俳句ポスト365 ロゴ

初級者結果発表

2023年9月20日週の兼題

新酒

【曜日ごとに結果を公開中】

【優秀句】

  • 問診やいつしか新酒の出来不出来

    花亭五味

  • 新走りますぐの杉に風ますぐ

    アナミスト

  • 水平を零るる新酒光りけり

    ユリノキ

選者コメント

家藤正人

初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。



「問診やいつしか新酒の出来不出来   花亭五味」

季語以外のものを上五で詠嘆するのは少し難しい型。詠嘆するほどの「問診」になにがあったか、と身構えるのも一瞬、肩透かしの和気藹々とした会話へと移り変わるのが飄々とした味わいです。新酒の出来不出来を語るのは患者の生業の一環故にか、あるいは互いに酒が好きなだけか。「いつしか」がさらりと時間の経過を含んで上手い!


「水平を零るる新酒光りけり   ユリノキ」

最初「水平を」の句意をどう捉えるか悩みましたが、枡酒を脳裏に描いた時、見事と膝を打ちました。表面張力の限界を迎え、グラスから新酒が零れる瞬間。「光りけり」は流体の描写であると同時に、馥郁と薫る新酒への期待も含んで瑞々しく一句を締めてくれます。腹を据えて正面から季語と向かい合った一物仕立てであります。


「新走りますぐの杉に風ますぐ   アナミスト」

「ますぐ」のリフレインで韻律を生む、取り合わせの一句。読み手は今年新たに醸した酒、しかも最初に市場に出た「新走」と中七下五との取り合わせの接点を探りながらこの句の世界を味わいます。天へ伸びる「ますぐの杉」の実直さ。吹く風も杉の枝葉を惑わすようにではなく、まっすぐに抜けてゆきます。新走もまた、まっすぐに清らかな仕上がりの酒になっているに違いありません。



いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!

  • 伏流のしづかに巡り新走り

    白川ゆう

  • お使いは獣出る道新走り

    風虎

  • 新酒とろり振替休日ゆるり

    松山 風

  • 今年酒のぞきに来たる雲一片

    茂田野マイ子

  • 新酒呑みソプラノサックス「ファ」を流す

    吉野 五福

  • 同期結婚す深夜の新走り

    むさかず

  • 星屑の溢れ落ちたる新酒かな

    あじさい 涼音

  • 青空もこぼるる升の新酒かな

    阿蘇の乙女

  • フランス語めきし訛りや新走り

    みくにく

  • 巫女の注ぐ水より軽き新酒かな

    浦見 若菜

  • はちきんの混じる車座新走

    米山

  • 太ももの弾痕祖父は新酒呑む

    三谷あいこ

  • 釉薬のくゆらくゆらと今年酒

    勝本熊童子

  • 新酒買う新しきCD聴く気分

    れい

  • 喉は熱く神にふれたろうか新酒

    いちの

  • 朗々と新酒に浮かれ風の歌

    日向浜

  • 古木めく喉下り行く新酒かな

    玉家屋

  • 味噌煮える老舗塵なし新走り

    門のり子

  • 一滴に味蕾立ちたる新酒かな

    房総とらママ

  • 新酒美し気泡から神の巣立つあさ

    さおきち

  • 阪神が勝ったぞパパは新走り

    そうたろう9才

  • 酌みかわす夫なし我に新酒あり

    ファストペンギン 丈達末子

  • 新走色から始む夕餉かな

    芝野浅次郎

  • 新走りほどよく緩む膝の螺子

    歯科衛生子

  • 熟田津の道を来たりぬ新走り

    道後K3

  • ゆうるりと星の降り立つ新酒かな

    天鳥そら

  • 砥石はただ青み新酒は明朗なり

    月最中 松本

  • 清流のごとき新酒を田の神へ

    むさし野まさこ

  • 新酒まろく満ちシンフォニーの波紋

    枇杷子

投句はこちら