俳句ポスト365 ロゴ

中級者以上結果発表

2013年6月13日週の兼題

夏の空

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • 夏空をいざ蹴り上げん詠み上げん

    紗蘭

    選者コメント

    夏井いつき

    ●俳句甲子園の会場で応援はできないけれど、私の俳句で応援します!/紗蘭 オーストラリアに留学中の中学生俳人紗蘭ちゃんは、小学生の頃、俳句甲子園のボランティアスタッフ(試合のタイムキーパー)を務め、その体験を夏休みの自由研究としてまとめたことがあります。 そんな俳句甲子園への思いを「いざ蹴り上げん詠み上げん」と表現。畳みかける勢いを、「夏空」の青さ、広さが受け止めます。いつかオーストラリアから俳句甲子園に参戦してくれる日が来るかもなあ~♪
  • 飛行機雲右が私の夏の空

    のんの

    選者コメント

    夏井いつき

    「お姉ちゃんと吟行中に、飛行機雲が空を半分こ。夏の空、右は私、左はお姉ちゃんで分けました。/のんの」 小学生のコメントに、さらりと「吟行中に」なんて言葉が出てくるのも嬉しかったのですが、「飛行機雲」の「右」を「私の夏の空」とする発想の可愛さに惚れました。お姉ちゃんと分けたというのんのちゃんですが、思春期の淡い恋の句のようでもあり、はたまた何かと決別する小さな意志のようでもあり。さまざまに読める点もこの句の豊かさです。 そのお姉ちゃんの一句がこちら。夏空を吸うという発想もまた、ビックリ可愛い~♪ 「ストローさし夏の空から充電中/だいあ@澄んだ青い空は、エネルギーが満タンな気がします!2年生の時に東京に転校したゆうなちゃんに会いに行きたいな。」さりげなく、航空券が欲しいと語るあたり、しっかり者のお姉ちゃんだなあ~(笑)。
  • 父さんがいつもせんたく夏の空

    難波小2年渡部愛梨

    選者コメント

    夏井いつき

    いいなあ!なんだか嬉しそうに堂々と洗濯物を干してるこの「父さん」、いいなあ!「夏の空」っていう季語のやる気満々の明るさが、この「父さん」に似合ってるな。「いつもせんたく」してくれて家事もバリバリ片付ける「父さん」カッコイイ!って、愛梨ちゃんも思ってるんだろうな。娘にこんな句作ってもらえる「父さん」も、サイコーの気分だろうな~♪ 難波小俳句キッズ隊からもう一句。 「学校はべんきょうばっか夏の空/難波小3年松浦木乃香」たしかにおっしゃる通り(笑)。教室の窓から見える「夏の空」は、さあ、外に出て遊ぼうぜ!と誘ってるみたいに青いもんね~♪
  • 夏空や昼から酔うて寡婦の身は

    神楽坂リンダ

    選者コメント

    夏井いつき

    この句も「夏空」が内包する影の記憶から生まれた一句かと受け止めます。「寡婦」となった理由を戦争と決めつける必要はありませんが、「昼から酔うて寡婦の身は」と嘆じる口調には、どこか投げやりな哀しみが漂います。あっかけらかんと明るい「夏空」が、「寡婦の身」の酔いを深めるのでありましょうか。
  • 夏の空スウォン(水原)の豆腐瑞みずし

    笑酔

    選者コメント

    夏井いつき

    たぶん表記としては、「水原」と書いて「スウォン」とルビを打ちたいのではないかと思います。地名はその土地の特徴を表しますから、「水原」も美しい水にめぐまれた土地ではないかと推測します。そこで作られる「豆腐」を思えば、「瑞みずし」という措辞にも納得がいきます。 抜けるように青い韓国の「夏の空」、隣国の「豆腐」の独特の白さ。何もかもが新鮮に見える旅の途上のスケッチです。 「韓国の南漢山城の中の村の手作り豆腐「オポクソンドゥプ」は瑞みずしい白い色の豆腐でした。/笑酔」 同時投句「朝鮮の青き王墓や夏の空/笑酔@6月韓国旅行で王陵に行きました。夏の日ざしのなかで丸いお墓の緑と周りの木々の緑と青空が印象的でした。」実り多い吟行旅行でしたね、笑酔さん~♪
  • 未帰還機マダ帰投セズ夏ノ空

    根子屋

    選者コメント

    夏井いつき

    一読、百田尚樹著『永遠の0 』を思いました。 防空壕に逃げた実体験を語って下さった方もいましたが(「俳句道場」参照)、「夏の空」という季語が戦争の記憶を呼び戻すということ、今回改めて強く受け止めました。 季語「夏の空」に、元気で明るくてエネルギッシュな印象とは別な横顔が生まれたのは、あの終戦の日からでしょうか。暦の上で8月15日は初秋にあたりますが、人々の脳裏には暑い「夏の空」として深く刻まれているのでしょう。 戦争を知っている人たちが次第に少なくなっていくと、季語「夏の空」が抱えている暗い記憶もまた風化していき、溌剌たる広さと明るさをもった季語という認識に再び収斂していくに違い有りません。つくづく季語というものは、時代の記憶と共に生きていく言葉なのですね。 「未帰還機」は「帰投」してないからその名で呼ばれるわけですが、永遠に帰投しない未帰還機の存在を誰かが記憶しておくためにも、こんな句も詠まれていくべきかと思う次第です。
  • 腹の子のしゃっくりかしら夏の空

    逸子

    選者コメント

    夏井いつき

    何か小さくピクリと動いたのに驚き、あら?とお腹を押さえる若いお母さん。一体いまのは何かしら?いつもの胎動とはちょっと違う……ひょっとして「しゃっくり」でもしたのかしら。微笑ましい気持ちで見上げれば、そこには真っ青な「夏の空」が広がります。「腹の子」がその目でこの青空を見る日も近づいています。
  • 夏の空山羊を届けに二里歩く

    公毅

    選者コメント

    夏井いつき

    「山羊」を届けに「歩く」という行為、「二里」という距離が懐かしい時代の手触り。ペットとして楽しむものではなく、実用として飼おうとする山羊のように思えますから、お乳のでる立派なオトナの「山羊」を引っ張って歩いているのでしょう。ひょっとすると母乳のでないお母さんの代わりに、しばし借り受けられる「山羊」なのかもしれません。 「夏の空」を見る度にその小さな思い出が蘇ってくる、そんな一句なのでしょう。「子供の頃ふるさと北海道で親戚の家に山羊をあげるため、縄をつけて炎天下二里歩いたことはきつい体験でしたが、今では懐かしい思い出です。」と語る公毅さんです。
  • 夏空や三試合目の水を撒く

    めろ

    選者コメント

    夏井いつき

    一読、甲子園球場での高校野球を思い浮かべました。「三試合目」というと午後の一番暑い時間帯でしょうか。午前の熱戦で荒れたグラウンドを整備し、丁寧に水を撒いていく作業が続けられています。 「三試合目」という言葉だけで、ここまでの光景を読み手に伝える言葉の経済効率がお見事。「土と芝生のムンムンは水を撒いたら一層凄みを増します/めろ」というコメントそのままの光景がムンムン立ち上がってきます。背後の夏空は、その青をさらに強くしていきます。 同時投句「大いなる影のありけり夏の空/めろ@最近の夏空は、昔の夏空より凶暴な顔を持つようになった気がします。昔は気のせいか、呑気な夏空だったような気がします。」俳句以上に、コメント冴えてましたね、今週のめろさん(笑)。
  • 夏の空まみれの鳥が目の高さ

    佐藤文香

    選者コメント

    夏井いつき

    己の眼球に映った印象を即座に「夏の空まみれの鳥」と感じ取り、言葉として表出できるのが見事。「夏の空」は「鳥」に対して背景でありながら、「鳥」を容れることで「夏の空」という器と成り得ており、それらの感知が「夏の空まみれの鳥」という詩語に結球しています。 また、下五「目の高さ」という措辞によって、読み手は自分たちの立っている場所の高さを即座に体感できる、この手法もまた巧みです。 今回のJALさんからのご褒美航空券、もうワンセットあるのならば、この句にも差し上げたいと思ったほどの一句でありました。
  • ペンギンを返す段取り夏の空

    吾平

    選者コメント

    夏井いつき

    動物園がお見合いのために借りていた「ペンギン」でしょうか、イベント会場に借りだしていた「ペンギン」かもしれませんね。返す日が近づいて、そろそろその「段取り」を確認しなくてはということなのでしょう。ほんのつかの間の付き合いだったけれど、ささやかな愛着が生まれている「ペンギン」との別れ。「段取り」という言葉の向こうに、小さな名残惜しさも感じ取れます。 「夏の空」の青さと明るさ、「ペンギン」の黒と白が、くっきりとした印象を形作る一句です。

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
お待ちしています!

投句はこちら