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中級者以上結果発表

2017年1月26日週の兼題

蕨狩

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • 空掘と知らず蕨を狩り登る

    ゆきたま

    選者コメント

    夏井いつき

    あ、こんなところに「蕨」があると、地面ばかり見て夢中で採っていたのでしょう。土手のような斜面を「狩り」ながら登っているうちに、ひょっとしてここは「空堀」なんじゃないか、と気づいたのです。下五「狩り登る」という複合動詞の使い方が巧い一句です。
  • 早蕨の狩と呼ぶにはうぶうぶし

    めいおう星

    選者コメント

    夏井いつき

    「早蕨」は植物の季語ですが、このような書き方をすれば、「蕨狩」のエリアに入ってくるという一例です。蕨狩には少し早いかなと出かけてみると、「早蕨」が顔をだしている。「蕨狩」というにはなんとも幼気なさまを「うぶうぶし」と表現したのが巧いですね。「狩と呼ぶには」という言い回しにも味があります。
  • わらび狩ぽきぽき春の骨を折る

    花屋

    選者コメント

    夏井いつき

    季重なりですが、面白い一句。「わらび狩」の感触を「ぽきぽき」というオノマトペで表現する句は幾らでもありますが、その「ぽきぽき」は「春の骨を折る」感触だよと感じとるところに、独自の感受があり、楽しい詩があります。
  • 祟り神に触れ来し右手蕨狩

    耳目

    選者コメント

    夏井いつき

    同じ「神」でも、「祟り神」に遭ってしまった人もいるようです。ただの石ではなさそうな石の根元に「蕨」が沢山生えているのを見つけたのでしょう。石に近づき、うっかり「右手」をついて採った「蕨」ですが、よくよく眺めてみると、どうもこの石は「祟り神」のようではないか……。なんとなく「右手」がじんじんと熱くなってくるような気がする、そんな「蕨狩」の一場面です。
  • 蕨狩おとこ古墳を滑り落つ

    小泉岩魚

    選者コメント

    夏井いつき

    こちらは、逆に「滑り」落ちています。「蕨狩」の一行は、ついに丘の「古墳」へと到達します。「古墳」の斜面は「蕨」だらけのポイント。この「おとこ」は蕨を採っているうちにうっかり滑り落ちてしまったのか。誰よりも先に「古墳」の斜面に挑もうと自ら滑り下りていった様子を敢えて「滑り落つ」と表現したか。これらもまた「蕨狩」の一場面です。
  • 蕨狩る老女五人は無敵なり

    津軽まつ

    選者コメント

    夏井いつき

     「蕨狩」となればこの「老女五人」に敵う人間はいないのです。足腰も丈夫で、要領もよくて、賑やかで、何よりも「蕨」の群生している場所を熟知している「老女五人」。皆で共有しているポイントもあれば、自分だけが知っているポイントもあるに違いありません。「無敵なり」と言い切ったところにユーモアも生まれます。
  • 蕨狩行つて還らぬ夢のはは

    くらげを

    選者コメント

    夏井いつき

    こちらの「はは」は切ない。もう亡くなっている母でしょうか、失踪した母、心の通わなくなった母、記憶がなくなってきた母かもしれません。「はは」を思う時、かの日の「蕨狩」の場面ばかりが、なぜか思い出されてしまう。「夢のはは」は「蕨」を探して、振り返ることもなく山の奥へ奥へと入っていくのでしょう。子を置いて遠ざかる「はは」を呼ぶ我が声に、ハッと目覚める「夢」の幾夜。
  • 蕨狩るちちははの船戻るまで

    Kかれん(「かれん」改め)

    選者コメント

    夏井いつき

    「ちちははの船」は魚を採るための船でしょうか。海へ、あるいは川へ、湖へ漕ぎだした「ちちははの船」を待つ間、子どもたちは「蕨」を狩りつつ遊んでいるのでしょう。やがて昼時となれば、「ちちははの船」は岸に戻り、子どもたちと共に昼の弁当を開くに違いありません。採れた「蕨」を誉めながら、楽し気な昼餉が始まるのです。
  • 蕨狩迷いし人の籠重し

    蛾触

    選者コメント

    夏井いつき

    人数を数えてみると一人足りない。「蕨狩」をしながら山に迷い込んでしまった「人」がいるのです。皆で心配し、探しているうちに、当のご本人は悠々と「籠」を担いで現れます。誰よりもたくさんの「蕨」が入っている「籠」を「重し」と言い切ることで、やれやれ人騒がせな……という思いと、安堵の思いとが交錯します。

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