俳句ポスト365結果発表

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第244回 2020年5月28日週の兼題

プール

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天

志望校下げてプールに浮いている
あいだほ
「プール」を季語として扱うことは、やはり難しいと痛感しました。季語「泳ぎ」は、泳ぐという行為が中心ですが、「プール」とは泳ぐための水の器。その違いを表現する工夫が必要です。さらに「プール」自体は年中あるわけですから、夏らしさをどう確保するのかも悩みどころです。今回は迷いに迷って、実感という意味においてこの句を推したいと思います。
「志望校下げて」で、高校三年生の夏かと読めます。受験正念場の夏に、早々と「志望校」を下げる決断をした。担任の強い勧めか(脅しか)、親の主張する安全策か、本人の決断か、抜き差しならぬ事情があったか。前半の失意と悔しさが、後半「プールに浮いている」という措辞によって、ポカンと映像化されます。夏の明るさと眩しさと歓声と水が満たされた「プール」という器の中で、この人物はただ浮いているのです。
「志望校」を下げるのなら、ここから必死で勉強せねばならぬわけではない。この夏を泳ぎたければ、泳ぐことだってできる。が、安心感を手に入れたとは思えない喪失感。(まさか「プールに浮いている」のは別な意味? と一瞬疑ってしまうが、いやいや、いくらなんでもそれはないよと、そんな解釈をねじ伏せる。湊かなえ、の小説かいッ?と自分で突っ込んでしまう。)映画のワンシーンのようなカメラワークが、「プール」を季語として描く。そんな作品でした。

地

プールやさし十字架のかたちに浮けば
RUSTY
「プール」に浮いている句は沢山ありましたが、「プールやさし」から始まる展開が巧いです。さらに「十字架のかたち」という比喩そのものが詩。こちらも映画のワンシーンのようですが、「志望校」の句のような青春映画ではなく、マフィアとかが出てくるような……『ゴッド・ファーザー』みたいな、大人の愛と哀しみを描いた映画のような読み心地。これも「天」に推したかった一句です。
唇を読んでプールの端と端
京野さち
「プール」の広さを、「唇を読んで」という動作や「端と端」という面積?のイメージで表現した発想がいいです。この「唇」は、恋人同士か、親と子か、上司と部下か等、人物によって、映像や意味が変わってくのも面白いと思います。「唇」の表情もどんどん変わってきて、この句にも短編映画が描けるほどの内容がありそう。
水面打つ雨を底より見るプール
純音
今回寄せられた「プール」の句では、「水面」「底」「雨」などの語が多用されていました。が、それらの言葉を全部使いつつ、「水面を打つ雨」を「プール」の「底」から見るという状況に、独自性があります。そして、読者である私たちに、その「雨」を追体験させるだけの説得力があります。
プールの底こぉんこぉん機械音
仁和田 永
「プールの底」に潜ると、なんだか分からないんだけど「こぉんこぉん」と音が響いているような気がする。あれは「プール」の水を濾過する「機械音」に違いないと思いつつ、水底でその音に意識を集めているのです。「プール」という水の体積を、こんな音で表現することもできるのだな。
れーんいくつもいくつもくぐりてプールに抱き合ふ
雀虫
「れーん」を「いくつ」もくぐって「プール」の中で「抱き合ふ」?一瞬、恋人同士の「抱き合ふ」かと思ってしまうのですが、次の瞬間に、競泳のレース後、選手同士が讃え合う姿だと分かる。この展開が作者の企みというヤツでありましょう。俳句としてはちょっと長過ぎるけど、その企みを楽しませてもらいました。
シフト明けの帰路プールから嬌声
戸部紅屑
「シフト明けの帰路」だけで、疲れの身体を引きずるような印象を持ちます。そこに聞こえてくるのが「プールからの嬌声」。働き続ける自分とは関係のない夏が、そこにある。その思いが、疲労感をさらに重くするのです。
以下の同時投句の発想に、笑ってしまいました。
【急募】プール監視(人・河童不問)
戸部紅屑
排水溝プールの水のだらしなく
南方日午
「プール」の水の青さ、爽快さ、明るさ、楽しげな声などを用いて、夏の季語らしさを描こうとした句は沢山ありましたが、「プール」をタプタプと溢れていく「排水溝」の「水」をこう表現した点に、別な意味の夏らしさを感じます。夏の倦怠というか、密かに腐っていく水の匂いというか。「だらしなく」の一語が、それを実現しました。
相撲部のぎつしりとゐるプールかな
めぐみの樹
これも笑ってしまったよ。よりによって「相撲部」か、と(笑)。練習終わった後の部活ならば、野球部でもサッカー部でも卓球部でもよいのだが、水泳部と同じ裸が勝負である「相撲部」が「ぎっしりとゐる」というのが、暑苦しくていい。季語「プール」の夏らしさは、暑苦しさでも表現できるということだよな。
ひらパーのプールにちゃらいナンパかな
にゃん
最初、何をいってるんだ、にゃん? と瞬殺しようとしたのだが、「ひらパー」が大阪の枚方パークだと思い当たったとたん、「ちゃらいナンパ」がありありと見えてきたよ。「プール」の「ちゃらいナンパ」も、夏の風物詩だと言われれば反対はできないな(笑)。

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