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2016年10月6日週の兼題
波郷忌
【曜日ごとに結果を公開中】
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火の息に眼鏡曇らす波郷の忌
魚ノ目オサム
選者コメント
夏井いつき
選
忌日の季語の難しさにため息をついた今週。石田波郷らしさをどう切り取るのか。彼の作品をふまえた句もたくさん読ませてもらいましたが、それもまた、忌日の季語を使う上での有効な手法だと思います。 もう一つは、忌日の人物の風貌や性格や生涯を匂わせる方法です。石田波郷(1913年(大正2年)3月18日 - 1969年(昭和44年)11月21日)の風貌の特徴は、眼鏡と長身。招集を受け華北に駐留し、左湿性胸膜炎を患い帰還。その後は、死ぬまで手術と入退院をくりかえしつつ、俳人としての仕事を続けました。掲出句の「火の息」「眼鏡」は、まさにそんな波郷の横顔を表現するための言葉でしょう。 「火の息」とは、熱のある身の息。我が身からでてくる「息」なのに、その熱さに驚いているかのような言葉です。「火の息」を吐きながら「眼鏡」を拭っているのでしょう。波郷自身が、「眼鏡」の汚れを拭き取っては句を綴る姿が見えてきます。 とはいえ、この句の人物を石田波郷と限定して読まねばならぬというわけでもありません。自分自身が「火の息」をハッハッとかけて「眼鏡」を拭いている。そういえば、今日は石田波郷の亡くなった日「波郷忌」であることに気づいた、と読んでもよいわけです。 波郷という人物を描きつつ、普遍的な読みも有している点が、この句の持つ奥行きではないかと考えます。「火の息」をハッハッと吐き付けて磨く「眼鏡」は、波郷にとって戦友のようなものなのでしょう。熱の身で書き続ける意志もまた「火」の如きものなのでしょう。
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