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初級者結果発表

2023年9月20日週の兼題

新酒

【曜日ごとに結果を公開中】

【入選までもう一歩】

選者コメント

家藤正人

みなさまこんにちは。初級の選者、家藤正人です。

月曜日は、入選にもう一歩という句をご紹介します。


・月曜日の「選者コメント」に掲載されている俳句については、作品検索はできません。

・月曜日の「ステップアップのためのヒント」に掲載された句、入選句、優秀句については作品検索が可能です。


月曜の「選者コメント」や「ステップアップのためのヒント」を参考に、目指せ金曜優秀句への道!!


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▼【季語なし&違う季語】

街中に夏への未練金木犀

こうぞう


聞酒や青しろ奄美芋焼酎

PONホンダ


亡き父にとっくり渡し曼珠沙華

かなこ


月あかり団子かさねや酒美味し

鯉太郎


ぷつぷつと麹音響く秋の朝

詩小桃


初秋の夜日本酒たしなむ我一人

福 由里


秋口に凌いだ暑さ思いなむ

緑ラベル


晩秋の大街道を千鳥足

國枝 散歩


古希友とひととせ毎の酒二合

境界子


杉玉の軒を巡りて千鳥足

太田看悟


神酒飲み笑うあなたに頬染めて

朝夏


新しい酒蔵見事吉野旅

内堀 みち


酒林豊かな国の証しかな

晩酌童子


澄みわたり波打ち馨桝びたし

麻座輝貞


待ちわびて杉玉くぐる旅人よ

野々原雀


●ピックアップコメント:

季語の入ってない句や違う季語が入ってしまっている句をピックアップ。

今回の兼題は「新酒」。お酒を飲む、あるいはたらふく飲んだ状況を描いたり、酒造りや蔵といった現場に句材を求めた例もありました。が、新酒について考えるあまり、肝心の「新酒」という季語そのものがなくなってしまいました。

兼題として季語が出題された場合は、その季語を一句に詠み込むのがルールです。俳句ポスト365では各回の出題に全員が取り組むことで切磋琢磨を目指しております。

今募集中の兼題は、12月19日締切の「セーター」です。ご投句お待ちしてます。


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▼【季重なり】

秋の夜に新酒祝い月見酒

かよ


コンビニで新酒手に取りおでん見る

ささちさち


満月や新酒の誉れまず一杯

井上教


好きすぎて稲穂黄金に新酒香る

井筒朝子


今は無し秋に新酒を飲むことも

丸山耄碌爺


秋立ちて免疫アップ新酒粕

君塚謙


秋風邪と新酒に火照る肌合わせ

骨くじら


豊作を祝う新酒秋のよい

春風


びゐどろの盃に新酒や秋の空

松原白士


霜月や新酒届けてひと心地

土水日


虫の音に新酒かほらば古ダンス

逃雪


火灯しの千日紅と新酒かな

未生 蓮


虫の音に寝付けず月下に新酒飲む

木曽三川


放生会露店眺めて新酒酔う

勿忘


ゲリラ雨酷暑乗り越えああ新酒

一春


せめぎ合い新酒に麦酒フェスティバル

成雲蒼人


猛暑耐え並ぶ新酒店の棚

浅野 涼願


鴨撃ちて待ち詫ぶ友と酌む新酒

柳湯冷


●ピックアップコメント:

一句の中に複数の季語が入っている状態を季重なりと呼びます。

季語「新酒」の周辺に存在する「いかにもありそう!」なものや状況を描くとうっかり季語が紛れ込んできてしまったパターンが多かった印象です。月を愛でたり、虫の音を聴いたり。


季語が複数入っている名句もあるので、「季重なり」は絶対にダメ! というわけではありませんが、複数の季語を作品として成立させるのは、上級者コースのウルトラ技。

ここに紹介した以外にも季重なりの句はあり、火曜日以降に紹介される場合もありますが、比較的許容しやすい季重なりとして受け止めているものもあります。

やはりまずは、一句一季語からコツコツ練習して参りましょう。


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▼【新走? 荒走?】

荒走り子とシーソーの丸太斬り

桜よし栄


畔刈にやがてこの米も荒走

村上吾朗


家代わり見知らぬ空の荒走り

髙田  佳歌


●ピックアップコメント:

パソコンやスマートフォンで「あらばしり」を入力・変換すると「新走」と「荒走」、二種類の表記が出てくる場合があります。

どちらもお酒に関する言葉ですが、実はこれらは発音は同じ「あらばしり」でも違うものを意味する言葉なのです。

「荒走」は日本酒の搾りの工程で最初に出てくる部分のこと。酒造りの際には製造のタンクごとに必ず発生するものです。

一方、「新走」はその年の米で作り新しく市場に出回り始めたお酒。つまり「新酒」の傍題となるのは「新走」の方なのです。

うっかり変換ミスの結果「新走」が「荒走」になってしまったのかもしれませんが、どちらも日本語として存在する以上、判断はビミョーなところ。「荒走」も魅力的な句材ではありますので、また別の季語と取り合わせて使ってみたい言葉ですね。


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※今回の兼題「新酒」初級者投句欄へのご投句は、投句数3676句、投句人数1604人となりました。


以下の①については入選決定!

金曜日「優秀句」へのステップアップのためのヒントをご案内します。


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▼①【類想】

ふるさとの山思い出す新酒かな

k幸女


生涯は悲喜こもごもや今年酒

moto髪結


孫生まれ切り子グラスの新酒かな

Ms. ちょこっと


障子開け月を招いて新酒飲む

Sみーすけ


杉玉が新酒出来たと語りかけ

tokisan


若女将訛り柔らか新酒の香

あいみのり


今年酒キリリ若女将の背筋

あおい結月


新酒かな下戸のわたしもピンク色

あすか風


気まま旅海鮮づくしに新酒あり

アボカドブロッコリー


今年酒下戸のあいつも紅いかほ

アポカリプス


故郷の新酒持ち寄り花が咲く

アマリリスと夢


休肝日一日ずらし今年酒

アルル


下戸なのに新酒時期にはざわついて

いちばほうすい 


新酒添ゆ涙の意味は嬉し泣き

イワンモ


還暦の決意飲み込む新酒かな

ウォーカー尚子


新酒手に病院からの父を待つ

ウマーベラス


つぎつがれ新酒が誘う人の縁

かわせみ時雨


丹波路に新酒を誘うのぼり旗

きっちゃん


二次会で新酒片手に祝い酒

きなこ


三輪明神杉玉の香や今年酒

キミネコちゃん樋口


新走りはっきりしなくなる蛇の目

キャピタルエッジ


快気祝いほんの一口飲む新酒

くつの した子


下戸なれど「新酒」の文字に何故か沸く

さわだ佳芳


出不精の父を動かす新酒かな

しなもりいふ


友招く新酒交わして阿吽かな

スージー牛


買い出しでついついつられ新酒買う

スーパー蕪


饒舌も寡黙も和む新酒かな

すずきひろし


ねぎらう夜新酒を交わし笑みこぼる

すずしず


盃に新酒をついで月仰ぐ

すずらんのおチイ


新酒手につい早足の帰り道

タイ陽と月


青森に旧友の酒蔵新酒の季

タカハシネコミサ


ガラス戸に新酒入荷の朱の手書き

たけ志


ありがとう新酒を酌まれ宵の祖父

ちゃー


病み上がり一杯だけね新酒汲む

デイジーキャンディー


健診の結果自慢し新酒酌む

てつねこ


新酒注ぎ今年も飲もうと仏壇へ

どんぐりブルース


樽の香がかすかに匂ふ新酒かな

なにわのたらこ


下の子の二十歳の祝いに新酒開け

にいやのる


のどごしに新酒のかおり味わえり

のりちゃん


仏壇に添える新酒は涙色

のろのろ爺


口切りの新酒に群がる盃よ

ハチワレ


新酒きりり五十年目のクラス会

ぱらん


大仕事終えてひとりで飲む新酒

ひげもじゃ大臣


同期会新酒を出しに懐古談

ビッグネット


新酒飲む一升瓶を十日かけ

ヒデカズ


新酒ならいただきますと下戸の夫

ひめのさんしょ


父米寿下戸が選びし新酒かな

ひめのつばき


呑み初めの新酒や進む孫の酌

ひろちゃん


献杯は新酒ホスピスの退院

ひろ笑い


新酒の会下戸は肴を堪能し

ふくまる


検診の結果を聞きて新酒買ひ

ぽんたちん


一献の新酒清らか祝い席

まさえ


伝承を汲み取る如く新酒汲む

まつおひとし


若々し杉玉こそが新酒便り

まほろば菊池


とくとくと新酒注がれし夫から

みかん


新酒酌む姥姦しき旅の宴

ミセスコロンボ


厳かに供える新酒祈り酒

みちくさQ幸


新酒汲む兜盃高々と

みっちゃん


新酒酌み妻子どもらと古希祝う

ミント


古女房鼻歌交じりの新酒かな

やしたあきら


供え物まずは新酒を一献す

やのかよこ


杉玉は新酒の知らせとおしえてもらう

やまおかゆみえ


理由づけこじつけ今日も新酒飲む

やまやま


新酒汲む人間ドック明けの吾に

ゆうゆう朔ら望


サミットや下戸も気になる新酒の香

ゆず柴


嫁ぐ朝新酒で涙の乾杯

よつ葉


願掛けの杉玉青く新酒香る

らるご


遠来の友どちの輪の新走

ランナーズ寅さん


新酒持て訪ねてみれば赤い顔

りえ


品評会新酒試飲に酔ひ回る

りこ星


灘五郷電車ではしご新酒酌む

阿曽 遊有


山場こえ禁酒解禁して新酒

阿波のコスモス


六甲の地新酒の仕込み灘五郷

愛生園風来坊


新酒には微香の放つ清純さ

愛知ミト


母と姉新酒で祝ふ誕生日

安空


山の幸小皿を並べ呑む新酒

案山子の鹿か


直会の新酒注ぎ足し尽きぬ夜

井仲めい


新酒下げ帰省の吾子は越後から

磯貝あさり


とくとくと迸る笑み新走り

一石 劣


境内に笑顔戻りて新酒旨し

宇佐美 秀堂


青く澄む蛇の目にゆらり新酒かな

雨水 二三乃


まず一献父の墓前に新酒かな

卯之町空


新潟の新酒求めて里帰り

栄音


新酒供え父と語りし高野かな

越乃杏


今年酒松鶴師のごとおっとっと

円錐角膜


新酒酌む小さき両手の母恋し

円谷琢人


若妻の耳まで染めて新酒来る

横ちゃん


新酒やワイングラスで気取り酒

岡崎藍


店先で新酒ふるまう飛騨の里

下田あらた


大手筋新酒のかほり満ち満ちて

佳月


新酒飲み回す盃病癒え

加藤  凛華


杉玉の蒼さ新酒の香り立つ

加藤理恵子


新酒飲み神の恵みに感謝する

夏川涼


送別の宴新酒の味苦し

河一子


神棚に新酒の御神酒のかぐわしさ

花井春日


新酒酌む薩摩切子になみなみと

花星壱和


試し飲む杜氏の笑むや今年酒

蝦夷やなぎ


社氏さん仕込み新酒は甘い香り

海原


新酒注ぐトクリトクリと夜は過ぎぬ

灰心


ついに今日二十歳の吾子に新酒酌む

外町よしのり


下戸なれど香り愉しむ新酒かな

角野天十里


緋の晴れ着吾子の祝いの新酒注ぐ

笠川香奈


下戸の吾に新酒ぶらさげ友来たる

蒲 公英


新酒手に竹馬の友の恵比寿顔

鴨の里


杉玉の碧さ嬉しき新酒かな

柑たちばな


泣き友を想い呑みたや新酒かな

丸谷有登


山頂の氏神様へ今年酒

岸 れん


健診の結果見ながら飲む新酒

岩田文彦


テレビではボージョレ・ヌーヴォ手に新酒

嬉居


遠方の友と飲み干す新酒かな

鬼塚樹童


店先で今年の酒に頬ゆるむ

菊池 抹茶


蕎麦猪口に新酒なみなみ真ん丸と

吉河好


新酒の香新成人の長男と

吉森田 比叡得


瑠璃放つ切子キリリと新酒膳

居之 橙


妻子連れ新酒を添えし祖父の墓

橋本椿紗


ご当地の新酒居並ぶ道の駅

玉井令子


亡き父の笑顔の先に新酒かな

玉京子


古希祝う青き杉玉新酒蔵

玉照


一周忌従姉妹揃ひて新酒酌む

欣喜雀躍


風呂敷の新酒抱えし孫、二十歳

金子あや女


群青の蛇の目の睨む新酒かな

栗花落カナヲ


新酒下げ朋友来たりとくとくと

薫子


今年酒下戸もひと口舐めにけり

蛍草飛田


軒先の杉玉青し新酒の香

月下美人


今宵からちびりちびりと新酒かな

月奈利


お供えに新酒二本を抱きゆく

見知不柿女


赤提灯新酒に集いし赤ら顔

謙堂未宜


仏壇へ妻と一杯新酒かな

五葉 松子


新酒より飯をかっこむ下戸の吾

吾孫子彦丸


仕込み蔵匂い漂う新酒かな

吾亦紅也


肩並べ思ひ出話今年酒

倖菜@野の花


待ち侘びて逝きし父へと新酒供す

工藤ほたる


新酒飲み微笑みし妻旅の宿

恒産恒心


新酒出す義父の誘いし下戸の我

甲斐杓子


二十代新酒の香り第1歩

皇麺嘛


下戸嘆く香りすら酔う新酒かな

高伊あいす


チビチビと独り身あはれ新酒飲る

高原徒然想


盃重み笑顔はじけし新酒会

高崎怪人


仏壇に新酒を置きて父供養

高崎孝雄


今は亡き友と語らう新酒かな

高松多仮志


仏壇の君と宵まで今年酒

高津春駒


新酒の香茜の空に父偲ぶ

高田コブシ


病まい癒え新酒の季節まだがまん

高田山 久美


様々の一日ぞ終る新酒かな

黒猫はなこ


婿殿と初顔合わせ新酒かな

今乃武椪


蔵の戸に新酒のお知らせ帰路の夕

佐宮静


今年酒父と彼氏に酌ぐわたし

佐知子


新潟の旧き友より新酒来る

佐藤けい


杉玉の青々夫と新酒の香

佐藤のばな


旧友と新酒囲むや旧校舎

佐藤朱子


この新酒勧める友を思い飲む

佐藤澄子


友が来て積もる話に新酒かな

佐伯良吉


芳しと下戸も頷く新酒かな

彩桜里


新酒会おちょこ一口腹しみる

斎藤コロンのママ


この新酒下戸にも判るそのうまさ

菜園ベジタベル


新酒ござる呑むも呑めぬも集いけり

笹 靖子


杉玉に新酒の頃と気づきたり

笹倉沙希


記念日の切子グラスに新酒かな

三井静海


利酒や愛でて香って手は勇み

山月 無辺


控えつつ新酒と聞けば気はそぞろ

山口直哉


軒下に新酒の報せ見て通る

山田桜


ありがたし今年も新酒香るまち

山田常哲


離れ住む息子と酌みし新酒かな

山野 のりこ


蛇の目きらり新酒の盃光りおり

山路ゆか


待ちわびて胸一杯に新酒の香

嗣子孫々


品書きの「新酒あり〼」はずむ文字

四王司


チラシ折る下戸も弾むか「新酒」の字

斯波 子庭


墓に供ふ地元の銘の新酒かな

児玉すず子


古き酒場「新酒入荷」とあちこちに

鹿哲里


新酒をばワイングラスでフルコース

漆崎 明


香りだけ新酒味わう我は下戸

柴田あやめ


阪神ファンの墓前祝いの新酒

芝歩愛美


新酒かな杉玉青し杉の香も

手塚童好


大町や貸切り宿に今年酒

朱胡江


父子交わす姿描きぬ今年酒

秋の桜光


古い猪口に新酒をそそぐ父の十三回忌

集 真藍


行きつけの店で毎年呑む新酒

十八番屋さつき


香る華やかに新酒鑑評会

小薗紀彦


新酒呑む父の笑顔と夕食と

小塚ちか丸


杉玉をくぐりし店の新酒かな

小田芙蓉子


新酒かな蔵の軒さき枡蒼し

小暮修


杉玉青し店先に新酒樽

小野一箭


掌に新酒蛇の目の青の冴え

松井 檸檬


杉玉を吊るし新酒を枡に盛る

松永恕淳


旅先で新酒の試飲辛口で

松花遊子


酒飲めぬされど悩まし新酒の香

松村 とん


夫婦して嬉し悲しの今年酒

松本光由


旅歩き酒蔵の前新酒の香

松野広大


新酒の香浮かびし十年前の祖父

照々屏風


頬に風杉玉くぐり新酒買ふ

笑み


行く先は新酒汲むまま越後旅

上田 薫


送別夜新酒ならばと下戸の友

植田 三八


新酒や数年ぶりに友の顔

信行


新酒や一掬含みて頬緩む

新一歩


四十年ぶり友と会う新酒かな

新城 三九


升香る新酒チビチビむせ返る

森下 一夜茸


新酒の香すひこみ吾もゑひごこち

森野栞


旅の夜見知らぬ店に新酒酌む

真咲よしの


命日や父の分まで新酒呑み

神無月みと


鼻歌も軽き新酒の家路かな

水無月 八子


ひとり欠け新酒飲み干す一周忌

水野 寿香


黒板に新酒あり〼白熱灯

酔夏


小さき手の祖父に供へし新酒の香

西原 煌舟


青々と猪口に渦描く新酒かな

西行葉牡丹


古妻から注いでもらいし新酒かな

西国 禅慈 


試飲会梯子し新酒に友偲ぶ

西倉美紗子


杉玉に誘われ新酒二本かな

西村遥樺


職場の愚痴今宵は新酒でとことんと

青い手まっちゃん


今年酒一献ごとの破顔かな

青木果林


亡き父の新酒飲む顔輝けり

石川明世


廻りくる父の命日新酒かな

川口光彦


社内旅行女子三人でまた新酒

川崎ルル


手の中に藍の輪青き新酒かな

浅井雑草おばさん


恙なし米寿の父に注ぐ新酒

前川 葉月


夜も更けた1人味わう新酒旨し

倉田傍石


酒好きの父に供えし新酒かな

増田楽子


新酒注ぎ亡き夫相手今日の愚痴

村のあんず


我先に蛇の目のお猪口新酒かな

大ちはる


語らいの湯気の向こうに新酒あり

大野 町子


新酒の香セピアの写真父若し

大野小花


神棚に新酒ささげて祝う朝

竹宮楽俳


新酒酌み吾子との会話反芻す

中西雨露


口開けし下戸もまどろむ新酒の香

中村のりぴ


ふっくりと香る新酒や蔵まつり

長嶺阿蘇


新酒かぐ笑顔の父は下戸なりき

鶴城


杉玉と辿り着く蛇の目の新酒

鶴舞櫻山


あゝ新酒これぞこれぞと親父殿

天王谷 一


下戸亭主新酒の香り頬を染め

田舎太郎


子ら居りて新酒の香る夕餉かな

田中えつこ


酌み交わす友と縁の新酒かな

渡辺 小豆


亡き夫の墓前に供ふ新酒かな

渡邉志づ


献杯と下戸の亡父に新酒注ぎ

土井 良


とくとくと注がるる新酒に逸る気持ち

冬の雪兎


コロナ明け新酒の会が待ち遠し

東郷俊秀


仏壇に新酒供え二人飲み

桃好き


新酒置く明日は義父の一周忌

藤すみ


休憩にひとり寿司屋で新酒かな

藤井 春


あの人を偲んで呑んで新酒かな

道隆


新酒なぞ無縁だ俺は下戸なんだ

内藤かをる


結婚の記念日祝う新酒買う

内藤猫


ひとくちをおちょぼ口して新酒かな

南全星びぼ


道遠し郷土の新酒を思う朝

日野煌花


五十年を言祝ぎ妻と新酒酌む

芭琉


新酒酌む瓶子につるつるいっぱいに

八九テン


久々の友と出逢ひや新走り

八郎


新酒あり満面の笑み並ぶ列

斑鳩 廉


たゆたうの新酒の蛇の目八杯目

比園 岳


新走りとっくんとくん沁みわたる

飛島海道


新酒にて友と戯むる一夜だけ

樋田緑風


新酒つぐ枡から溢れおちょぼ口

尾埜秀樹


新酒つぎ一層煌めく蛇の目かな

微睡ねこ


初孫のはじめの一歩に新酒酌み

美んと


仏前に新酒遺影の母の笑み

病葉


新酒飲め歌え踊れや宴会だ

不徳


駅降りて新酒片手にはやる足

富士咲広海


ふるさとの新酒持ちより里自慢

浮麗麗佐藤


一口ともう一口と新酒かな

武智浩


新酒香に呼ばれて一献馴染みの徒

武藤ヨーグルト


新酒だと口実にしてもう一杯

風街光


親父干す盃へ新酒を息子注ぐ

福井桔梗


新酒の香ひと呼吸して顔真っ赤

穂緒せんか杉山


二十歳なり新酒片手に帰省する

穂摘すずめ


酌み交はす新酒表面張力や

峰晶


蔵元の香りで知る新酒仕込み

望月幸人


夫婦して八十路へ一歩新酒酌む

北川楠山


出不精の父歩かせる新酒かな

睦月うさぎ


新酒つぐ大杯へトクトクと

本田浩美


見えぬ労讃え味わう新酒かな

凡吟山


湯宿にて新酒ちびりと亡き友に

未知女


新酒飲む写真の父は微笑んで

蜜流


杉玉の青々として新酒かな

木谷 きょうみ


いそいそと肴を仕込む新酒かな

野の ねじ花


新酒待ち磨く薩摩の紅切子

野洲慧


棟上げを新酒で祝う棟梁ら

野村すず


新酒提げ暮の信号小走りす

野村直輝


花金に褒美の新酒疲れ飛び

矢沢どんぐり美佳


瑞々しすっきり爽やかよき新酒

柳原甲賀


角打ちに酒飲み集う新酒かな

唯野 夢色


新酒目に禁酒の覚悟揺らぎけり

優音


新酒入荷貼り紙を見て唾を飲む

友マンクット


白壁の蔵より馥郁新酒の香

柚木 啓


なまこ壁通りに誘う新酒の香

遊江 久大


四年振り新酒祭りの蔵の町

陽介山


旧友と新酒で祝う杖家かな

利凡


遠方で新酒に出会い舌鼓

立川夏子


新酒飲む交わす盃父と子と

流れ星


父好物笑顔はじける新酒かな

流川楓


店頭の朱書の文字の「新酒有り」

粒の杏子


新酒注ぐ八十八の手間想う

粒野 餡子


神代から神も喜ぶ新酒かな

竜眼ジジ


行き着けで新酒ほろ酔い二合半

了徳庵


下戸の吾も一口舐めん今年酒

鈴木ピグモン桂香


新酒汲む蛇の目揺らせし杜氏の息

鈴木秋紫


新酒汲む蛇目のお猪口多摩の蔵

蓮花


古き友来れば香るる新酒かな

櫻井光散人


紅の薩摩切子に注ぐ新酒

齊藤春芽


検診の夫に捧ぐる新酒の香 

髙田翠穂


●ピックアップコメント:

初級・中級に関わらず、類想は似通ったものが集まります。

新酒といえばもちろん「飲む」もの。その行為を発想の核として、様々な類想が周辺に出現してきます。新酒の香りであったり、注ぐ音だったり、飲みながら昔を思い出したり。

たくさんの類想を見ることによって、自分の中に類想のデータベースが構築されていきます。今回見かけた発想のおかげで、陥りがちな類想も避けられるようになるかもしれません。


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明日から火曜日、水曜日、木曜日、と入選句を発表します。入選句の評価は火、水、木(ステップアップのためのヒントに掲載分も含む)ともに同じランクです。順不同での掲載です。

そして金曜日は、初級者投句欄の優秀句発表です。


投句はこちら