俳句ポスト365結果発表

  1. TOP >
  2. 結果発表 >
  3. 唐辛子

第248回 2020年7月23日週の兼題

唐辛子

  • よしあきくん一期一会の一句
  • 初心者向け解説コーナー今週の俳句道場
  • 今週のお便り
  • 人・並選の俳句
  • 天・地の俳句

天

百鬼退散たうがらしを沢山
あまぶー
「百鬼退散」で7音、「たうがらしを沢山」で10音、足して17音になる破調です。「百鬼」とは色々な妖怪。「百鬼夜行(ひゃっきやぎょう=悪人どもが時を得て、勝手に振る舞うこと。多くの人が怪しい醜い行為をすること)」なんて言葉もありますが、悪さをする妖怪たちを「退散」させるために「たうがらし沢山」言い切る後半の措辞に、勢いがあって愉快です。中国の民間信仰では、魔除け厄除けの力があるとされ、軒先や玄関先に吊されていたりしますが、この句の「たうがらし沢山」は唐辛子をたっぷり使った料理を思いました。なぜか中華鍋に放り入れられた「たうがらし」が油に跳ねるさまを思い浮かべのは、「百鬼退散」の四字からの連想だったのかもと、今気づきました。
勿論、料理と限定する必要はありません。庭に沢山の唐辛子を植え、沢山収穫し、沢山軒先に飾って「百鬼退散」させようではないかと読んでもいい。「たうがらし」の本意の一面をストレートに捉えての一句です。

地

ぷきりぷきりとうがらしはがらんどう
しゃれこうべの妻
こちらは6音と11音の破調。「ぷきりぷきり」はかなり乾ききった唐辛子の音でしょう。「ぷきりぷきり」と折ってみると、中は「がらんどう」。折る時の手触りがリアルに伝わるオノマトペです。
もうもうと湯気の屈強鷹の爪
中山月波
傍題「鷹の爪」の一句。上五中七の措辞、特に「屈強」の一語が巧いなあ。「もうもうと湯気の屈強」から「鷹の爪」の赤が見えてくる構成もいいです。「湯気の屈強」で、またまた中華料理の厨房を思ってしまったのですが、なんかよっぽど腹減ってるのかな、わたしゃ。
触れたれば噛みつくだらう唐辛子
ちょっと触ると「噛みつく」かのように「唐辛子」です。これも赤いヤツを思いました。色だけでなく、その乾きようも猛々しく曲がっているのかもしれません。少し迷ったのは、作者の表現したかったのは「触れたれば」でいいのかという点です。もし仮定の意味を述べたかったのならば、「触れたらば」になります。
毎日を正しく怒れ唐辛子
うしうし
「唐辛子」と怒りを取り合わせた句、かなりありました。が、この「毎日を正しく怒れ」というフレーズが「唐辛子」の存在に似合っています。不純な怒りではないのです。さらに、この命令形は、他人に向かって発せられたものというよりは、自分自身に向かっての内省とも読めます。そう読むと「唐辛子」の存在が凜々しくなりそうです。
唐辛子堪忍袋は小さいの
シュリ
同じ怒り系の発想ですが、「堪忍袋は小さいの」が愉快です。なんでそんなに君はカリカリ怒るんだッ! だって私の堪忍袋小さいんですもの、なーんて可愛い言い訳です。「唐辛子」も小さく尖っているのでしょうね。ちょっと囓るとピリリと辛いのでしょうね。
子育ては辛い唐辛子は辛い
とりこ
「辛い(つらい)」と「辛い(からい)」は同じ字を書くのだという気づきからの発想。「子育て」は実にシンドイことばかりだ。「唐辛子」もカライこと限りないが、それぞれに別の喜びのあるのだよね、と作者は心の中で納得もしているのでしょう。
子育ては失敗唐辛子いっぱい
テツコ@第二まる安
同じ子育て系ですが、「子育ては失敗」と呟いています。YouTube(夏井いつき俳句チャンネル)「俳句人生相談」風に言わせてもらうと、成功する子育てのほうがよっぽど少ないのですから、しょげることはありません。子どもは勝手に育っていく。そう信じてやることが大事。「唐辛子いっぱい」育てて、ピリリと食べて、親こそが元気に生きててやることが、子どもたちへのせめてものエール! 今、これを書きながら、私も自分を慰めておりますよ。嗚呼、「唐辛子いっぱい」食べたくなったよ。
純情なやつって強い唐辛子
のつり
「純情」の一語は、「純真で邪心のない心。また、その心をもっているさま」と辞書には解説されています。良い意味の言葉には違いないのですが、「純情なやつって強い」という呟きは、単純な賛美ではなく、「純情なやつ」の鈍感力にちょっと苛ついている感じ。ふん、純情なやつって強いよね、どうせ私は「唐辛子」だし……という自嘲も混じっているのかも。
仕送りなくて唐辛子と居る栄光荘二号
利尻
俳句としては長すぎますが、自由律俳句というジャンルもありますから、許容しましょう。「仕送りなくて」食べられるものが何も無くなって、いつぞや送ってもらった「唐辛子」だけが赤々とあるのでしょう。「唐辛子と居る」の擬人化は、自分自身を戯画化する仕掛け。「栄光荘二号」の粗末な作りも見えてきて、なんというネーミングの勝利。栄光荘にカンパイ!
鼻穴に合ひさうではある唐辛子
さるぼぼ@チーム天地夢遥
栄光荘の二号室にいる人物が、こんなことしてそうで、ツボに入ってしまいました。が、よくよく読んでみると「鼻の穴に合ひさう」というサイズ感は、ちゃんと映像喚起してくれますし、「~ではある」によって、そんな馬鹿なことをする気のないことも分かる。案外、良い句じゃないのかと思い直した次第です。

ページの先頭