俳句ポスト365結果発表

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第230回 2019年10月17日週の兼題

落葉

  • よしあきくん一期一会の一句
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  • 天・地の俳句

天

前かごに捕へタイヤに轢く落葉
ときこ
季語「落葉」の面白さの一つは、落ちる途中も落ちた後も「落葉」と呼ぶ点です。この二つの状態を詠み込んだ句を、今回の「天」に推そうと決めていたのですが、構えていた選句という名のキャッチャーミットに飛び込んできたのがこの作品でした。上五「前かご」で、ほとんどの読者が自転車を思い浮かべるに違いありません。自転車の「前かご」に「捕へ」るものって何?と謎かけをしつつ、「タイヤに轢く」と展開。一体それは?と思ったとたん「落葉」の映像が飛び込んでくる。この語順巧いですね。読み終わったとたんに、映像だけでなく、自転車を漕ぐ足の力、前かごに当たる落葉のかすかな感触、落葉の匂い、轢いた時のカシュリと砕ける音、滑りそうになるタイヤの感触など様々な実感がパッキングされています。

地

天窓のやうに明るき落葉かな
牟礼あおい
「落葉」を詠む時、落ちている途中なのか落ちてしまった葉なのかが分かるように詠みたいと思うのです。そういう意味において、これは明らかに落ちてくる葉ですね。「天窓」の一語が見上げる視線を作ります。「天窓のやうに」という比喩を成功させたのが「明るき」の一語。淡い冬のひかりもうまく表現されています。
ネオンちちち落葉べつたり地に濡れて
一阿蘇鷲二
こちらは落ちた後の葉っぱ。「ネオンちちち」は切れかかった印象。うらぶれた歓楽街でしょうか、暗い駅裏の界隈でしょうか。「べつたり地に濡れて」という「落葉」の描写がリアルです。下五切れのない型を用いたことで、我が足元の湿り気をじっと眺めているような効果が生まれました。
火のような猫かしゅかしゅと落葉道
江口小春
「火のような猫」は色合いでしょうか、動きでしょうか、あるいは顔つきや瞳などの表情でしょうか。色々と想像できる比喩です。「かしゅかしゅ」のオノマトペが巧いですね。下五「落葉道」と丁寧に押さえた点も成功しています。
なお落葉と呼ばるるや骨のみとなり
綱長井ハツオ
「落葉」のみを観察した一物仕立て。こういう挑戦も歓迎します。「なお」という時間経過からの様態変化を丁寧に描写しています。中七「呼ばるるや」と切った後に「骨のみとなり」という映像を提示。六五七という独特のリズムになっていますが、内容に見合ったものとなっています。
落葉しかないが城跡なんだとさ
あいだほ
葉という葉が落ちつくした「城跡」なのでしょう。一面「落葉」に埋め尽くされている場所。なんにもないけど「城跡なんだとさ」と呟かれたとたん、その場に特別な気が立ち上がってくるような感覚がします。その感覚を「落葉」の匂いが包み込みます。
落葉落葉たまに落葉をまねた虫
古都ぎんう
この視点も可愛い。「落葉落葉」と重ねている段階では、降り続ける落葉かなとも思うのですが、「たまに落葉をまねた虫」まで読めば、落葉の降り積もっている映像や落葉の色をした「虫」がありありと見えてきます。「まねた」という擬人化が可愛いいね。
産卵管に貫かれたる濡れ落葉
高橋無垢
「産卵管」の一語で、私はコオロギの長いそれを思い浮かべました。「産卵管」に「貫かれたる」とは?と思ったとたんに出現する「濡れ落葉」の映像。あ、見たことある!という共感の一句です。「濡れ落葉」の色や質感と「産卵管」の鋭く太い感触。実物を見てこそのリアリティ。率直な描写が成功しました。
二割がた音となりたる落葉かな
小泉ミネルヴァ岩魚
これは落ちてしまった葉っぱ。人が踏むことによって「二割がた音となり」、二割がた壊れてしまっているのです。形のあるものが、音となっていく。季語というモノの変化のとらえ方として、大いなるヒントを頂ける作品です。
猫は目に私は胸に傷、落ち葉
桃猫雪子
この句の「落ち葉」は映像でありつつ、作者の心理を象徴するモノとして描かれています。「猫は目に」傷をもっている。「私は胸に」傷をもっている。猫の目をのぞき込む行為は、我が胸の傷を舐める行為でもあるのでしょう。読点のカタチが、小さな傷のようにも感じられて。
金曜の落葉を載せて転車台
すりいぴい
「金曜」は明日から週末だという楽しみと安堵のイメージ。「金曜の落葉」という詩語は豊かな時間と豊かな光景を印象づけます。「金曜日の落葉を載せて」いるのは何?と思ったとたんにでてくるのが「転車台」。電車の向きを変える仕掛けです。
私の住んでいる松山には、路面電車が走っています。道後温泉駅にも「転車台」があり、お客さんを降ろした後、坊ちゃん列車の車体を、運転手さんと車掌さんが手で押して、向きを変えるのです。道後温泉駅の豊かな時間を思わせてくれた一句です。

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