俳句ポスト365結果発表

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第240回 2020年3月19日週の兼題

姫女苑

  • よしあきくん一期一会の一句
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  • 人・並選の俳句
  • 天・地の俳句

天

トランプの王妃は四人姫女苑
花伝
姫女苑(ひめぢよをん)と春紫苑(はるじをん)。花のカタチも似ていて区別が付きにくいのですが、俳句として違いを表現しようとする時、「姫」の一字にイメージをのせていく発想もあっていいでしょう。「トランプの王妃」つまりクイーンとの取り合わせとは、面白い発想にきましたね。スペード・ハート・ダイヤ・クラブに描かれている女性たちは、仏蘭西では女神や聖書上の人物、英・米では王妃なのだということを、私は今回初めて知りました。
トランプに描かれている「王妃」たちの顔は、確かに「姫女苑」のように小ぶりで、慎ましく、心もち伏し目がちな感じですが、エース・キングに継ぐ力を持つ誇りも抱いている表情。カードの白地と「王妃」たちの衣装の文様の黄色もまた「姫女苑」の印象とふれあうのかもしれません。取り合わせの技法における「付かず離れず」の妙を、楽しませてもらった作品です。

地

姫女苑太陽はいま換毛期
さとけん
夏の季感を表現する方向に舵を切った作品もありました。「姫女苑」に「太陽」を配した句は他にもありましたが、「太陽はいま換毛期」という比喩が巧いですね。鳥や獣の毛が生え替わり、次の季節を迎えるように「太陽」も今「換毛期」に入っているよという発想が新鮮。初夏の眩しさ、「姫女苑」の小さな白が「換毛」の羽のイメージにもかさなって。
黒板消し落とした姫女苑は無事
あいだほ
学校のお掃除の時間です。二階の窓で、「黒板消し」をパンパン叩いていたのでしょう。勢い余ってうっかり落としてしまい、ハッと下を見る。「姫女苑」の群れ咲いている辺りに落ちたのでしょうが、「姫女苑」は折れるでもなく「無事」に揺れています。落とした「黒板消し」を心配するのではなく、「姫女苑」のことを思ってしまう心根が、俳人だな。季語「姫女苑」との出会いから蘇った、学生の頃のリアルな記憶かもしれません。
泥蜂の踏みぬく姫女苑の花片
さるぼぼ@チーム天地夢遥
観察から生まれた写生の一句。勿論、「蜂」という季語も入っていますが、このような季重なりは全く問題ありません。「蜂」の足元を「踏み抜く」と描写することで、「姫女苑の花片」の質感も表現できています。ただの「蜂」ではない「泥蜂」の独特な黒と黄色の体。「姫女苑」の白と黄色との対比も明確に見えてきます。
ひめぢよをん影のすみずみまで尖り
すりいぴい
「ひめぢよをん」だけをじっと観察した純正の一物仕立て。この花の特徴の一つは頭状花序。花に見えるものは、小さな花の集まりなのだそうです。花弁にみえるもの一つ一つが花であるという認識から、「ひめぢよをんの影」を観察する態度が生まれ、その影の「すみずみまで」が切なく尖っていることに気づく。これもまた、季語との豊かな交信だと、私は思うのです。
姫女苑花びら廻すねじはどこ
日出時計
「姫女苑」の素朴な「花びら」のカタチを思うと、ほんとに、どこか「ねじ」があって、それを捻るとゼンマイ仕掛けで「花びら」が回り出しそうな気がしてきます。「花びら廻すねじはどこ」という可愛い問いかけは、まさに童心の言葉ですね。
ぢよをんぢよをんとうしはゆばりすひめぢよをん
山名凌霄
「姫女苑」を歴史的仮名遣いで書くと「ひめぢよをん」。この字面を活かそうとする発想もありました。一体これはどう読むのだ?と、読者はこの句の前に立ち止まります。「ぢよをんぢょをん」はオノマトペ、「うし」は牛、「ゆばり」は尿です。牛が盛大におしっこをしていて、そこに「ひめぢよをん」が群れ咲いているのです。平仮名のマジックは、見事作者の狙い通り成功しています。
ほじょりんのががががひめじょおんははは
吉行直人
こちらも全部平仮名ですが、「ひめじょおん」は現代仮名遣いですね。「ほじょりん」は補助輪、この一語で子どもの自転車だと分かります。子どもの自転車の補助輪が「がががが」と鳴っているのは、草原でしょうか、土手の道でしょうか。「ひめじょおん」は笑うように「ははは」と風に揺れています。
すきとあいなにがちがうの姫女苑
むらさき(7才)
俳句の選をする時、私は「大人だから」「子どもだから」と違った基準を当てはめることはしないのですが、この句は7歳のむらさきちゃんの率直な問いだからこそ味わえる作品だなあと思います。
ママのこともパパのことも「すき」だけど、「あい」って言葉はちょっと違うらしい。「すきとあいなにがちがうの」という可愛い疑問に、素朴で可憐で強かな「姫女苑」は、一体なんと答えるのでしょう。
姫女苑猛り静かな電気柵
にゃん
可愛く見える「姫女苑」ですが、その繁殖力は驚異的。種が35年も生きてるというのですから、ほんとに驚きます。畑を耕す人たちにとっては、とても迷惑な植物でもあるのです。
「姫女苑」の「猛り」はまさに静かな猛りであり、猪や猿から畑を守る「電気柵」もまた静かにそこにあります。「姫女苑」に絡め取られている「電気柵」。この光景も印象的です。
除染袋の間より生ふ姫女苑
星埜黴円
「除染袋」の一語で、私たちは黒い袋が果てしなく並ぶ禍々しい光景を思い出すことができます。なぜ「除染袋」が並べられているのかという現実も知っています。その袋の間から伸びている「姫女苑」の姿に、ハッとします。健気でもあり、その猛々しい生命力に畏怖の念もいだきます。読み終わったとたん、私は「除染袋」を覆い尽くして咲き広がる「姫女苑」が見えた気がして、ドキッとしました。「姫女苑」の下にある「除染袋」を、百年後を生きる人々はどう受けとめるのでしょうか。

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