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2019年11月28日週の兼題
冬眠
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熊胆のごとき太陽冬眠す
まこちふる
選者コメント
夏井いつき
選
季語「冬眠」は動物の季語。ゆえにどうしても「冬眠の○○」と蛙や蛇などの生き物を書くことになりがちです。それはそれで全く良いのですが、せっかく皆で挑むのですから、季語「冬眠」とストレートに向き合っている句を選びたいと考えておりました。 さて、掲出句の「熊胆」とは「ゆうたん」と読みます。文字通り熊の胆嚢。漢方薬です。中屋彦十郎薬局HPには、以下のような解説がありました。【第三類医薬品、熊胆は「薬性論」に「小児の五疳を主治し、虫を殺し、悪瘡を治す」とあり、唐本注、神農本草経にも収載されている。冬期間にとれた熊の胆は匂いがしない。射殺したクマから血液や脂肪の夾雑物が入らないように胆嚢を取り出し、これを冬期間陰干しにするとカチカチに固まる。これが生薬の熊胆で、不透明黒色の固い塊である。多くは卵球形である。一種の香気があり、味はきわめて苦い。】 この文章を読めば「熊胆のごとき太陽」がどのような太陽か、想像がつきます。不透明で黒色の塊、卵球形の太陽です。生き物たちが「冬眠」する小さな穴から見える太陽はこんな印象なのでしょうか。あるいは、厳寒の暗い雲の向こうにある太陽を作者の心がこのように感じ取ったのかもしれません。 「熊」の一字と「冬眠」が良い意味で響き合いますし、「熊胆のごとき太陽」の比喩は冬という季節の感覚にも合致します。一種の香気があって、味はきわめて苦い。「冬眠」する生き物たちにとって、「太陽」とはまさにそういうものではないかと、この比喩の力に脱帽します。
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