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DIARY

季語深耕部 byハイポニスト

2023.03.27お便り

兼題「鳥雲に入る」に関するお便りを紹介します。

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●「鳥雲に入る」について、今回は別な季語との比較をしながら考えてみました。この季語は、越冬のために日本に来ていた渡り鳥が、北へ帰る際に、雲の間に消えていくように見える様子を指します。傍題には五音の「鳥雲に」があります。歳時記を見ると、「鳥帰る」という季語がお隣に載っています。こちらも五音の季語。角川大歳時記には、「鳥雲に入る」の項に「具体的な景というよりは『鳥帰る』と同義の言葉として使われているようだ」とあります。私の住む宮城県・伊豆沼をはじめ、日本の各地には越冬のために渡り鳥がやってきます。その中には白鳥や鶴、雁など大型の鳥もいれば、ヒワやツグミといった小型の鳥もいます(何をもって大型とするかは、成美堂出版「俳句の鳥・虫図鑑」のよりました)。「鳥帰る」と言えば、大型の鳥でも小型の鳥でも含まれますが、「鳥雲に入る」となると、雲に入っていくように見えるくらいの大きさの鳥が視覚的に必要です。越冬地から鳥が減っていることに気付いて句を作ることもありえるだろうし、湖から鳥たちが飛び立つ様子かもしれません。渡り鳥が北に向かって飛び立つ朝の動画では、夜明けと共に鳥が一斉に飛び始め、入り乱れ、爆音とも取れる音が視聴できました。立ち位置を湖沼に固定して考えると、「鳥雲に入る」「鳥雲に」だと、目の前の湖沼からは既に鳥はいなく、雲へ向かって消えていく遠景の姿が強いと感じます。音は遠い分静かだし、マガン辺りだと、最少の群れは家族で、渡りの時は何家族かが編隊を組んで飛んでいきますが、その数は多くて数十羽程度。先に記した「鳥帰る」と比べるとその数は歴然としています。ウェブ検索してみると、鳥が飛ぶときの最高高度とか、ヒマラヤの山々より高く飛ぶ鳥の驚異について書かれる記事を見られますが、それは極端な例ではないかと考えました……やはり伊豆沼の雁を思うのですが、あれは高度何mを飛んでいるものか、と。色々探しているうち、環境省の風力発電施設に係る渡り鳥・海ワシ類の情報整備 | 自然環境・生物多様性 | 環境省 (env.go.jp)というWEBページを見つけました。「曇り空であっても太陽光を感じる、高層雲の広がった、春の明るい曇り空の雲」であり、「陽光は感じるが雲を通してのすっきりしなさがある。それをもたらす春の雲」へと飛び込んでいくのが、この季語での「鳥」の姿でしょう。飛行高度は200Mくらいの鳥、それが2000M以上の雲へ向かっていくように見える、そんな季語なのかもしれない。/千代之人

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※たくさんのお便りありがとうございます♪ 皆で楽しく読ませていただいています。

写真タイトル 松山総合公園からの眺め

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