• ざらざらの心コスモス葬に附す

  清水縞午

  選者コメント

  

  夏井いつき選

  　生きることのみに懸命に過ごしてきた自分の心の中に、「ざらざら」した部分があることに気づきます。人との付き合い方、素直になれない自分、働けど働けどの日々、将来への不安。そんな心を抱えて訪れたコスモスの野。「ざらざらの心」を葬ろうという思いを託した「コスモス葬」という詩語に、胸を射貫かれました。ざらざらした心を葬って、風に向かって歩き出す作者も見えてきます。
• 天文部コスモスの野に集合す

  卯月紫乃

  選者コメント

  

  夏井いつき選

  　「コスモスの野」に集合する「天文部」の部員たち。そういえば今年の十月二十二日にはオリオン座流星群が押し寄せるそうです。広い「コスモス」の野原で、流星群を待ち受けるのかもしれません。咲き広がるコスモスの野。今夜の天体観測をわくわくと待つ心。暮れていくまでの時間、コスモスの風を味わう天文部員たちの青春の一ページ。
• コスモスに風は生まれて鳥の波

  橘鶫

  選者コメント

  

  夏井いつき選

  　「コスモス」に「風」はベタではありますが、風に揺れやすいのがコスモスの特徴ですから、それを描くのがダメなわけではないのです。この句の工夫は、コスモスへ風が吹くのではなく、コスモスに風が生まれてくるという詩的把握。そこから、コスモスの野を発つ「鳥の波」という映像への展開が実に鮮やか。コスモスと風と鳥が呼応して起こる「波」の音が聞こえてくるかのようです。

次回の兼題も
皆さまふるって投句してください。
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