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俳句文法研究部 byハイポニスト

2022.03.30お便り

俳句の文法ついて記事をお寄せいただきました。

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●俳句文法研究部R40211

組長、皆さま、お久ぶりです。俳句文法研究部、気が向いたらやります。

今回は、まずは「仮定」の話をしてみたいと思います。仮定と言っても、「たら」「れば」話とはちょっと違って(関係なくはないけど)、「仮定形」のことです。その他に未然形や已然形、五段活用の話もしようと思いますので、盛りだくさんです。長文になりますが、お付き合いいただけると幸いです。 


口語の活用形には、「未然形」「連用形」「終止形」「連体形」「仮定形」「命令形」があります。例えば、「書く」でしたら順に、「書か・ない」「書き・ます」「書く」「書く・こと」「書け・ば」「書け」「書こう」と「か、き、く、く、け、け、こ」という活用(五段活用)になります。「書け」が仮定形。 

一方、文語の活用形には、「未然形」「連用形」「終止形」「連体形」「已然形」「命令形」があります。例えばさっきの「書く」でしたら、順に「書か・ず」「書き・たり」「書く」「書く・こと」「書け・ば」「書け」と活用(四段活用)します。「書け」が已然形。


見てお分かりと思いますが、両者が大きく違うのは口語の「仮定形」と文語の「已然形」です。でも、どちらも助詞の「ば」が付いたときの活用形で、表記が同じです。でも意味は正反対です。

 

「仮定形」はその名のとおり、「もし・・・したならば」という意味で使います。一方文語においては、「仮定形」という活用形はなく、「已然形」になります。「已に然り(すでにそうである)」という形だというのですが、学問的には「助詞「ば」「ど」「ども」が付いて順接又は逆接の確定条件」を表す活用形」となります。つまりは「~したので(したから)・・・だ」「~すると・・・だ」「~だけど・・・だ」のような意味になります。


「仰げば尊し」を例にとると、「尊し」が文語体なので「仰げば」の「仰げ」は、已然形。意味としては「仰ぐと尊い(仰ぐ、すると、尊く思える)」となります。内容が仮定の話ではなく、「すでにそうなっている、そのような存在が現にある」から、仮定形ではないのです。


では、文語の仮定形はどうなっているのでしょう。実は、文語における仮定形は、未然形に含まれています。助詞「ば」は未然形に付いた場合、仮定条件を表します。つまり「書く」の例では、「書かば」が「書いたとしたならば」という意味になります。已然形が仮定形に変化していったのは室町時代以降ということです。 以上の、助詞「ば」が付いているときの意味の違いは、口語か文語かで、あるいは文脈から、判断するしかありませんが、特にその句が文語なのか口語なのかどちらにも読めるときには注意が必要です。


さらに、活用のことでもう一つ。口語の五段活用の五段目、オ段の活用形(例:「書こう」)は、意思や勧誘の意味ですが、辞書などを見ると「〇〇形」という活用形がなく、未然形のバリエーションに含まれています。一方文語の場合は、未然形に「~しよう」という意思や勧誘を表す助動詞「む」を付けて、例えば、「書か・む」のようになりますので、形が未然形と同じです。「未然(いまだしからず)」、「まだそうではない」ということですから、まだ現実ではない形、意思や勧誘はまだ実現してないもの・ことですから、未然形なのはある意味当然です。この「かむ」が変化して「かう」になり、それだけなら表記上未然形に含んだままでよかったのでしょうが、「かう」が「こう」となって、四段活用が五段活用になったという流れのようです。(他の例:読まむ→読まう→読もう、呼ばむ→呼ばう→呼ぼう)


今回盛りだくさんでした。また、皆さんの投句から気になることとかありましたら、投稿します。(組長フィルタがかかっているので、俳句ポストでは文法的な疑義があるような使い方の句はあまりありませんが。)ではまた、気が向いたときに。長文失礼しました。/ひでやん

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※たくさんのお便りありがとうございます♪ 皆で楽しく読ませていただいています。


写真タイトル 桜が満開の松山城

写真参照元 https://matsuyama-sightseeing.com/media/gallery/


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