俳句ポスト365結果発表

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第225回 2019年7月25日週の兼題

竜田姫

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天

昂りの眉青青と竜田姫
とおと
「青々」は「せいせい」とルビが振られていました。「あおあお」と読めば、青という色に意味が限定されてきますが、「せいせい」という音は「晴晴」「清清」=さっぱりして気持ちのよいさま、心にわだかまりがなくすがすがしいさま、を連想させます。時代考証として正しいのかどうか分からないのですが、一読一瞬、青々と剃った眉を思ったのも「青々」という字面の印象かもしれません。
「竜田姫」は竜田山を神格化した言葉でもあります。「昂り」とは、山を秋に変える営みに対する心の動き。秋を司る女神としての気概と誇りでもあるのでしょう。きりりと引き締める「眉」。晴晴と清清と秋色に塗り替えらる山。艶やかな神話のワンシーンを見るような作品です。

地

神鏡は昏い太陽竜田姫
ちゃうりん
「神鏡」には三つの意味があります。① 三種の神器の一、八咫(やた)の鏡のこと。② 神社などで神霊としてまつる鏡。③ 神社で、御神体の前に置く鏡。どの意味で読んだとしても、「神鏡」の鈍い光がみえてきます。「神鏡」そのものがまるで「昏い太陽」のようだという一句。「竜田姫」が変えていく山の色もまた、「神鏡」に鈍く映ります。
日本の太陽は赤竜田姫
玉庭マサアキ
日の本の国とも呼ばれる「日本」。国旗の太陽も子どもたちが描く太陽も、確かに「赤」です。その「日本の太陽」の下で、「竜田姫」は今、秋を呼び込み、山河を秋の色に染めていきます。八百万の神々に守られた日本をもイメージさせる一句です。
竜田姫山は淋しいほど高い
さとけん
「山は淋しいほど高い」の「ほど」を、程度と読むか、様態と読むかで意味が変わります。淋しい山ほど高くなるのだと読むか、私の心が淋しくなっていくかのように高いと読むのか。どちらの読みにも惹かれますし、むしろ二つの読みがあるからこそ、この作品に奥行きが生まれるのだとも思えてきました。「竜田姫」の心の奥底にも淋しさがあるから、鮮やかな色を欲するのかもしれません。
竜田姫さびしき雲を置てゆく
にゃん
「竜田姫」は秋を造化していきます。「さびしき雲」を置き去りにする速さで、山河を駆けめぐります。「さびしき雲」は淋しき色合いでそこに「置いて」いかれますが、色づいていく秋とのコントラストを美しくするために、そこにあるようにも感じられます。
竜田姫ここよりまほろばといへり
クラウド坂の上
●「倭(やまと)は 国のまほろば たたなづく 青垣 山隠(やまこも)れる 倭しうるはし 日本武尊の望郷歌と言われるこの歌が大好きです。龍田比売神が祀られる竜田山が、奈良盆地の西にあると言うことです。」との作者のコメントも添えられていました。
実はこの原稿を書いている今、私は「青垣」と呼ばれる山々を一望できるガラスの箱のような部屋にいます。奈良盆地を取り囲んだ山々が見渡せる場所です。「ここよりまほろばといへり」という詩語が、眼前の光景と一体化してくる。「竜田姫」も同じ光景を目にしていたに違いないという胸躍る感慨を抱きました。
たうたうとたつたのかはへたつたひめ
武井かま猫
「たうたう」は、「滔滔」でしょう。水が勢いよく,また豊かに流れるさまを意味します。「たつたひめ」が山々を秋の色に変えた後、山々はその色を川へ映します。紅葉の錦竜田川とも謳われる光景です。「たつたのかわへ」の「へ」が、まさにその光景を思わせるのです。
竜田姫滝にほと岩へのこ岩
ウェンズデー正人
日の本の国の山河にはこんな「滝」もあるに違いありません。「ほと」は、女性器の外陰部を意味する古語。「へのこ」は、陰茎、陰核、睾丸などを意味する古語です。神話の世界では、神々はおおらかに時に激しく愛を語り、交合します。その痕跡のように残る「ほと岩」や「へのこ岩」。秋の女神「竜田姫」が染め上げた秋の山々にある「岩」もまた、神々の足跡かもしれません。
「滝」は夏の季語ですが、この句の場合はタ音を響かせつつ、「竜田姫」という空想的な季語を映像化することに一役買っております。
櫛の歯のあはひにひかり竜田姫
さるぼぼ@チーム天地夢遥
「竜田姫」が、自らの髪を梳く「櫛」でしょうか。それとも山々を秋色に彩っていくための道具が「櫛」なのでしょうか。「櫛の歯」の間の「ひかり」が、美しい秋光となって野山を山河を染めていくのでしょうか。「竜田姫」と「櫛」を取り合わせた句も幾つか見られましたが、発想の独自性を褒めたい作品です。

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