黒蜜かりんとう
夏椿咲く
赤松鴨
工藤帽子
水鏡新
一港
渡野しえん太
大山和水
伊藤佃
神ヤ飛ビ魚
志古女
ひろ笑い
勝本熊童子
ゆりのゆき
内田こと
真咲よしの
さざなみ葉
パンの木
空乃井戸女
中村すじこ
深川佳子
うからうから
岡田論子
中川家族
天野倖雪
岡山由加
笹野夕
まつたいら西
小野寺 余伴
美竹花蘭
工藤遊子
杜乃しずか
佐藤夏みかん
本山喜喜
さかえ八八六
岡城浩
馬門宗太
渓翠@青東高
東歩
藤井かすみそう
在在空空
とんぶりっこ
仲間英与
ギボウシ金森
加藤ゆめこ
神津草茶
橘萌香
香依蒼
斧的部
妙
加田紗智
浦上啄鶴
咲田ちよえ
清水奈々子
猫髭かほり
小川野棕櫚
吽田のう
いもがらぼくと
天神川
片岡六子
喜祝音
侍真満陽陰
めりっさ
森春雷
野々りんどう
膝丸佳里
真心素秋
雑草おばさん
秋月
青居 舞
門前町光乃
ゴー俳句翁
高永 摺墨
蒼空蒼子
加藤しょうへい
日向 道
陽花天
竹内 喜和
流鏑馬
角野角子
八十六九
大 広秋
川上美馬
選者コメント
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「雛祭赤の多さに疲れけり 工藤帽子」
着飾る衣装や飾り物、果ては食べ物まで。「雛祭」を祝う一日を囲むあらゆる「赤の多さ」に疲れてしまったよ……という呟き。「けり」は既に存在していたものへのハッとした気づきを意味します。私の疲れの原因はこれだったのね、と少しだけ胸も軽くなり。
「漆絵の桃は満開雛祭り 夏椿咲く」
雛祭を祝うお祝いの膳は見事な漆絵の品。桃の花は季語ではありますが、ここでは描かれた図柄ですから季語の力は持たないと考えて良いでしょう。上品な贅尽しの品と過ごす華やかな「雛祭」。「満開」の一語に、健やかに育つようにとの祈りも感じとれます。
「雛開く雪の匂ひのする昼に 黒蜜かりんとう」
温度と嗅覚で捉える詩の感覚が美しい句です。雛を開く。用意を始める瞬間から雛祭の季語体験は始まっているのです。北国でしょうか。まだ外には冷たい雪が残っているような日。部屋に満ちるしんしんと冷たい空気を鼻に感じつつ雛を開くと、箱の内からはぷんと防虫剤の匂いも立ち上がってくるのでしょう。
「雛祭もしてくれなかったくせに骨 赤松鴨」
雛祭をやった・やらない、と嘆いたり残念がる句は他にもありました。しかしこの恨み言めいた語り、そして下五への展開は見事です。「くせに」に滲む感情の濃さ。「骨」で確保される映像。胸中にはもう叶わない憧れとして「雛祭」の華やかな幻影が住み続けるのです。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!