余寒
となりの天然水
こがもくお
高山玲徹楚々
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「ふと抓む耳朶は碁石に似て余寒 こがもくお」
月曜の類想ピックアップでも書きましたが「寒いから○○する」発想は数多くありました。「耳たぶに触れる」もその一つ。ですが「碁石」の比喩によって確かなリアリティとオリジナリティを獲得しています。表面の冷たさ、抓んだ指先で確かめる耳朶の奥にある芯の厚み。淡々と描写する十四音から季語の三音で締めるさりげなさがかえって「余寒」を際立たせています。
「馬跳びを終へまた馬となる余寒 となりの天然水」
かわるがわる跳んでは馬になって繰り返される「馬跳び」。時間的にも空間的にも、先へ先へとその繰り返しは続いていきます。跳ぶ瞬間の浮遊感、加速して受ける余寒の冷えた大気。身体を動かす高揚は瞬間的に終わり、次は自らが馬になる。遊びの中にある明るい虚無が愛おしいような、疎ましいような。「余寒」との心情的距離が絶妙な読みの楽しみを生んでくれます。
「筬打ちて余寒の夜の土不踏 高山玲徹楚々」
織機がリズミカルに奏でられる余寒の夜。途方もない作業に感じられますが、手を動かし、足がペダルを踏み、筬がカシャンカシャンと鳴るたびに織物は完成へと近づいていきます。印象的な「筬」だけに終始するのではなく、ペダルを踏む足下へ焦点をずらしたのも巧みです。土不踏の頼りなげな凹みは何に触れるでもなく、余寒の夜という時間と空間を上下し続けるのです。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!
一慎
いもがらぼくと
喜祝音
ぽちさんぽ
竹石猫またぎ
あじさい 涼音
みしまはぐし
稲光虎介
青桜ウインド
むさし野まさこ
家守らびすけ
風薫子
加田紗智
めりっさ
神戸の老寺士
阿蘇の乙女
夢散人(光散人)
スモールちもこ
土佐俳句人
雀浪乱
やまもと葉美
花見鳥
美村羽奏
高岡つくね
岡田道一
三上 栞
千華
三浦海栗
足立とんび
泉北の石ヤン
濱野 五時
かときち
渥美一弥
守田jj
早川雅世
放浪者
堀池正海
おおきどくん
選者コメント
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「ふと抓む耳朶は碁石に似て余寒 こがもくお」
月曜の類想ピックアップでも書きましたが「寒いから○○する」発想は数多くありました。「耳たぶに触れる」もその一つ。ですが「碁石」の比喩によって確かなリアリティとオリジナリティを獲得しています。表面の冷たさ、抓んだ指先で確かめる耳朶の奥にある芯の厚み。淡々と描写する十四音から季語の三音で締めるさりげなさがかえって「余寒」を際立たせています。
「馬跳びを終へまた馬となる余寒 となりの天然水」
かわるがわる跳んでは馬になって繰り返される「馬跳び」。時間的にも空間的にも、先へ先へとその繰り返しは続いていきます。跳ぶ瞬間の浮遊感、加速して受ける余寒の冷えた大気。身体を動かす高揚は瞬間的に終わり、次は自らが馬になる。遊びの中にある明るい虚無が愛おしいような、疎ましいような。「余寒」との心情的距離が絶妙な読みの楽しみを生んでくれます。
「筬打ちて余寒の夜の土不踏 高山玲徹楚々」
織機がリズミカルに奏でられる余寒の夜。途方もない作業に感じられますが、手を動かし、足がペダルを踏み、筬がカシャンカシャンと鳴るたびに織物は完成へと近づいていきます。印象的な「筬」だけに終始するのではなく、ペダルを踏む足下へ焦点をずらしたのも巧みです。土不踏の頼りなげな凹みは何に触れるでもなく、余寒の夜という時間と空間を上下し続けるのです。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!