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初級者結果発表

2021年7月20日週の兼題

流れ星

【曜日ごとに結果を公開中】

【優秀句】

  • 明け方の流星白き樹の骸

    なかにしいくこ

  • 流れ星たつた四十年の職

    麦吉

  • 星流れ貴船を昏きみづ奔る

    石上あまね

選者コメント

家藤正人

初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。


「明け方の流星白き樹の骸 なかにしいくこ」のように「流れ星」を「流星」という形で使った句もありました。音読みの鋭さも内容に似合います。「白き樹の骸」が転がるのは海岸でしょうか。それとも荒涼たるサバンナでしょうか。「流星」と「樹の骸」、どちらも無機物であるにもかかわらず、どこか悲哀を伴った二つの存在の出会いが詩を生みます。


「星流れ貴船を昏きみづ奔る 石上あまね」に登場する「貴船」は京都の貴船川。夏には川床が設けられ、納涼を楽しみます。見通せない暗い夜の川。水の奔る音だけが暗闇の奥からどうどうと届いてきます。川の両側には木々の枝も覆い被さっていることでしょう。狭められた空だからこそ星が流れる様がつぶさに観られます。縦方向に視線を誘導する構成も巧み。


「流れ星たつた四十年の職 麦吉」は「たつた」の三音が切ない。見事に勤め上げた自らの「四十年の職」。ついに退職の日を迎えた胸に去来するのは虚しさか、この先への不安か。「流れ星」は切なる願いの受け皿のようでもあり、心慰めるささやかな希望のようにも思えます。空を見上げる首の疲れまで共感できる一句でありました。


いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!

  • 箸置きのすいれんの絵や流れ星

    本山喜喜

  • 流れ星姉の人魚の子守唄

    すずさん

  • 皮膚固くさ迷う針や流れ星

    榊裕江子

  • 土湿る牧場の夜や流れ星

    水牛庵乱紛

  • 流れ星びゅんびゅん姉子の浜きゅっきゅ

    種月いつか

  • 流れ星尾を引くや鳥眠る木々

    案山子@いつき組広ブロ俳句部

  • 氷塊に罅入る音や星流る

    神誉

  • コッヘルの麺へ玉子を星流る

    おぐら徳

  • 流星や吾子を叩ちたる手のしとり

    村瀬っち

  • 星飛んでとほき都会の空微熱

    鶴小なみ

  • 兄さんにだけ流れ星降る痛み

    優木ごまヲ

  • 流れ星硫黄の匂ふ村を過ぐ

    渡邉春生

  • 忘らるる犬そばに来よ流れ星

    知無須園

  • 流れ星私の耳たぶまでおいで

    もんちゃん

  • 運命を蹴破る流星の筆勢

    鷹星

  • 野望まだ抱へし身なり流れ星

    金子加行

  • 詐欺師らの舌はやさしい流れ星

    空野千鶴

  • 流星や異国の銀貨落ちており

    泡野無々茶

  • 星走る三時間後に兄になる

    富山湾

  • 「Monster」の効き目の切れ目流れ星

    HARUKO

  • 流星やチャスキはコカの葉を噛んで

    ひねもす

  • 夢ひとつうしなふ美しき流れ星

    渡邉桃蓮

  • 流れ星を調教したるをとこかな

    イエローガーデン@木ノ芽

  • 星流れ軽石のごと母の腕

    里すみか

  • 賛美歌や北へ消えゆく流れ星

    竹の子

  • 流れ星八幡様へ尼寺へ

    空想婆

  • 流れ星沖に漁る舟ひとつ

    熊谷 温古

  • 朽ち舟の上がる浜辺や流れ星

    くめ仙人

  • 寝転びて森の匂いと流れ星

    月見草子

  • 流れ星どこかでひらくラフレシア

    好 杏仁

  • カセットに残る歌声流れ星

    永山シャンシャン

  • 流れ星ナミブの獣いななきぬ

    追師うさぎ

  • 流れ星いのちの経費として酒

    鷹之朋輩

  • 流れ星しゃりと砕けし薄荷飴

    青井猫

  • 祖母だけが裸眼なりけり流れ星

    天水郷

  • 流れ星ゆっくりホットチョコレート

    猫髭かほり

  • 流星や下に眠れるゲルの群れ

    広瀬八重子

  • 神馬とて飼はるる小馬流れ星

    斉藤百女

  • 安達太良の鬼の蹴りたる流れ星

    小川野棕櫚

  • 海亀が来ずに流星ふたつ三つ

    泉 ゆりこ

  • 星飛んで学校やめることにした

    紗千子

  • 流星や川面ますぐに白き鳥

    佐藤夏みかん

  • 神々は剣をまじへて流れ星

    石井茶爺

  • 空へ一画目は流星のはらい

    大石

  • 流れ星尽きてさざめく昏き水

    木ぼこやしき

  • 玉砕の緑の島や星流る

    木村 木霊

  • 流れ星湯屋の匂いの湿りかな

    青縞馬

  • 摩周湖の宿流星の中にあり

    うらのこうら

  • 翼竜のあさき眠りや流れ星

    三月兎

  • マカロンのひびの甘さや流れ星

    竜田側

  • 太陽の匂ひ砂漠の流れ星

    広ブロ俳句部カナダ支部@千鳥城

  • 流れ星砂丘に眠る駱駝の背

    咲弥あさ奏

  • 流れ星子猿死ぬときあっけなく

    蒼空蒼子

  • 貝殻の光ゆうべの流れ星

    松山のとまと

  • 流星や大陸すこしづつ沈む

    赤松諦現

  • 確かなる石のベンチや流星雨

    okapi

  • 石蹴りの好きな神様流れ星

    doいつもcoいつも

  • 法師一行寝そべるゴビの流れ星

    樋口滑瓢

  • 流れ星今日また一人島離る

    立部笑子

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