兼題「囀」に関するお便りを紹介します。
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●角川大歳時記には「春になると小鳥たちが繁殖期を迎える。その頃の鳴き声」とあります。四季を楽しむ日本人にとっては、春の到来を告げる喜びの音に聞こえ、珍重されてきたようです。都会に住んでいる人でも、ちょっとした公園に行けば、環境に順応しているスズメやセキレイの仲間の囀りは聞けるかと思います。今回は、「鳥はなぜ囀るのか」「囀りに伴う鳥の営みとはなにか」ということを、少し調べてみました。まずは囀りのため鳥が持つ器官についてです。鳥には鳴管という発声器官があります。気管と気管支の間にあるこの器官を調節することで、鳥はいろんな鳴き方ができるといいます。いろんな鳴き方と言っても、大まかにいえば「地鳴き(call:呼びかけ)」と「囀り(song:歌)」の二種に分けられます。地鳴きには、敵(捕食者)を知らせるアラームコール、仲間内で情報共有をするコンタクトコール、餌を求めるペディングコールなどがあります。一方「囀り」です。鳥はなぜ囀るのか。一つは、縄張りの主張という側面があります。小鳥の囀りを耳にしたとき、左のほうで声がしたと思ったら、右あるいは後方など、方向は様々ですが、呼応するように声が聞こえることがありました。何か異変が起これば、縄張りを狙ったりし合う、なんとも言えない隣人関係があるようです。もう一つは、求愛という面での囀り。囀りあう鳥の声を聞いたとき、音域が広く長く、音節も沢山あるな、と感じます。また、同じメロディラインを何度も繰り返しているな、と。例えば、先日近所の公園に行ったとき、セキレイの仲間のビンズイと思しき囀を聞いたのです。なかなか音節が多く長く複雑なメロディでした。「長めのメロディを、大きな声で、音を外さずに繰り返し発している」。これは、小鳥の雄の健康状態のバロメーターになるようです。そのような囀りを発している雄の縄張りに、雌は向かうとのこと。雄同士でも「こいつになら勝てそうかも(あるいは、負けるかも)」と判断材料にしていると言います。縄張りの主張と求愛。鳥の立場としてみれば、生活基盤となる場所(いわば自分の命のため)の主張であり、種の存続のための鳴き声が囀りだと言えそうです。今回の文章を書くにあたり、岩波新書『小鳥はなぜ歌うのか』(著者・小西正一)等を参考にしました。 /千代 之人
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※たくさんのお便りありがとうございます♪ 皆で楽しく読ませていただいています。
写真タイトル:興居島から松山沖を望む