新酒
花亭五味
アナミスト
ユリノキ
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「問診やいつしか新酒の出来不出来 花亭五味」
季語以外のものを上五で詠嘆するのは少し難しい型。詠嘆するほどの「問診」になにがあったか、と身構えるのも一瞬、肩透かしの和気藹々とした会話へと移り変わるのが飄々とした味わいです。新酒の出来不出来を語るのは患者の生業の一環故にか、あるいは互いに酒が好きなだけか。「いつしか」がさらりと時間の経過を含んで上手い!
「水平を零るる新酒光りけり ユリノキ」
最初「水平を」の句意をどう捉えるか悩みましたが、枡酒を脳裏に描いた時、見事と膝を打ちました。表面張力の限界を迎え、グラスから新酒が零れる瞬間。「光りけり」は流体の描写であると同時に、馥郁と薫る新酒への期待も含んで瑞々しく一句を締めてくれます。腹を据えて正面から季語と向かい合った一物仕立てであります。
「新走りますぐの杉に風ますぐ アナミスト」
「ますぐ」のリフレインで韻律を生む、取り合わせの一句。読み手は今年新たに醸した酒、しかも最初に市場に出た「新走」と中七下五との取り合わせの接点を探りながらこの句の世界を味わいます。天へ伸びる「ますぐの杉」の実直さ。吹く風も杉の枝葉を惑わすようにではなく、まっすぐに抜けてゆきます。新走もまた、まっすぐに清らかな仕上がりの酒になっているに違いありません。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!
白川ゆう
風虎
松山 風
茂田野マイ子
吉野 五福
むさかず
あじさい 涼音
阿蘇の乙女
みくにく
浦見 若菜
米山
三谷あいこ
勝本熊童子
れい
いちの
日向浜
玉家屋
門のり子
房総とらママ
さおきち
そうたろう9才
ファストペンギン 丈達末子
芝野浅次郎
歯科衛生子
道後K3
天鳥そら
月最中 松本
むさし野まさこ
枇杷子
選者コメント
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「問診やいつしか新酒の出来不出来 花亭五味」
季語以外のものを上五で詠嘆するのは少し難しい型。詠嘆するほどの「問診」になにがあったか、と身構えるのも一瞬、肩透かしの和気藹々とした会話へと移り変わるのが飄々とした味わいです。新酒の出来不出来を語るのは患者の生業の一環故にか、あるいは互いに酒が好きなだけか。「いつしか」がさらりと時間の経過を含んで上手い!
「水平を零るる新酒光りけり ユリノキ」
最初「水平を」の句意をどう捉えるか悩みましたが、枡酒を脳裏に描いた時、見事と膝を打ちました。表面張力の限界を迎え、グラスから新酒が零れる瞬間。「光りけり」は流体の描写であると同時に、馥郁と薫る新酒への期待も含んで瑞々しく一句を締めてくれます。腹を据えて正面から季語と向かい合った一物仕立てであります。
「新走りますぐの杉に風ますぐ アナミスト」
「ますぐ」のリフレインで韻律を生む、取り合わせの一句。読み手は今年新たに醸した酒、しかも最初に市場に出た「新走」と中七下五との取り合わせの接点を探りながらこの句の世界を味わいます。天へ伸びる「ますぐの杉」の実直さ。吹く風も杉の枝葉を惑わすようにではなく、まっすぐに抜けてゆきます。新走もまた、まっすぐに清らかな仕上がりの酒になっているに違いありません。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!