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初級者結果発表

2024年1月20日週の兼題

余寒

【曜日ごとに結果を公開中】

【優秀句】

  • 馬跳びを終へまた馬となる余寒

    となりの天然水

  • ふと抓む耳朶は碁石に似て余寒

    こがもくお

  • 筬打ちて余寒の夜の土不踏

    高山玲徹楚々

選者コメント

家藤正人

初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。



「ふと抓む耳朶は碁石に似て余寒   こがもくお」

月曜の類想ピックアップでも書きましたが「寒いから○○する」発想は数多くありました。「耳たぶに触れる」もその一つ。ですが「石」の比喩によって確かなリアリティとオリジナリティを獲得しています。表面の冷たさ、抓んだ指先で確かめる耳朶の奥にある芯の厚み。淡々と描写する十四音から季語の三音で締めるさりげなさがかえって「余寒」を際立たせています。


「馬跳びを終へまた馬となる余寒   となりの天然水」

かわるがわる跳んでは馬になって繰り返される「馬跳び」。時間的にも空間的にも、先へ先へとその繰り返しは続いていきます。跳ぶ瞬間の浮遊感、加速して受ける余寒の冷えた大気。身体を動かす高揚は瞬間的に終わり、次は自らが馬になる。遊びの中にある明るい虚無が愛おしいような、疎ましいような。「余寒」との心情的距離が絶妙な読みの楽しみを生んでくれます。


「筬打ちて余寒の夜の土不踏   高山玲徹楚々」

織機がリズミカルに奏でられる余寒の夜。途方もない作業に感じられますが、手を動かし、足がペダルを踏み、筬がカシャンカシャンと鳴るたびに織物は完成へと近づいていきます。印象的な「筬」だけに終始するのではなく、ペダルを踏む足下へ焦点をずらしたのも巧みです。土不踏の頼りなげな凹みは何に触れるでもなく、余寒の夜という時間と空間を上下し続けるのです。



いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!

  • 余寒なりお金は少しだけ欲しい

    一慎

  • からからと傀儡の口鳴る余寒かな

    いもがらぼくと

  • しんしんと真珠の太りゆく余寒

    喜祝音

  • 持ち時間尽きて余寒の第五局

    ぽちさんぽ

  • リカちゃんの髪梳く母へ余寒なほ

    竹石猫またぎ

  • 納棺師母に紅さす余寒かな

    あじさい 涼音

  • 面接前の椅子余寒の髪梳く

    みしまはぐし

  • 初恋を忘れた頃に来る余寒

    稲光虎介

  • 帰途の灯や背後に誰かいる余寒

    青桜ウインド

  • 骸骨を水拭き理科室の余寒

    むさし野まさこ

  • 親指に手摺りの錆刺さる余寒

    家守らびすけ

  • 余寒なほみづをきりきり尖らせり

    風薫子

  • 彫刻刀研ぎて余寒の光かな

    加田紗智

  • ぐわぐわと余寒飲み込む抜歯痕

    めりっさ

  • 白刃を陽に振りかざす余寒の野

    神戸の老寺士

  • 背に余寒蠢きさうな手術痕

    阿蘇の乙女

  • 余寒なほ肩肘で押す鉄扉かな

    夢散人(光散人)

  • 烈風や余寒の能登の給水車

    スモールちもこ

  • 余寒まだ転校生の一人飯

    土佐俳句人

  • 寝間の本余寒に叶う厚さかな

    雀浪乱

  • 余寒かなひとりの家へ長き坂

    やまもと葉美

  • 余寒ふと産休明けのパンプスに

    花見鳥

  • 退所せし父の襁褓を余寒の夜

    美村羽奏

  • 公園にコンガ担いで行く余寒

    高岡つくね

  • 鉄棒も誰かを待っている余寒

    岡田道一

  • 予約した家裁の廊下余寒なほ

    三上 栞

  • フランス語似合ひそうな今朝の余寒

    千華

  • 余寒なほ永代橋の弾痕に

    三浦海栗

  • 道化師の踝に傷余寒なほ

    足立とんび

  • 余寒なり籠鳥に似る車椅子

    泉北の石ヤン

  • 手話台の少し高くて余寒かな

    濱野 五時

  • 新築に蝋の匂へる余寒かな

    かときち

  • 余寒なお弥勒の指に薄明かり

    渥美一弥

  • 母に切る羊羹余寒さくら色

    守田jj

  • 薬包紙刃の如く余寒かな

    早川雅世

  • 蔵人の仕込み唄なし余寒あり

    放浪者

  • 雨の余寒カフェを出て行く介助犬

    堀池正海

  • 巨人ファンだと嘘つきし余寒かな

    おおきどくん

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