俳句ポスト365結果発表

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第203回 2018年8月23日週の兼題

無花果

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天

いちじくに刺さる西太后の爪
花屋
「いちじく」は数ある中ではかなり異色なイメージをもつ果実。アダムとイブの逸話は無花果の葉ですが、果実をもぐと滲み出る樹液は母乳にも精液にも喩えられます。不老長寿の果物と呼ばれた時代もあり、独特の形に妖しく怖ろしい印象を持つ人もいます。
そんな「いちじく」と「西太后」を取り合わせた一句。「西太后」にまつわる虚々実々の伝聞は禍々しいものばかり。この「爪」は特権階級であることを示す長く長く伸ばした爪。主に小指と薬指を伸ばしていたと聞きますが、長く尖った「爪」が、皮膚のような質感の「いちじく」に深々と刺さっていく怖ろしさ。最後の「爪」の一語によって「いちじく」は、絢爛に凄惨に匂い立ちます。
昨日の人選に、やはり西太后と取り合わせた句がありました。「無花果や西太后の金の護指 中岡秀次」 護指とは、伸ばした爪を守る装身具です。句材は似ていますが、モノとして取り合わせてあるのが中岡句であり、「刺さる」という行為によって「いちじく」を生々しく描写しようとしているのが、花屋句。季語の本意という意味において、後者に軍配をあげた次第です。

地

いちじくやさかむけ剥くやうでこはい
ヒカリゴケ
「いちじく」の皮は薄くて剥きにくい。というか、剥こうとすると切れてしまうことが多いです。この指の感触は何かに似ている。「さかむけ剥くやうでこはい」というフレーズは、無花果という果物の持つ皮膚感を生々しく呟いています。歴史的仮名遣いの表記も、おどおどしてて、巧い選択です。
無花果の噛みつきさうな尻の穴
笑松
「無花果」を愉快に描いたのがこちら。お尻に注目するあたりが、俳人的視点であり、あの形状を「噛みつきさうな尻の穴」と比喩できるのが俳人的センスであります。最後に「穴」のアップで終わる語順も巧いもんだなあ。
無花果の顔つきモジリアニに似て
しかもり
今度は「顔」に注目です。「無花果」のカタチが、そのまま画家「モジリアニ」が描く人物の顔に似てるなと思う。カタチつまり輪郭だけではなく「顔つき」と感じ取っているところが面白い把握です。切れのない型が、句のあとの余白に想像を広げさせます。
無花果やてんぐのはなのあじする
ちま(4さい)
「てんぐのはな」を舐めたことはないけど、「無花果」のカタチをみてたら「てんぐのはな」みたいだな!と気づいたのでしょうね。カタチが「てんぐのはな」に似てるのなら、「あじ」も似てるに違いない。その発想が楽しい作品です。
ぽつてりと無花果ふつくらと太陽
めいおう星
「ぽつてり」と表現された「無花果」は、「太陽」の恵みを受けて太っていきます。「無花果」を太らせる「太陽」はまた「ふっくらと」豊かに秋を育てていきます。「ぽつてり」「ふつくら」という擬態語は、滋味豊かな「無花果」をそのまま描いてて見事。これもまた「無花果」の本意の一つを描いている作品です。
コーランの無花果聖書の無花果
マオ
「聖書」に書かれたアダムとイブにまつわる「無花果」の葉の逸話は知っていますが、「コーラン」にも「無花果」が出てくることを今回初めて知りました。ネット事典には「夢に現れるイチジクには、専制的でない男という意味がある。また、夢でイチジクを入手することは富を意味し、イチジクを食べると、神により子供を恵まれることを意味する」という記述があります。「無花果」が古代から人類とともにあるのだということを、こんな対句表現で表現してしまうのも、短詩型文学の強みだなあと感服しました。
いちじくや第二婦人は子だくさん
まどん
「第二婦人」ということは、当然第一婦人もいるということ。「子だくさん」の賑やかな「第二婦人」の周辺に対して、第一婦人の静かな居室も想像できます。ひょっとしたら子どもに恵まれていない第一婦人かも?とも思いました。季語「いちじく」がコーランにも描かれていると知りましたので、イスラムの国の一夫多妻制の家の、案外平和で和やかな生活の一部を見せてもらったような気持ちになりました。
無花果や秘部これほどに美しき
ラーラ
ここまでストレートに書くか!という驚きの一句。勿論、「秘部」には①秘密の部分。②からだの秘すべき部分。陰部。と二つの意味があります。が、この書き方ですから、「無花果」の「秘部」は、そのまま人間の体の秘部を思わせます。しかもそれを「これほどに美しき」と言い放てるのが、この作家の大胆さです。
無花果や月はでつぷり腫れあがる
一阿蘇鷲二
「無花果や」と強調して、果実をアップしておいて、「月」の光景へとカットを切り替えます。「無花果」も「月」も「でつぷり腫れあがる」秋の夜。美しいさと醜さを同時に持つものとして、描かれている「無花果」と「月」です。

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