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初級者結果発表

2025年12月20日週の兼題

冴ゆ

【曜日ごとに結果を公開中】

【優秀句】

  • スクロールする青い退屈月冴ゆる

    麻Y音

  • 山の端の冴ゆ山際のさらに冴ゆ

    ドナウ絵蓮

  • 冴ゆる夜や父の汚した布団干す

    黒木なずな

選者コメント

家藤正人

初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。



「山の端の冴ゆ山際のさらに冴ゆ   ドナウ絵蓮」

似て非なる言葉を組み合わせて作る対句表現。繰り返される「山~冴ゆ」の韻律は心地良く、「山の端」と「山際」の冴え具合の差がクリアに言語化されています。「山の端」は山が空に接する部分を意味し、「山際」は空が山に接する部分を意味します。空間的にはほぼ同じ位置でありながら、空に軸足を置いた「山際」の方が一段強い冴えを湛えている、というわけです。強く二度繰り返される「冴ゆ」はその大気に身を置くことを憧れるように切々と響きます。


「冴ゆる夜や父の汚した布団干す   黒木なずな」

「布団」も季語ではありますが、主たる季語は「冴ゆ」だと考えます。介護の現場でありましょうか。「父の汚した布団」は淡々とした事実の描写であると同時に、老いと介護の避けがたい悲哀の象徴のようでもあります。できる限り汚れを落とした布団を干す、その夜の大気のなんと冴えていることか。冴え冴えとした夜にはきっと星も灯っていることでしょう。感情の語りに逃げなかったからこそ、読者の心を「冴ゆ」という季語の持つ力が満たしていきます。


「スクロールする青い退屈月冴ゆる   麻Y音」

現代的な句材。「スクロールする青い退屈」をどう解釈するか、多少迷いますが、この感覚には共感を覚えます。スマホなどを指が滑る皮膚感覚、暗がりにディスプレイだけが発している白っぽい光、何も得ないまま惰性で流れていく画面と時間……そんな陰鬱な自己客観を展開したあとだからこそ「月冴ゆる」が加えてくれる一匙の詩情が沁みます。連体形「冴ゆる」の着地は、語りきれない心中があるとも、無為の永遠性の象徴とも読めます。さて作者の心づもりやいかに。



いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!


  • 冴ゆる夜月が近くにいてくれる

    高橋こう

  • 思ひ出のおほかたは嘘月冴ゆる

    佐藤史緒

  • 湖に色を預けて月冴ゆる

    松の本の芭蕉

  • 星冴える人は数多を屑と呼ぶ

    千里灰汁太

  • 焼夷弾忘れ東京冴えにけり

    晩乃

  • 明朝体冴えて崩御の報せあり

    弥栄弐庫

  • トランプのジョーカー嗤ふ冴ゆる月

    山 びこ

  • 冴ゆる夜やおくんおくんと飲む赤子

    しなもりいふ

  • 遠的にまなこ宿せば空気冴ゆ

    開山Moon

  • 月冴えて心臓周りに溜まる水

    小花風美子

  • おるがんの鍵盤冴えて音や焔

    須臾猩々

  • 光冴ゆ東京タワーおないどし

    児玉すいか

  • 冴ゆる朝実家は雨戸十五枚

    椎名二紋

  • ささくれを剥く癖哀し冴ゆる朝

    ねうねうこ

  • 冴ゆるとはひとりぽっちのとおせんぼ

    和脩志

  • 冴ゆる夜ひらがなになる子守唄

    ナカニシマメ太

  • 黄昏の上澄みに冴ゆ一番星

    詩雲

  • 星冴ゆるシーラカンスの眼は黙秘

    羽根井しの

  • 月冴ゆる産廃場に影一頭

    千嶋紗香

  • 岬冴ゆ生まれたばかりの陽が昇る

    織波

  • 風冴ゆる姿勢良き事褒めらるる

    前川 葉月

  • 冴ゆる夜のマックに居るしかない私

    湧別川

  • 月冴えて中古ギターの骸かな

    小川雷夏

  • 「おにぎりは温めますか」渋谷冴ゆ

    竹石猫またぎ

  • 脈動の形に冴ゆる弦音かな

    豆野まね

  • 朝の風冴ゆこの街もあと二日

    阿野比等

  • 冴ゆる夜の電話を取れば詐欺らしき

    加田紗智

  • 星冴ユル歌ヲ忘レタチキュウ人

    竹林子

  • 冴ゆる夜の吐息は空也像のやう

    月待 小石

  • 月冴ゆる小島帰りの最終便

    里山まさを

  • 逆さ富士歪む波紋やひかり冴ゆ

    アツシ

  • ひとりだけ生きてつまらぬ風の冴ゆ

    清水猿虎

  • 剥製は羽ばたく形星冴ゆる

    喜祝音

  • 冴ゆる夜や余命宣告月単位

    仲村江子

  • 黒猫のつめ先透けて冴ゆる朝

    白井和玄

  • 冴ゆる朝軋む身ぬちの蝶番

    米山

  • 冴ゆる夜や丸裸なる避雷針

    膝丸佳里

  • 白衣から伸ぶ聴診器銀に冴ゆ

    舞矢愛

  • 月冴えて塔の木組の反り確か

    金子加行

  • 冴ゆる日をドクターヘリの前傾し

    蝦夷やなぎ

  • 星冴ゆる月九万の養育費

    水引草

  • きいと鳴く台車の狂ひ冴ゆるかな

    東雲 文丹

  • 墨はしる硯のそとは冴えにけり

    横浜順風

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