俳句ポスト365結果発表

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第216回 2019年3月7日週の兼題

桜鯛

  • よしあきくん一期一会の一句
  • 初心者向け解説コーナー今週の俳句道場
  • 今週のお便り
  • 人・並選の俳句
  • 天・地の俳句

天

桜鯛にしてこんなにも粗末な歯
蟻馬次朗
子どもの頃の楽しみの一つが鯛を釣ることでした。伝馬船を漕ぎ釣りをして育った私にとって、鯛の歯とは鋭いものだという思いがあります。鯛は雑食性でエビやカニなどの甲殻類を好みます。鋭い歯は硬い殻を噛み砕くためのものなのです。
が、「こんなにも粗末な歯」にも覚えがあります。それは、活き作りや塩焼きとなって皿に置かれた「桜鯛」を眺める時です。幾度となく釣り糸を切られた悔しい思いがある歯なのに、料理されてしまうと「こんなにも粗末な歯」に見えてしまう。「桜鯛にして」という措辞は「桜鯛」の美しさ目出度さを、「こんなにも」は「粗末な歯」に気づいてのギャップを率直に呟いて愉快。この句を読んだ皆さんは、今度「桜鯛」の尾頭付きに遭遇したら、マジマジと鯛の口をのぞき込むだろうなあ(笑)

地

桜鯛村は総出の神事なる
岸 れん
「村」が「総出」となっての「神事」とは、春祭りの類いでしょうか。村総代の指図で、これぞという立派な「桜鯛」も調達済み。村の鎮守の神様に捧げる三方の上に飾られた「桜鯛」の尾びれも見えてきます。
桜鯛海神様は上機嫌
GONZA
今日はなんと見事な「桜鯛」が次々に揚がってくるのか! これはきっと「海神様」が「上機嫌」なのだろう。「桜」の一字が、陸地に広がる桜も想像させ、「海神様」の「上機嫌」をさらにかき立てるかのよう。
桜鯛の海や朝鮮通信使
小倉あんこ
「朝鮮通信使」とは、室町時代以後,朝鮮国王が日本に派遣した使節の名称です。この一行が立ち寄っていたのが広島県鞆の浦。まさに「桜鯛の海」です。かつて「朝鮮」からやってきた人たちも、この浦の「桜鯛」を振る舞われていたに違いない。時代を繋ぐ「桜鯛」です。
金色に老ゆる空なり桜鯛
一阿蘇鷲二
「金色に老ゆる空」とはどういう意味でしょう。一日を一生とすれば、金色に暮れてゆく空でしょうし、「老ゆる」に作者の心情が託されているのであれば「金色」の充実感を含んだ懈怠かもしれません。「なり」と言い切った後の「桜鯛」への切り替えが巧い一句。
射抜かれた扇は空へ桜鯛
中山月波
平家物語の世界へ発想を飛ばした一句。主人公は那須与一。よっぴいてひょうと放たれる矢が「扇」を射抜きます。「扇は空へ」という視線の先には「桜鯛」の海。これもまた「桜鯛」という季語が時代を繋ぎます。
桜鯛翻筋斗打つて魯山人
めいおう星
「翻筋斗」は「もんどり」です。「桜鯛」がもんどり打って、跳ねる。その先にあるのは「魯山人」の器なのでしょう。「翻筋斗」という文字の面白さ。活きて跳ねる「桜鯛」が一気に料理されてしまうかのような展開の愉快。さすがの一句です。
八勝に金星一つ桜鯛
くりでん
「八勝」は勝ち越しの数。その中には横綱を倒した「金星」も一つ。充実した場所です。春場所が終わった安堵とお祝いの「桜鯛」。来場所への期待がかかります。「金」と「桜」の色合いも目出度い。
先生はだんだん小さく桜鯛
すかんぽ
何年かに一度ひらかれる同窓会でしょうか。あんなに怖かった「先生」なのに「だんだん小さく」なられてという感慨。卓に饗された「桜鯛」を穏やかに目を細めて眺めておられる「先生」も見えてくるよう。そういう自分たちも、先生と同様の歳月を老いているのだなあという思いも垣間見えます。
桜鯛ケの日は凡そオロオロし
七瀬ゆきこ
「桜鯛」はハレの食べ物というイメージがありますが、「ケの日」は「凡そオロオロし」て暮らしている自分をからかっているのか。「オロオロ」に宮沢賢治の詩のイメージも重なってきて、二重に楽しませてもらった作品です。
人様の佳き日たいくつ桜鯛
小泉ミネルヴァ岩魚
「人様の佳き日」を言祝ぐために集まっているのだけれど、なんとも「たいくつ」を持て余しているという正直さが好き。テーブルの上の「桜鯛」も同じように「たいくつ」な目つきで飾られているのでしょう。
結婚は二度目がよろし桜鯛
あまぶー
己の身に引き寄せて言うのもなんですが、「結婚は二度目がよろし」という経験もまた有り難いことです。「桜鯛」で祝うのも恐縮ですが、「よろし」の感謝を胸に、初老の再婚を謳歌している六十二歳のワタクシ♪

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