兼題「新酒」に関するお便りを紹介します。
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●『角川大歳時記』掲載の季語「新酒」を要約すると、①今年とれた新米で造った酒。②現在は寒造りが主流なので、秋の季節感が薄くなっている。③寒造りでも材料が新米であり、醸造を始める頃に秋の気配が残っているので秋の季語。実際に存在するものですから、五感全てが刺激される季語です。日本酒の醸造法について、ある書籍によれば、「酒造法は江戸時代元禄期までに確立され、基本的にはほぼそのままの形で受け継がれている」とあります。ただ、寒造りが主流になる前にも日本酒そのものは存在しており、(ここのプロセスを書くとすごく長くなりますので割愛します)突き詰めれば弥生時代に稲作が全国的に広まり、これと共に日本酒造りも広まったと帰結しました。弥生時代の遺跡からは「水口祭(みなくちまつり)」なるものの痕跡が見られるそうです。祭りのシーズンは農業が本格的になる前の頃で、豊作を願い踊りや御神酒が捧げられたそうです。豊作を願う祭りでは、その実りを神様に捧げて報告し、翌年の豊穣を願う祭りもあったようです。調べている途中、ハッとするニュースが流れました。今年の豪雨で被害を受け、蔵も麹も使えなくなった秋田の蔵元さんが、仲間の蔵を借り、新酒を醸造し、11月には売り出すというニュースでした。ここでハッとしました。季節によって豊作を祈願し、または感謝してきた日本人。初ものなど、季節を大事にする日本人。季節を大事にしながら、美味なるものへの追求する日本人。そういった姿が見え隠れする季語が「新酒」なのではないか、と。今回も自分なりに季語を深めたつもりです。「新酒」という季語に、思いや考えを取り合わせるという句づくりはできたかなと思います。よろしくお願いします。/千代 之人
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※たくさんのお便りありがとうございます♪ 皆で楽しく読ませていただいています。
写真タイトル:伊豫豆比古命神社 椿神社
写真参照元:いよ観ネット