳句
  • 天・地の俳句

天

トランポリン沈む鰯雲へ吠える
よだか
「鰯雲」は穏やかに悲しげに切なげに詠まれることが多いものですから、この句に出遭って驚きました。まずは「トランポリン沈む」という表現が巧いですね。ぐぐっと「沈む」トランポリンの上の体。沈めば沈むほどジャンプは高く高くなります。何度も何度も深く沈みながら一気に直上する。「トランポリン」のギシギシという軋み。深く沈む膝の圧力。空中に放り上げられる体の興奮。それはあたかも「鰯雲へ吠える」かのようだというのです。平らかに広がる「鰯雲」、直角に切り込んでいく身体感覚。手が届きそうな「鰯雲」だからこその「吠える」という感知。「鰯雲へ」向かってという助詞の選択も的確。新しい「鰯雲」の魅力を表現してくれた作品です。

地

朝っぱらから鰯雲です爽快です
雪うさぎ
「朝っぱらから」一体なんだと思えば「鰯雲」。こういう朝に、嗚呼しらぬまに秋になっているなと感じるのが、秋というもの。朝の空気に冷気の芯が生まれ始めている。それに気づく朝のなんと「爽快」なことか。「爽快です」と言い切る作者の表情も見えてくる一句です。
鰯雲南の端が取れてゐる
クズウジュンイチ
「鰯雲」を一物仕立てにした句は他にもありはしましたが、別の雲でもいけるのではないかという中途半端なものが多かったようです。この句は、広がる「鰯雲」らしさを「端が取れてゐる」と表現。いきなりそこで、ちぎり取られたような形状になっていることも映像として描かれています。「南」という方角が一句を暗くしないところもいいし、「取れてゐる」というぶっきりぼうな表現も似合ってます。
いわし雲買います黒猫百貨店
霧子
「いわし雲」からイワシ→食べる→猫という具合に連想していく句も沢山あったのですが、その発想にちゃんとオリジナリティを加えて、楽しい詩にしてくれてるのがこの作品。「いわし雲買います」という口語からの展開が楽しい。「黒猫百貨店」は、まるで宮沢賢治の世界にありそうな店ですね。
いいひとといわれるいたみいわしぐも
ざうこ
「いわしぐも」という季語は、自分の心と対話する時に、その心を受け止めてくれるのだなあと改めて思います。「いいひとといわれる」けど、決して「いいひと」ではないことを、自分自身が一番知っている。その「いたみ」は、ジワジワと「いわしぐも」のように広がっていきます。
いわし雲心という字書きました
さな(6才)
「心」という字はバランスが取りにくい。心そのものもバランスが取りにくい。見上げれば「いわし雲」は悠々と広がっています。小さなことにこだわってしまう私の心。何度も何度も「心という字」を書いていれば、私の心も「いわし雲」のように悠々広がっていってくれるでしょうか。
トラックに積めば鉄くず鰯雲
さるぼぼ@チーム天地夢遥
愛車をダメにしてしまったのか…と読みました。さっきまでは愛車だったのに、「トラックに積めば鉄くず」となってしまうという悲哀。見上げる「鰯雲」はゆっくりと飄々と動いていく。ある日のささやかな感慨を、映像で表現しました。
よくもまあ駄々を鰯雲のやうに
一阿蘇二鷲三ピーマン
いつもまでいつまでも「よくもまあ駄々を」こね続けるものだと呆れているのです。子どもの「駄々」というよりは、大人のそれかもしれないなと読みました。「鰯雲」を比喩で使っていますが、頭上には連綿と「鰯雲」も広がっているのでしょう。
山頭火もう三日見ず鰯雲
樫の木
放浪の俳人「山頭火」が亡くなった庵は、松山市にあります。一草庵です。温泉のある温かい地でポックリ往生を願った山頭火は、まさに願い通りの最期を、この庵で迎えました。
庵の辺りで「山頭火」を見かけていたのでしばらくは落ち着くのかなと思っていたが、このところ「もう三日」も姿を見ていない。また「鰯雲」のように放浪の旅にでたに違いありません。「もう三日見ず」の呟きが、いかにも「山頭火」らしく。
鰯雲暮しの手帖買ふ日かな
清清檸檬
「暮らしの手帖」を愛読している人は、丁寧に清々しく生活している人のようなイメージがあります。「暮しの手帖買ふ日かな」という穏やかな詠嘆は、美しい「鰯雲」と響き合います。「鰯雲」の美しさ、当たり前の平凡な日々を喜ぶ心が、この句に満ちています。
スプートニク渡る荼毘の夜鰯雲
としなり
「スプートニク」はソ連の人工衛星。空を渡っていく人工衛星の灯を見上げているのは「荼毘の夜」。愛する人を火葬する夜です。見上げる夜の「鰯雲」は美しい。「スプートニク」の灯り、夜の中でも実は青い空。そこに広がる「鰯雲」が美しければ美しいほど、悲しい夜です。
鰯雲電車行っちまって田んぼ
藤鷹圓哉
ははは!こんなことあるよな。と言いつつ、昨日の綾部の句会ライブの帰りがまさにこんな感じでした。駅についたら、一時間に一本の特急が出て行った!(笑)
「電車行っちまって」その後に残っているのは、「田んぼ」。稲が実っている秋の田です。ありありと言葉で切り取られた光景。「電車行っちまって田んぼ」の破調が、がっかり感も巧く表現。味のある一句です。

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