俳句ポスト365結果発表

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第204回 2018年9月6日週の兼題

色鳥

  • よしあきくん一期一会の一句
  • 初心者向け解説コーナー今週の俳句道場
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  • 人・並選の俳句
  • 天・地の俳句

天

色鳥来しずかなしずかな家族葬
あいだほ
秋に渡って来るさまざまな小鳥の中でも、特に羽の色の美しい鳥たちが「色鳥」。今年も時と場所を違えず「色鳥」が渡ってきました。上五「色鳥来」と終止形で切れた後、中七は「しずかなしずかな」というリフレイン。一体何が静かなのかと疑問に思った瞬間にでてくるのが下五「家族葬」の一語です。家族だけで見送る葬儀。棺の周りに集まっている家族たち。しずかな涙。亡骸の微笑むような表情までもが見えてくるようです。今年の「色鳥」の到来を待たずして亡くなったのは、大往生の父でしょうか、母でしょうか。はたまた逆縁の子でしょうか。そんな家族の悲しみを慰めるように、祈るように「色鳥」たちは美しい光と影を弾きながら集まってきます。

地

色鳥の尾つぽきらきら鳴りさうな
とかき星
「色鳥」の特徴はまさに羽の美しい色ですが、「尾つぽ」に焦点を当てた一物仕立ての一句。楽しげに動く「尾つぽ」が今にも「きらきらと鳴りさうな」という描写は、「色鳥」そのものの動きまで見せてくれるかのよう。「鳴りさうな」と切れを作らない叙述は、何羽も現れては消える様子を想像させます。
色鳥やポリエステルのやうな聲
城内幸江
「色鳥」たちの鳴き声を比喩する発想もあってよいですね。「ポリエステル」は、丈夫で皺になりにくく染色性にも優れている化学繊維。「色鳥」は一羽の特定した鳥を指すのではなく、さまざまな鳥であるというのがこの季語の本意ですから、それらの共通項として「ポリエステルのやうな聲」と特色を詩的に指摘しているのです。まさにきらきらと発色の良い囀りでありますね。
色鳥や嘘つきそうな色だこと
神山刻
これも「色鳥」ですから「色」に注目する発想は当然でてきますが、その「色」を「嘘つきそうな色」だと比喩している点にオリジナリティがあります。「色鳥」を明るく可愛く楽しげに描くのではなく、「嘘つきさう」と皮肉な視線を投げかける。そういわれると、「色鳥」の美しさに猜疑心が生まれてくる。それもまた「色鳥」という季語の持つ反面的な本意だといえるでしょう。
色鳥やリカーの瓶のはがねいろ
ローストビーフ
「色鳥」と別の色を取り合わせる発想もあります。「リカー」は酒類ですね。「リカーの瓶」は人工物としての「はがねいろ」であり、「色鳥」は自然物としての色。その対比が率直に表現されています。「はがねいろ」を平仮名書きすることで「リカーの瓶」が主張しすぎないように配慮している点など、言語のバランス感覚を褒めたい作品です。
色鳥のなか色鳥といへぬ鳥
可笑式
たしかにね!という納得の一句。しかし「色鳥といへぬ鳥」自身は「色鳥」のつもりでいるのかもしれないな、なんて思ったりもします。「色鳥」は一羽であって一羽でない、という特徴も持つ季語。複数の印象をうまく使っている点にも工夫があります。
色鳥へ朱を与へし猿の神
蟻馬次朗
「色鳥」の色に注目しつつ、取り合わせの要素を入れてくる作品もありました。「色鳥」の「朱」は「猿の神」が与えたものであるよ、という発想が実に面白い。「猿の神」の正体が何者かは分かりませんが、猿の顔の赤、尻の赤の印象が句中の「朱」にリアリティを添えます。これも天に推したかった作品です。
とんぷくや色鳥の色はじきあふ
とおと
天に推したかったという意味では、この作品も好きです。「とくぷく」とは「頓服薬」のことでしょう。上五「とんぷくや」と強調していますから、「とんぷく」を飲んだ直後という印象です。この薬は、食前食後のように決まった時間に飲むものではなく、発作が起こったり症状の強く出ている時に飲むもの。「とんぷく」を飲み終わり、大丈夫これからおさまってくるに違いないという安堵を抱きつつ、ふとみると「色鳥」たちが互いの「色」を「はじきあふ」ように枝枝を跳ねている。飛び交っている。そんなささやかな時間を切り取った作品です。同時投句「手遊びの指のあかるく色鳥来」も優しい味わい。
色鳥のくはへてをるはだれのスペル
一阿蘇鷲二
「色鳥」が「くはへて」いるものは何だろうという発想から生まれた一句です。「だれ」かの「スペル」を咥えているという展開に惹かれます。秋に渡ってくる鳥たちは、外つ国で可愛がってくれた誰かの名の「スペル」を覚えているに違いない、と読んでみるのも楽しいですね。「くはへてをるは」という措辞は、「色鳥」の嘴にじっと焦点を合わせていくような効果があります。
電気きた水がきた色鳥がきた
香野さとみ
開発途上国というよりは、山の中で自給自足の暮らしを始めているのかもと読みたくなりました。「電気きた」は、太陽光の蓄電ができるようになったのかもしれません。「水がきた」は、山の水を小屋の近くまで引く作業が完了したのかもしれません。そんな生きるための要素が整ってきた頃、「色鳥がきた」のです。色鳥の集う秋の次には、冬がやってきます。冬籠のための準備も始まります。
シベリアのぬりえは月とあの色鳥
司啓
「シベリアのぬりえ」「月」「色鳥」三つの取り合わせは、まるで絵本のような世界。少しずつ塗りながら、絵本が完成していく様子が想像されます。この句の「シベリア」「月」は銀色のイメージがしますが、そこに線描された「色鳥」をどんな色で塗るのか。その思いに詩があります。

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