こきん
塒 小判
長野 雪客
びぼん
はづき昼花火
比園 岳
浦文乃
葱ポーポー
沢胡桃
小田緑萌
麦のパパ
キートスばんじょうし
葉月ことり
太郎坊
なつふじ
長良くわと
さとマル
鷹見沢 幸
野菜α
一寸雄町
しんび
かまど猫
片山蒼心
ななかまど
齋藤鉄模写
クロチョイス
つまりの
金子加行
高永 摺墨
つたば海蘭
井上ヘボ孔球
月野うさぎ
だいやま
むらのたんぽぽ
北の山猫 水島
有野 安津
まつたいら西
蒼空蒼子
松山トラチャン
卯之町 空
釜厚女子
那津
杉﨑拙訓
寺岡はる
uryuu202
永井うた女
鷺沼くぬぎ
七国独楽男
松本厚史
生駒 遊
痴陶人
潮見悠
しまのなまえ
ろまねす子
きのと
四季春茶子
櫂野雫
粒の杏子
津々うらら
登子
高橋芽澄
網野れいこ
15センチの庭
こたま
雑魚寝
桂子
小椋チル
仲間英与
望月とおん
秋野萱
瀬戸内海月
豚々舎 休庵
青田ゆうみ
美津うつわ
選者コメント
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「池波の地図を歩いて鰯雲 こきん」
池波正太郎の歴史小説に登場する様々な土地を実際に歩く。本当にそんな本があるそうで、なんと池波正太郎自身の著作にもあるのだとか。作中の世界と大きく変貌した現代。しかし面影を留めている部分もあるのでしょう。作中と現実をリンクさせながら歩く、充実した秋の一日。鰯雲はかつて江戸と呼ばれた空に広がっています。
「万を超す墓標新し鰯雲 びぼん」
普遍的な魅力を持った句というよりは、2022年に生きる人間にとって離れがたい句でありました。世界を席巻する疫病、武力による他国への侵略、少数民族への弾圧。万を超える墓標が続く光景はいったいどれほどの広さに及ぶのか。「新し」と言い切るドライさが逆にやるせない現実を突きつけます。無数の鰯雲が鎮魂めいて白く。
「汲み分けん朝の光の鰯雲 長野 雪客」
映像の鮮度が魅力です。「汲み分けん」は意思を表す言葉。読みの可能性はいくつかありますが、鰯雲を汲み分けようとしていると読みたいところ。もちろん空の鰯雲は汲めません。でも水に映った鰯雲ならできるでしょう。朝の冷たい水鏡。手か、桶か。水面の鰯雲は汲み分けようと触れた瞬間、散り散りに揺らぎ消えてしまいます。
「指で溝掘る塩釜や鰯雲 塒 小判」
「鰯雲」の持つ豊漁のイメージから、魚を丸ごと閉じ込めた塩釜焼きと読みました。愛媛に住む者としては鯛の塩釜を想像いたします。しかも買い求めたものではなく、自ら作る塩釜。美々しい鯛に相応しく、塩釜の表にも鱗や目を模して指で溝を掘る仕事の丁寧な手つきが見えてきます。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!