春着
波多露音
喜祝音
弥栄弐庫
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「春着解く指にやんごとなき眠気 喜祝音」
指に焦点を絞って春着を脱ぐ解放感を描きました。新年のハレを過ごした春着を今、解く。そういう場面を想像します。慣れない衣装の疲れと、気忙しく行事ごとをこなした疲れ。眠気も催されるでしょう。帯を解き、一枚ずつ衣を脱いでゆく手つき。その指には高貴な気怠さのような気品すら感じられるかのようです。
「星へ干す春衣を明日に慣らすため 波多露音」
読者の意表を突きつつ詩を生み出す語順の効果が的確です。太陽ではなく「星へ干す」ってなぜ? と思った瞬間、その対象は繊細な「春衣」だとわかります。大事に仕舞っていた春衣を星の光と夜気に晒し、俗世へと慣れさせてやるのです。方向を示す助詞「へ」によって、星へと差しのばし捧げる動作と、夜空を背景にした美々しい春衣が見えてきます。
「春着の腕振つて生放送さばく 弥栄弐庫」
職業的な共感もあって妙にツボに入ってしまったなあ。個人的な話で恐縮ですが、母・夏井いつきの長年の盟友でありますやのひろみ女史の姿と完っ全に重なってしまいまして……(笑)。新年の「生放送」を句材にしようと思いついたとしても「さばく」まで言い止められるのは稀です。「振つて~さばく」の動詞の斡旋が秀逸。大きな身振り手振りと共に、春着の艶やかな袖が場を切り盛りする勢いが力強い。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!
風待ラテ
山川十日
秋月あさひ
佐藤推敲子
雨戸 ゆらら
吉田白山
みくにく
柿本苧麻
sean
森ともよ
紫檀豆蔵
みにとまあいこ
そーめんそめ
もつ鍋
高山玲徹楚々
すずき 弥薫
朝香碧心
かときち
佐伯仙明
わだつみ
小田緑萌
藍時 湘
月枝いと
ぽちさんぽ
由比佐羅
鷺沼くぬぎ
北乃羆
慈夢りん
矢口知
鈴屋玲瓏
選者コメント
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「春着解く指にやんごとなき眠気 喜祝音」
指に焦点を絞って春着を脱ぐ解放感を描きました。新年のハレを過ごした春着を今、解く。そういう場面を想像します。慣れない衣装の疲れと、気忙しく行事ごとをこなした疲れ。眠気も催されるでしょう。帯を解き、一枚ずつ衣を脱いでゆく手つき。その指には高貴な気怠さのような気品すら感じられるかのようです。
「星へ干す春衣を明日に慣らすため 波多露音」
読者の意表を突きつつ詩を生み出す語順の効果が的確です。太陽ではなく「星へ干す」ってなぜ? と思った瞬間、その対象は繊細な「春衣」だとわかります。大事に仕舞っていた春衣を星の光と夜気に晒し、俗世へと慣れさせてやるのです。方向を示す助詞「へ」によって、星へと差しのばし捧げる動作と、夜空を背景にした美々しい春衣が見えてきます。
「春着の腕振つて生放送さばく 弥栄弐庫」
職業的な共感もあって妙にツボに入ってしまったなあ。個人的な話で恐縮ですが、母・夏井いつきの長年の盟友でありますやのひろみ女史の姿と完っ全に重なってしまいまして……(笑)。新年の「生放送」を句材にしようと思いついたとしても「さばく」まで言い止められるのは稀です。「振つて~さばく」の動詞の斡旋が秀逸。大きな身振り手振りと共に、春着の艶やかな袖が場を切り盛りする勢いが力強い。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!