俳句ポスト365結果発表

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第210回 2018年11月29日週の兼題

  • よしあきくん一期一会の一句
  • 初心者向け解説コーナー今週の俳句道場
  • 今週のお便り
  • 人・並選の俳句
  • 天・地の俳句

天

鮃とは武蔵野ほどの起伏なり
蟻馬次朗
「鮃」をじっと見つめていると、その体表の緩やかなカーブが気になり始めます。丘陵をイメージさせる「起伏」という言葉はでてくるかもしれませんが、「武蔵野ほど」という比喩はちょっと思いつきません。しかし言われてみると、「鮃」の体の模様は冬の原野を思わせるような色合い。そして「武蔵野」の原野を思わせるようななだらかな「起伏」。二つの言葉「鮃」と「武蔵野」を結びつける「起伏」という比喩のなんと新鮮なことでしょう。カメラに喩えるならば、冬の「武蔵野」の遠景かと思う色彩と「起伏」が、実は「鮃」の体表をクローズアップした映像であったという驚き。「ほどの」から「~なり」と言い切る叙述の力にも脱帽いたします。

地

うらがはのやさし鮃は噛む魚
クズウジュンイチ
「鮃」の裏側を描いた句は沢山ありましたし、「鮃」の特徴である鋭い歯を詠んだ人たちもいました。「鮃」という魚を淡々と解説しているだけなのに、そこに詩が匂ってくる。不思議な味わいの一句です。前半が平仮名、後半が漢字。このあたりの選択もさすがです。
鮃去りしところ豊かに砂残る
一阿蘇鷲二
「砂」の中に身を潜めている「鮃」ですが、捕食のために動いた後の光景を見事に描写しました。「鮃去りしところ」ですから、そこにはもう「鮃」はいないのですが、後の残る「豊かな砂」を描くことで、そこにいた「鮃」を見せる。そこが巧い!
同時投句「砂幾つぶ鮃の息に動きけり」もよく観察しています。
考える砂や静かに鮃かな
卯MOON
「や」と「かな」、二つの強い切れ字は、俳句ではタブーとされていますが、微妙なバランスで成り立っています。「考える砂」は「鮃」が潜んで餌をとろうと待ち構えている「砂」です。「静かに鮃かな」は、砂と鮃が一体となって静かにそこに存在するさまを表現しています。
百トンの水を見上ぐる鮃かな
ちゃうりん
「鮃」の上にある「水」の重さをさまざまに述べようとした句はありましたが、「百トンの水」と嵩そのものを立方体のような述べ方をしているのが面白い作品です。「見上ぐる」という措辞が「鮃」という実体を描いています。
臓物も脳も鮃の幅の中
花伝
「鮃」の薄さは特徴の一つですが、それを「臓物も脳も」その「幅の中」に納まっているよという把握が面白い。「鮃の幅」という指摘が、一句のリアリティとなっています。「臓物も脳も」と畳み掛けてからの展開が巧いね!
よこたはる比目魚を月のぢつと見る
きゅうもん@木ノ芽
海底の砂の中にいる鮃が月を見上げている、という発想の句は思いの外多かったのです。が、この句は視点を逆にしています。「よこたはる比目魚」を「月」が「ぢつと」見つめているよ、というのです。「比目魚」もこの句の場合はいきています。
寒鮃子規は左に身を起こし
あめふらし
目が斜めによってしまっている「鮃」の貌と、病床にあった「子規」の顔写真は、どこか似ているなあと思います。思うように動くこともままならぬ「子規」は「左に身を」を起こして、何かを語りかけようとする。食べることが好きだった子規ですが、「寒鮃」を食べたことはあったのでしょうか。
食ひ了へし骨の形も鮃かな
亀田荒太
当たり前といえば当たり前のことですが、「鮃」だからこその小さな発見。「食ひ了へし骨の形」そのものが「鮃」の形そのままだよ、という愉快は、見事な箸使いの証でもあります。
鮃甘くて夫の笑顔が嘘臭い
24516
「夫」が高級な店に連れて行ってくれたのでしょうか。高級魚「鮃」を味わいつつ、「夫の笑顔」を眺めるが、どうもそれが「嘘臭い」。妻の勘というのは、実に鋭くおそろしいものであります。「鮃甘くて」という上五の展開が、美味しそうでにこやかで、波乱含みの展開。

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