俳句ポスト365結果発表

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第252回 2020年10月1日週の兼題

熱燗

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天

熱燗の腹の継ぎ目のかたちかな
常幸龍BCAD
今回の『天』は悩みました。季語「熱燗」の持つ人生の悲哀を詠んだ多くの句にも、味わい深いものがありました。「熱燗」が「腹」に落ちてくる句も山ほどありました。が、ここまで丁寧に描写すると一気にリアリティとオリジナリティの数値? が上がります。他の酒との違いを考えた時、「熱」「燗」はどちらも温度の高さを意味する文字。この「熱燗」という季語の特性と真っ向勝負にでた意欲を買って、この句を『天』に推します。
「熱燗」が舌から喉へと落ちていきます。熱のかたまりは喉の壁を伝いつつ「腹」へ。この句の眼目の一つは「継ぎ目」という言葉です。普段は意識することもない内臓に「継ぎ目」があると感知した点に俳味があります。そして、更なるダメ押しが下五「かたちかな」という詠嘆。助詞「の」を繋げることによって、熱い酒がゆっくりと落ちていく時間もイメージさせ、下五「かな」が全ての言葉を受け止めます。「腹の継ぎ目のかたち」をしみじみと味わいつつ、「熱燗」を内臓壁で捉えるという酒飲みならではの一句です。

地

熱燗や重心臍を外れだし
戸部紅屑
酔っ払ってフラフラするのは当然のことですが、それを「重心」が勝手に「臍」を外れていくのだ、と発想した点が愉快ですし、実感もあります。下五を、切れのない型にしたのも効果的な配慮です。
はした金惜し熱燗の香のつんと
RUSTY=HISOKA
「はした金」などくれてやる!と毒づけるものなら、ついてみたいが……「はした金」もやはり金。惜しいにきまっています。「熱燗の香」が鼻腔に「つん」とくる。ああ、佳き香りだと思う……と、また「はした金惜し」と呟いてしまうのです。
熱燗や恩師はだいぶ縮んでた
⑦パパ@いつき組広ブロ俳句部
「熱燗や」の後に「恩師」という人物が出てくれば、共に酌み交わしていることは想像できます。あんなに大きく見えていた先生は、こんなに小さな人だったのだという感慨。「だいぶ縮んでた」という口語表現に共感が湧きます。
熱燗や座敷わらしを膝へ呼ぶ
いさな歌鈴
「熱燗や」の後に、今度は「座敷わらし」です。北国の古い家でしょうか、座敷童子がいるという評判の宿でしょうか。「座敷わらし」を「膝へ」呼んで、頭を撫でながら「熱燗」をすする。虚実の狭間に遊ぶ一句です。
やまいぬのやうな眼のをんなと熱燗
きゅうもん@木の芽
「やまいぬのやうな」は「眼」にかかっていきます。野性の匂いのする凶暴な眼です。その「眼」が「をんな」の眼であると分かったとたん、「熱燗」の匂いが急に濃くなってくるかのようです。破調のリズムを活かしつつ、最後に季語「熱燗」を印象づける。手練れの技です。
熱燗や火の舌をもて国を説く
古田秀
「熱燗や」の後に「火の舌」が出てくると、熱さに舌を焼いたかとも思うのですが、下五によって、火を噴くような勢いで語っているのだと分かります。「国を説く」とは、国を憂う気持ちから発する議論でしょう。かつて学生運動に走った人々を思ったのは、私の年齢ゆえの鑑賞でしょう。三島由紀夫の幻影も見えたような気がしました。
こつそりと弔辞褒められ燗熱し
木江
「弔辞」ですから、作中人物は故人と親しかった人。葬儀や告別式で、最後のお別れの言葉を述べたのです。胸に沁みたよ、いい弔辞だったと「褒められ」て、静かな微笑みを返す。そんな場面を描く工夫として、上五「こつそりと」が巧みです。
下五「燗熱し」は、熱いという事実に軸足がありますので、傍題の使い方としても的確。映画のワンシーンのような作品です。
おほかたは去りて熱燗めんどくさ
利尻
宴会なのか、葬儀なのか、さっきまでいた人々の「おほかた」は去ってしまったという読みが一つ。さらに、「おおかたは去りて」を、近しい人々の大方が亡くなって、という読みもあるでしょう。後半の「熱燗めんどくさ」という口語の呟きに、淋しさが滲みます。「熱燗」とは、つけてくれる人があっての熱燗なのだな、と。
熱燗をひっかけ潜るシュラフかな
ざうこ
「熱燗をひっかけ潜る」で、我が脳は先走り「蒲団かな」という展開を一瞬思ってしまいました。そこからの「シュラフかな」という下五にささやかな意外性があります。ふて寝する蒲団ではなく、一人キャンプの「シュラフ」だろうか、夜になると気温が下がってくる。テントの中は寒い。火を落とす前に熱燗をひっかけたのだな、冷たい星空が広がっているのだな、と想像が広がっていきます。
熱燗や映画のロシア人悪い
玉庭マサアキ
「熱燗や」という上五がずらーーっと並んだ今週ですが、この季語での取り合わせは、案外難しいと感じた人も多かったのではないでしょうか。「熱燗や」の後に「映画のロシア人悪い」と呟くだけで一句になる!という驚き。してやられたな~という感じです。
「熱燗」飲みながらさっき観た「映画」の話をしているだけなのですが、どんな「映画」を観たのか、どんなストーリーでどんな役回りの「ロシア人」なのか、妙に気になります。試みに、「ロシア人」のところに「ギリシャ人」「ローマ人」「カナダ人」など3音の国名を入れ替えてみたのですが、どうもしっくりこない。「ロシア」という国名が「熱燗」の熱さを下支えしているのかもな、と納得した次第です。
同時投句「熱燗や前世が猫の方こちら」「熱燗や灘高行けなくても褒める」「熱燗や日本の神みな寂し」など、やりたい放題やってくれてます(笑)。

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