俳句ポスト365結果発表

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第215回 2019年2月21日週の兼題

サイネリア

  • よしあきくん一期一会の一句
  • 初心者向け解説コーナー今週の俳句道場
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  • 人・並選の俳句
  • 天・地の俳句

天

サイネリアなんにもない日おめでたう
かのたま
ディズニー映画『不思議の国のアリス』の「お誕生日じゃない日のうた」の歌詞「なんでもない日おめでとう」を本歌取りした一句。「なんでもない日」ではなく「なんにもない日」ともじっているのです。今日の予定がない自由な一日でしょうか。いやいや、家族や恋人がいない、お金や食べ物がない、生きる目的を見失っていると読むことだってできます。平凡な日常のシアワセか、絶望の果てに見つけた希望か。そこにあるのは一鉢の「サイネリア」。喜びが手を開いてかたまって咲いてるような「サイネリア」を見ていると、何もかもがきらきらしてくるような気がします。自分を励ます「おめでたう」もきらきらしてます。一緒に歌いたくなります。

地

サイネリア例の天使と目が合った
大塚迷路
「例の天使」というのですから、作者にはこの「天使」がしばらく前から見えているのですね。「サイネリア」の傍らに「天使」が立っているのに、どうも誰にも見えてないらしい。なぜ自分にだけ見えているのかは分からないが、時折現れる「天使」。そして今日はなんと「目が合った」のだ! 「サイネリア」の元々の名は「シネラリア」。日本語の「死ね」が連想されるので、呼び名を変えらてしまったというエピソードをもつ植物。「サイネリア」の傍らの「天使」は福音の天使か、明るく死を告げる使者か。「サイネリア」はあくまでも色鮮やかに咲き広がります。これも「天」に推したかった作品です。
窓に空詰めてリボンはサイネリア
克巳
「窓」いっぱいに見えるのは「空」。それを、窓に空を詰めていると表現。さらに窓辺に置いた「サイネリア」を「リボン」に見立てました。比喩と見立てを併用するのは難しいのですが、季語「サイネリア」とのバランスがいいですね。
サイネリア枯れる失恋とは違ふ
朱河
うっかり「サイネリア」を枯らせてしまった。水やりを怠ってしまっていた、その愁いは「失恋」ではないのだけれど、だって恋すらしてないのだけれど、この感情をどう表現すればいいのか。ただただ枯れた「サイネリア」を眺めているのです。
サイネリア母は再婚くりかへし
多々良海月
鮮やかな色、賑やかな咲き方、花を咲かせる時期も長い「サイネリア」。何度も何度も恋をしてしまう女は、「再婚」を何度も繰り返すのです。そんな女が「母」であるよ、という呟き。まるで「サイネリア」のような「母」へのささやかな愛憎が匂います。
サイネリアほらラザーニャはすぐ焦げる
あいだほ
「サイネリア」と「ラザーニャ」、二つのカタカナ語の取り合わせが軽やかで、豊か。「サイネリア」の視覚、「ラザーニャ」の味覚、「すぐ焦げる」は嗅覚も刺激します。「ほら」という呼びかけに臨場感があります。
サイネリアは影も明るしエビピラフ
神山刻
こちらは「サイネリア」と「エビピラフ」。ちょっとミスマッチのような気もしますが、中七の季語についての描写が、全体のバランスをとっています。「サイネリア」は明るい花だけど、「影も明るし」と感じる。そのかたわらの「エビピラフ」の色合いも見えてきます。おしゃれで美味しいピラフです。
サイネリアなんとキレイに黄色5号
くさ
調べてみると「サイネリアは、濃い黄色とオレンジ以外はほとんどの花色が揃っている」とあります。しかもこの「黄色5号(おうしょくごごう)」とは、人工着色料の名。「サイネリア」の色は天然のもの。「黄色5号」はこんなに「キレイ」な色なのに人工のもの。「なんとキレイな」に微量の皮肉も読み取れます。
サイネリアのめまい耳石ゆらゆらす
じゃすみん
五七五の調べを破り、全部足すと十七音になるという破調の一句。「サイネリア」の多彩な色の渦に、「めまい」を覚えてしまうというのです。「耳石」は、石という字がありますが、実は細かなパウダーのようなものなのだそうです。「ゆらゆら」というオノマトペは、ゆらゆら動くのではなく、ゆらゆら漂う感じなのでしょう。
除光液の臭ひの隅にサイネリア
トポル
マニキュアを落とすための除光液でしょう。「除光液の臭ひ」と「サイネリア」、ツンとくる臭いと鮮やかな色あい、嗅覚と視覚の取り合わせです。中七「~臭ひの隅に」という表現が巧いですね。臭いの隅に「サイネリア」の鉢が見えてきます。
シネラリア夜のシュレッダーが怖い
めいおう星
「サイネリア」の正式な名称は「シネラリア」。日本語の「死ね」に通じると嫌われて改名された「サイネリア」。
会社の残業でしょうか、自宅の「シュレッダー」でしょうか。紙を食って唸りだす音を「怖い」といっているのか、手が吸い込まれたらという生々しい妄想による「怖い」か。「夜」の「サイネリア」は無表情に鮮やか。それもまた「怖い」。
五年後の水買ふ白きシネラリア
どかてい
こちらも「シネラリア」の一句。「五年後の水」とは、賞味期限が五年という意味に解釈しました。防災グッズとして準備している1リットル入りのペットボトル。「五年後の水」と「白いシネラリア」。どちらも静かに、そこに置かれています。
殺戮は地図へ記せずサイネリア
内藤羊皐
国ごとに色分けされた「地図」を眺めているのでしょうか。様々な国の存在を思う時、「殺戮」という言葉が浮かんできたのでしょう。「殺戮」の歴史は「地図」には記せない。北アフリカのカナリア諸島が原産の「サイネリア」は、品種改良を重ねながら世界に広がり、世界中の人々から愛される花となりました。「サイネリア」の鉢と一枚の「地図」から、こんなふうに歴史に思いを馳せる句もあってよいと思います。

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