類想一覧(選外)
一杯の水を分け合ふ原爆忌
塩野谷慎吾
原爆忌サイレン仰ぐ球児かな
陽花天
原爆忌日にちも知らぬ人数多
北斗星
原爆忌いってきますといったまま
季切少楽@いつき組広ブロ俳句部
ハンバーガー食む原爆忌の真昼
伽那
供ふるはたっぷりの水原爆忌
老人日記
自販機のボトル落つ音原爆忌
いこん
原爆忌いつもと同じ朝でした
朶美子(えみこ)
止められぬ戦争さなか原爆忌
林 水城
また一人名前を刻す原爆忌
黒澤墨青
線香を1本増やし原爆忌
いちご一会
あの朝の川面は静か原爆忌
わたらい百々世草
あの鐘を聞けば見上げる原爆忌
康寿
資料館立ち尽くす子の原爆忌
越前岬
今は亡き影を踏むかな原爆忌
アルセーヌ
折り鶴の涙に滲まむ原爆忌
山本 マユミ
再生の折り鶴供う原爆忌
塩風しーたん
永遠に祈らむ平和原爆忌
HNKAGA
原爆忌疎開記憶の古日記
夏目たんちゃん
手を合わせ七十七の原爆忌
ふみ
飯碗に並並と水原爆忌
佳葉
もの溢れ心ぽっかり原爆忌
越後ちりめん
原爆忌夾竹桃の緋よ哀し
猫楽
これほどの同じ命日原爆忌
池 閑茶
『原爆忌』平和へ平和へ鐘ひとつ
さいとう歌月
オバマ氏の折鶴は紙原爆忌
福良ちどり
原爆忌おじと従兄弟と太田川
八尾の正吉
広島忌大統領も折鶴も
哲山(山田哲也)
原爆忌黒く焦げたる三輪車
村岡花風
爆心地のこるドームに思ひ馳せ
かじまとしこ
白球の光る青空原爆忌
根本葉音@花芭蕉句会
原爆忌平和の火をば絶やさずに
喜多 輝女
三輪車真っ黒焦げや広島忌
赤堀都忘れ
「ただいま」と言うはずだった原爆忌
沙那夏
墓石の叔父の面輪や原爆忌
俳菜ひろこ
十一時二分の快晴原爆忌
舞白祖父登
水筒の水を一口原爆忌
石塚彩楓
黙祷の球児幸あれ原爆忌
山法師彰子
米粒の一つ残さず原爆忌
西村 棗
原爆忌義兄忍びて七拾五年
きさらぎ
灼熱に灼熱重ぬ原爆忌
ひめばしょう
祖母の母が死んだおはなし原爆忌
服部 あや
その刻の祈りは絶えず原爆忌
渡嘉敷五福
折り鶴をきちんと折りて原爆忌
加藤 尚茶
原爆忌紙鉄砲と折鶴と
千代 之人
広島忌祖父の歳超え黙祷す
橋本彩雅
太田川みずきよらかに原爆忌
せりよさ
皺くちゃの手の語り部や原爆忌
諸塚凡志
死んでいたかもと言ふ母長崎忌
春よ来い
原爆忌ドームは無言の語り手
如月 ゆう
原爆忌あれば使いたくなる原爆
国東町子
B-29の光の記憶原爆忌
きのと
ヤハウェは見て見ぬふりや原爆忌
川岡すえよし
原爆忌孫の合掌をみている
中町太郎晴臣
宙に起つ生者の驕り原爆忌
オアズマン
原爆忌子庇う母の影哀れ
一碁一会
ウクライナ強きが正義原爆忌
周坊
子の誓いに被爆者なみだ原爆忌
ほんちゃん
原爆忌八月五日の「また明日」
猫髭かほり
語り部の口ぶり静か原爆忌
聞岳
曾祖母の弾く鎮魂歌原爆忌
東原桜空
長崎を最後の戦争被爆地に
藤倉密子
黙祷の薄目の五歳原爆忌
水間澱凡
真白なる静寂の朝原爆忌
瞳子
原爆忌非戦の誓いいつまでも
れんげ畑
原爆忌無色の空白の有りし
法典
慰霊碑にしとどの雨や原爆忌
原島ちび助
おる度に祈りを込めて原爆忌
千葉睦女
原爆忌誰の上にも同じ空
江藤 薫
理想ではない実現を!原爆忌
緋夢灯
一杯の水ゆつくりと原爆忌
愛柑
自販機の冷たいコーラ原爆忌
ヅラじゃない
空を指し語りし祖母よ原爆忌
井田みち
語り継ぐ黒き雨降る広島忌
里甫
時止めて余白広がる原爆忌
新城典午
ポン菓子のどかんと鳴りて原爆忌
みなみはな
何気なく天を見上げる原爆忌
瀬戸ティーダ
鶴を折り兜を折りて原爆忌
二丁目
祈る背に九条揺るる原爆忌
想予
原爆忌歪んだままの三輪車
リカ
語り部の静かな口調原爆忌
りんごのほっぺ
母はまだ九歳でした原爆忌
文月あつみ
原爆忌止まったままの十五分
早坂 一周
知ってるだけ申し訳なき原爆忌
邦生
原爆忌続く限りが戦後なり
花屋英利
この世にも地獄はありぬ広島忌
余田酒梨
原爆忌日差しに向かい黙祷す
羅美都
平和祭止まったままの壁時計
流流
右頬に残るケロイド原爆忌
有田みかん
原爆忌夜のニュースでそうと知る
森無田
原爆忌一糸乱れぬパイプ椅子
くずもち鹿之助
二の鳥居なを一本足で原爆忌
林りんりん。
ピカドンを訳せぬ米語原爆忌
津軽まつ
パイプ椅子等間隔に原爆忌
山野麓
原爆忌ムンクの叫び届かぬ日
川島欣也
十四分までの平穏原爆忌
晴好 雨独
今朝の雲みんなキノコ似原爆忌
吟 梵
朴訥な語り部の声原爆忌
クロまま
六年後生まれた私原爆忌
柚和
公園に影踏みの子ら原爆忌
睦月くらげ
蒼天の平和公園原爆忌
Nakahara結月
黙祷のうす目の吾子と原爆忌
向原かは
アツイイタイクルシイイヤダゲンバクキ
ともかわすてむ
ほんとうの生き方を問う原爆忌
きうこまやりも
クレヨンは赤黒白や原爆忌
久米穂風
折鶴の色もあせをり原爆忌
清水千種
生かされし今語り継ぐ原爆忌
さの風里
原爆忌「コクラ」であつたかも知れぬ
影山らてん
黒い雨浴びし同胞原爆忌
ひろ志
再軍備唱えて街宣原爆忌
相模の仙人
引き剥がす爪のささくれ原爆忌
下條ちりり
ささやかな朝餉を偲び原爆忌
虎穴虎児
原爆忌「ちひろ」の描いた子の瞳
田村 宗貞
原爆忌鳩の啼かない鳩時計
霞草
絵空事為す術無きて原爆忌
雅由
その折は四つと少し原爆忌
きょんちゃん
錆びついた肝油ドロップ原爆忌
アンサトウ
四世の赤子生れたる原爆忌
八幡風花
原爆忌時の止まった壁時計
蓬菊
フクシマの汚水放出原爆忌
石垣 葉星
原爆忌千羽鶴もウクライナ色
宇田建
ドロップの缶カラカラと原爆忌
まぐのりあ@蚊帳のなか
一杯の水飲み干すや原爆忌
渡部 あつし
母の母語らずままの原爆忌
新子熊耳
ゆらゆらと哀悼の鐘原爆忌
むねあかどり
忘却は罪広島原爆の日
姫川ひすい
外つ國の戦も悲惨原爆忌
かとしん
『はだしのゲン』を読む子やめる子原爆忌
三河朱奇
原爆忌川辺に溢る母子黒し
沙季一世
原爆忌言葉だけ知る祈りの日
たかこ姫
原爆忌また八月の黒い雨
青鷹
付きまとう公費一九原爆忌
南風紫蘭@木ノ芽
ハンバーガーがっつり喰らう原爆忌
そまり
原爆忌猶し日本は傘の下
荒木豊
ケロイドの子を負ふ陰画原爆忌
誠馬ノマド
原爆忌生きて生きて生きて生きて生きる
羅蒐
忘れゆく罪の深さや原爆忌
だけわらび
ドロップ缶カラカラ泣いて原爆忌
林 和寿
魔のニ日黙祷ささぐ原爆忌
中野風鈴
踏切の警報機鳴る原爆忌
安藝 卯月
あの朝はいつもと同じ原爆忌
鈴野蒼爽
献水に聞こゆ水みず原爆忌
石塚碧葉
ウクライナの国旗の電車原爆忌
つつ井つつ
ピカドンの意味を問う子や原爆忌
髙橋弓女
語り部の背丸く小さき原爆忌
野良人たま
原爆の日の逆さまの三輪車
丹下京子
原爆忌被爆ピアノの受く光
安部亜喜代
ヒーローのお面ねだる子原爆忌
若井柳児
一九四四年の原爆忌
風舎哲坊
繰り返さぬは誰あるべきや原爆忌
葉月けゐ
原爆忌恐怖のバトンを次世代へ
さくらんぼ
原爆忌折鶴続く今もなお
午 勢至
原爆忌何もその日に限らない
たけろー
原爆忌入道雲がきのこ雲
吉田 無学
無音なる真澄みの空や原爆忌
渡辺桃蓮
原爆忌歌えや三度許すまじ
あきみ
死して声また一つ消ゆ原爆忌
高市青柘榴
死没者の名簿に祖父も原爆忌
伊藤てまり
語り部は彼の日見つめつ原爆忌
美津うつわ
鎮魂の子らのうたごゑ原爆忌
金太郎
母の名を借り投下せし原爆忌
団栗あんパン
語り部の遺志を引き継ぐ原爆忌
紋舞蘭
原爆忌みんなの思い飛んで行け
リリンゴ
一九四五年生死彷徨原爆忌
蓮風
風となり七十七年原爆忌
石野上路無
原爆忌ばあばの腕の火傷痕
茂平次
見て聞きて語り伝えん原爆忌
秦 理露
黙祷の通勤途上原爆忌
遊泉
旅客機は飛ぶよ原爆忌の空も
霞すみれ
ゲルニカの母の叫びや原爆忌
西町彰子
故人の名また加わりし原爆忌
重夫
年経るや語り部の減ろ原爆忌
集
原爆忌赤き火が散る記憶かな
くるみ割り人形
流れ行く灯籠静か原爆忌
松元転石
カルピスを薄めに入れて原爆忌
花咲明日香
愚かしい業の凝縮原爆忌
竹村マイ@蚊帳のなか
原爆忌あの日の心よみがえる
マンボウ王愛好家
爆心地川面流るる鎮魂歌
垣岡凡才
味の濃き味噌汁の朝広島忌
空魚
原爆忌尊い痛み二度となく
コケコッコー
原爆忌を聞き聞き者よ語り継ぐれ
論子
想いはせ喉を潤す原爆忌
ろひさま
未来へと語り継がねば原爆忌
田中ようちゃん
核禁止遠退く国に原爆忌
気のまま 風
原爆忌新聞で知る体験記
小田ビオラ
次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!
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選者コメント
夏井いつき選
◆類想類句について指摘するべきことは山ほどあるのですが、今回の兼題「原爆忌」は、いつもとは少々違う感慨を抱いています。
例えば、こんな類想例。
【平和を願う】
・ 千羽鶴 祈りをこめて鶴を折る 折り方を習う、教える
・ 三度目を許さない 過ちを繰り返さない
・ 語り部 → 老いた 手の皺 孫や異国の人が語り部になる
・ 〇〇(祖父や父)は(戦争を)語らず
・ 黙祷 → 甲子園で 台所で 学校で 〇〇の手をとめて黙祷 黙祷の人の横顔
・ 子や孫へ語り継ぐ
確かにこのような句は沢山寄せられたのですが、そこには被爆国に生きる一人の人間としての様々な思いが詰まっています。
さらに、現在の世界情勢から
【過ちは繰り返すもの】
・ ロシア ウクライナ
・ 核廃絶は遠い
・ 人間は弱い 愚かなもの
・ 週末時計が進んでゆく
・ ニュースの扱いが少ない だんだん忘れられてゆく
・ 言葉として知っているだけ 無関心
このような危機感や不安、悲しみを、私たちは今まさに共有しています。21世紀になっても、ウクライナとロシアのような悲惨な戦争が、いとも簡単に起こり得るのだということに驚愕しつつ、恐怖に慄いています。
投句されたコメントの中には、
「戦争を経験していない自分たちが、絵空事で俳句にしてよいのか」という戸惑いの声もありましたし、「あの悲惨な時代が若い人たちには伝わらないもどかしさと、不安を抱えている」という先輩方の声もありました。
様々な思いはあるにしても、
毎年8月がくれば、「原爆忌」の句を作ってみる。それが、平和を希求する強い心となって育っていくに違いないと、私は確信しています。
俳人たちは、体験していない季語や出来事を、五感で生々しく想像する訓練を日々しているのです。その場の臭いや音や皮膚感をリアルに想像する力。それが、恐怖スイッチとなって、危機感を強固にしていく、と。
今回は、巧く作れた作れなかった、選ばれた選ばれなかった、ではなく、「真摯に原爆忌という季語と向き合った」ことを、皆で共有したいと思うのです。
皆さんの作った一句一句が、明日への平和と反戦の礎になると、信じております。
※今回の兼題「原爆忌」中級者以上投句欄へのご投句は、投句数3899句、投句人数1421人となりました。以下、類想句の一覧です。