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中級者以上結果発表

2020年10月1日週の兼題

熱燗

【曜日ごとに結果を公開中】

秀作

  • 熱燗や座敷わらしを膝へ呼ぶ

    いさな歌鈴

    選者コメント

    夏井いつき

    「熱燗や」の後に、今度は「座敷わらし」です。北国の古い家でしょうか、座敷童子がいるという評判の宿でしょうか。「座敷わらし」を「膝へ」呼んで、頭を撫でながら「熱燗」をすする。虚実の狭間に遊ぶ一句です。
  • 熱燗や映画のロシア人悪い

    玉庭マサアキ

    選者コメント

    夏井いつき

    「熱燗や」という上五がずらーーっと並んだ今週ですが、この季語での取り合わせは、案外難しいと感じた人も多かったのではないでしょうか。「熱燗や」の後に「映画のロシア人悪い」と呟くだけで一句になる!という驚き。してやられたな~という感じです。「熱燗」飲みながらさっき観た「映画」の話をしているだけなのですが、どんな「映画」を観たのか、どんなストーリーでどんな役回りの「ロシア人」なのか、妙に気になります。試みに、「ロシア人」のところに「ギリシャ人」「ローマ人」「カナダ人」など3音の国名を入れ替えてみたのですが、どうもしっくりこない。「ロシア」という国名が「熱燗」の熱さを下支えしているのかもな、と納得した次第です。同時投句「熱燗や前世が猫の方こちら」「熱燗や灘高行けなくても褒める」「熱燗や日本の神みな寂し」など、やりたい放題やってくれてます(笑)。
  • 熱燗や火の舌をもて国を説く

    古田秀

    選者コメント

    夏井いつき

    「熱燗や」の後に「火の舌」が出てくると、熱さに舌を焼いたかとも思うのですが、下五によって、火を噴くような勢いで語っているのだと分かります。「国を説く」とは、国を憂う気持ちから発する議論でしょう。かつて学生運動に走った人々を思ったのは、私の年齢ゆえの鑑賞でしょう。三島由紀夫の幻影も見えたような気がしました。
  • 熱燗をひっかけ潜るシュラフかな

    ざうこ

    選者コメント

    夏井いつき

    「熱燗をひっかけ潜る」で、我が脳は先走り「蒲団かな」という展開を一瞬思ってしまいました。そこからの「シュラフかな」という下五にささやかな意外性があります。ふて寝する蒲団ではなく、一人キャンプの「シュラフ」だろうか、夜になると気温が下がってくる。テントの中は寒い。火を落とす前に熱燗をひっかけたのだな、冷たい星空が広がっているのだな、と想像が広がっていきます。
  • 熱燗や重心臍を外れだし

    戸部紅屑

    選者コメント

    夏井いつき

    酔っ払ってフラフラするのは当然のことですが、それを「重心」が勝手に「臍」を外れていくのだ、と発想した点が愉快ですし、実感もあります。下五を、切れのない型にしたのも効果的な配慮です。
  • おほかたは去りて熱燗めんどくさ

    利尻

    選者コメント

    夏井いつき

    宴会なのか、葬儀なのか、さっきまでいた人々の「おほかた」は去ってしまったという読みが一つ。さらに、「おおかたは去りて」を、近しい人々の大方が亡くなって、という読みもあるでしょう。後半の「熱燗めんどくさ」という口語の呟きに、淋しさが滲みます。「熱燗」とは、つけてくれる人があっての熱燗なのだな、と。
  • こつそりと弔辞褒められ燗熱し

    木江

    選者コメント

    夏井いつき

    「弔辞」ですから、作中人物は故人と親しかった人。葬儀や告別式で、最後のお別れの言葉を述べたのです。胸に沁みたよ、いい弔辞だったと「褒められ」て、静かな微笑みを返す。そんな場面を描く工夫として、上五「こつそりと」が巧みです。下五「燗熱し」は、熱いという事実に軸足がありますので、傍題の使い方としても的確。映画のワンシーンのような作品です。
  • はした金惜し熱燗の香のつんと

    RUSTY=HISOKA

    選者コメント

    夏井いつき

    「はした金」などくれてやる!と毒づけるものなら、ついてみたいが……「はした金」もやはり金。惜しいにきまっています。「熱燗の香」が鼻腔に「つん」とくる。ああ、佳き香りだと思う……と、また「はした金惜し」と呟いてしまうのです。
  • やまいぬのやうな眼のをんなと熱燗

    きゅうもん@木の芽

    選者コメント

    夏井いつき

    「やまいぬのやうな」は「眼」にかかっていきます。野性の匂いのする凶暴な眼です。その「眼」が「をんな」の眼であると分かったとたん、「熱燗」の匂いが急に濃くなってくるかのようです。破調のリズムを活かしつつ、最後に季語「熱燗」を印象づける。手練れの技です。
  • 熱燗や恩師はだいぶ縮んでた

    ⑦パパ@いつき組広ブロ俳句部

    選者コメント

    夏井いつき

    「熱燗や」の後に「恩師」という人物が出てくれば、共に酌み交わしていることは想像できます。あんなに大きく見えていた先生は、こんなに小さな人だったのだという感慨。「だいぶ縮んでた」という口語表現に共感が湧きます。

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