俳句ポスト365結果発表

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第219回 2019年4月18日週の兼題

罌粟坊主

  • よしあきくん一期一会の一句
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天

罌粟坊主ひと殴ることなき拳
かもん丸茶
風に揺れる「罌粟坊主」は可愛いのに、毒にも薬にもなる「罌粟坊主」であるというのがこの季語の特徴。不穏な気配もします。
「罌粟坊主」を「拳」に喩える句はありますが、「ひと殴ることなき拳」との取り合わせにハッとしました。我が「拳」で人を殴ることは無いだろうと私たちは平穏に暮らしています。が、この社会において人生において「ひと」を殴りたい衝動にかられる出来事が起こりえないとは断言できません。折しも、香港の若者たちの百万人デモのニュース映像が流れています。抗議のために突き上げられる彼らの「拳」は強い憤りと怒りによって「ひと殴る」ものになりかねない。「罌粟坊主」のように揺れる「拳」が心から離れません。

地

罌粟坊主もののけの子も産めそうな
藤郷源一朗
「罌粟坊主」の産毛を眺めていると「もののけの子」が産まれてくるのではないか、と思えてきたのです。「もののけの子も産めそうな」という措辞には、それ以外に何者かも産んでしまうのではないかという思いも伝えます。美しくて妖しい何者かを。
罌粟坊主潰す喉仏のように
綱長井ハツオ
あの「罌粟坊主」を我が指で潰したとしたら、どんな感触なんだろうと想像したのでしょう。「喉仏のように」は形状からの発想でしょうが、我が指に潰したこともない「喉仏」の感触と痛みが再生されていくような虚の実感のある作品です。
罌粟坊主のこの硬さを憶えてゐたい
とおと
これも「罌粟坊主」を指で潰してみた感触でしょうか。もっと柔らかいかと思っていたのに「この硬さ」は一体なんだ?と。潰したことはないのに、「この」指の感触を感知したかのような虚の追体験。美しさと妖しさとを併せ持つ「罌粟坊主」ならではの感触でしょう。
けしばうずけらけら鉄臭きフェンス
いかちゃん
「けしばうず」は「フェンス」の向こう側に咲き広がっています。こちら側をからかうかのように「けらけら」と風に揺れているのです。「鉄臭き」は「フェンス」の錆の臭いでありつつ、「けらけら」笑う「けしばうず」の不穏な匂いのようでもあります。
ここいらの通貨はルピー罌粟坊主
小川めぐる
「ルピー」はインドの通貨。1ルピーは約2円なのだそうです。「ここいら」では禁止されることもなく罌粟の花が咲き広がり、「罌粟坊主」が揺れているのでしょう。違法な取引が行われているのではないかと憶測させるような取り合わせが、巧みな一句。
一葉の質草は筆けしばうず
よしおくん
こちらは一転して樋口一葉です。筆一本で家族を養っていた「一葉」は近くの質屋さんに通うことも多かったそうです。商売道具の「筆」を「質草」としている間は「けしばうず」でも眺めているしかなかったか。清貧の庭に揺れる罌粟坊主です。
罌粟坊主いつまでたっても来ない明日
すりいぴい
「明日」が来ると信じて日々を頑張っているのに、「いつまでたっても」希望の「明日」とやらはやってくる気配もない。「罌粟坊主」はそんな作者をからかうかのように、けらけら笑っているのでしょうか。
罌粟坊主明日は来なくともいいのだ
桃猫雪子
すりいぴいさんと双子のような一句。「明日は来なくともいい」と言い切っている桃猫雪子さん。希望の「明日」は来なくても、私たちは淡々と生かされていく、という諦念でしょうか。来ないならり来ないでいい!という開き直りでしょうか。「罌粟坊主」の複雑な性格を、この二句が対句のように表現しています。
鬱はあるかゴリラにも罌粟坊主にも
古田秀
「ゴリラ」と「罌粟坊主」、意外性のある取り合わせを繋ぐキーワードとして「鬱」という言葉が出てくる発想が新鮮にして、説得力があります。「ゴリラ」はあんな厳つい顔をしつつ、時には愛嬌のある動きをしつつ、心に「鬱」を抱えているのかもしれない。「罌粟坊主」もまた、そのような二面性のある生き物なのだと納得させられるのです。
罌粟坊主メリーゴーランドは無人
なみはやらんる
「無人」のまま回り続ける「メリーゴーランド」の色彩と動き。それが風にゆれる「罌粟坊主」に重なっていきます。「無人」の一語は、「罌粟坊主」をゆらす風の無為なるイメージにもつながっていくかのような印象。
罌粟坊主わたり廊下は微かに弧
山香ばし
学校の花壇のヒナギクなどの「罌粟坊主」でしょうか。知らぬ間に生えていた罌粟がひょっとすると良からぬ種類ではないかと心配し始めているのかもしれません。なぜ学校を思ったのか。それはやはり「わたり廊下」という場所から。古い「わたり廊下」は真ん中がかすかに歪んで「弧」を描き始めている。あの「罌粟坊主」のこと、やっぱり明日にでも保健所に相談しよう!と校長先生は呟いているのかも。

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