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初級者結果発表

2022年1月20日週の兼題

雛祭

【曜日ごとに結果を公開中】

【優秀句】

  • 雛祭赤の多さに疲れけり

    工藤帽子

  • 雛祭もしてくれなかったくせに骨

    赤松鴨

  • 漆絵の桃は満開雛祭り

    夏椿咲く

  • 雛開く雪の匂ひのする昼に

    黒蜜かりんとう

選者コメント

家藤正人

初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。


「雛祭赤の多さに疲れけり 工藤帽子」

着飾る衣装や飾り物、果ては食べ物まで。「雛祭」を祝う一日を囲むあらゆる「赤の多さ」に疲れてしまったよ……という呟き。「けり」は既に存在していたものへのハッとした気づきを意味します。私の疲れの原因はこれだったのね、と少しだけ胸も軽くなり。


「漆絵の桃は満開雛祭り 夏椿咲く」

雛祭を祝うお祝いの膳は見事な漆絵の品。桃の花は季語ではありますが、ここでは描かれた図柄ですから季語の力は持たないと考えて良いでしょう。上品な贅尽しの品と過ごす華やかな「雛祭」。「満開」の一語に、健やかに育つようにとの祈りも感じとれます。


「雛開く雪の匂ひのする昼に 黒蜜かりんとう」

温度と嗅覚で捉える詩の感覚が美しい句です。雛を開く。用意を始める瞬間から雛祭の季語体験は始まっているのです。北国でしょうか。まだ外には冷たい雪が残っているような日。部屋に満ちるしんしんと冷たい空気を鼻に感じつつ雛を開くと、箱の内からはぷんと防虫剤の匂いも立ち上がってくるのでしょう。


「雛祭もしてくれなかったくせに骨 赤松鴨」

雛祭をやった・やらない、と嘆いたり残念がる句は他にもありました。しかしこの恨み言めいた語り、そして下五への展開は見事です。「くせに」に滲む感情の濃さ。「骨」で確保される映像。胸中にはもう叶わない憧れとして「雛祭」の華やかな幻影が住み続けるのです。


いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!

  • 山国の雪まだ深き雛まつり

    工藤遊子

  • 貸本のあまきかほりやひなまつり

    本山喜喜

  • 雛祭りきょうはうれしい日だったか

    志古女

  • 子宮無き腹の疼きや雛祭

    ひろ笑い 

  • 前年の埃きらきら雛祭り

    とんぶりっこ

  • 立雛に旅の一夜を迎えられ

    仲間英与

  • 娘を産みて生臭き息ひな祭り

    ギボウシ金森

  • まだ慣れぬ苗字と家事と京雛と

    秋月

  • 浜下りて白き砂踏む雛祭り

    さざなみ葉

  • 父の名を二度問わぬ子や譲り雛

    パンの木

  • ちかちゃんはピアノもあった雛祭

    中村すじこ

  • ぽぽぽぽと注がるる茶や雛祭

    うからうから

  • 蒲焼きの山椒こぼるる雛祭

  • 雛祭嫌いヒコーキ雲見てる

    天野倖雪

  • 夜歩き回らぬような雛選ぶ

    岡山由加

  • 雛祭絵本の子らの不幸かな

    陽花天

  • 凹凸の畳の縁や雛祭

    吽田のう

  • 浜下りに星砂ふみし雛祭

    竹内 喜和

  • ひなまつり痺れる足とコカコーラ

    角野角子

  • 天井を神走りけりひいなの間

    まつたいら西

  • おゆうぎの輪に在る母や雛祭

    大 広秋

  • ンゴォーと牛朗らなる雛の家

    美竹花蘭

  • 雛祭優しき父の腕まくら

    岡城浩

  • 箱ひとつなぜ余るのか雛祭

    馬門宗太

  • ベッド30°父の最期の雛祭

    川上美馬

  • 雛祭祖父の遺影の裏暗く

    いもがらぼくと

  • 雛祭どこか葬儀の色に似て

    天神川

  • 妹がまた受賞せり雛祭

    渓翠@青東高

  • 茹でこぼす物艷やかに雛祭

    喜祝音

  • 古雛をそと撫づ一人だけの午後

    東歩

  • 話には小さな尾ひれ雛祭り

    藤井かすみそう

  • 雛祭りあられをつまむ星の夜

    ゆりのゆき

  • 戦火知る煤の顔雛祭

    膝丸佳里

  • 我が代で途絶える名字雛まつり

    真心素秋

  • 雛壇に隠れて長き五分かな

    雑草おばさん

  • 雛祭ほの紫のうしほ汁

    空乃井戸女

  • 雛祭昭和の雛のうらわかし

    橘萌香

  • 紙雛の折り目正しき地銀かな

    香依蒼

  • 自慢せし華の重箱ひなまつり

    岡田論子

  • ちちははも一重まぶたや雛祭

    加田紗智

  • 太陽の匂いのぬるき雛祭

    中川家族

  • 水濠の町晴れてます雛祭

    ゴー俳句翁

  • 保育所の古き七段ひな祭り

    高永 摺墨

  • 横分けの似合ふおでこや雛祭

    咲田ちよえ

  • ラムの苦み清し二十歳の雛祭

    笹野夕

  • 三輪車小雨に濡れて雛祭り

    加藤しょうへい

  • ひんやりと時止まる家雛祭

    猫髭かほり

  • 雛と聴く名入りの早きオルゴール

    日向 道

  • ひな祭りジャングルジムの十二人

    小野寺 余伴

  • 雛の宴仕丁の恋の物語

    小川野棕櫚

  • 雛祭り吾子は佳人にあらねども

    流鏑馬

  • 大漁を告げるサイレン雛の家

    一港

  • みちのくの空青過ぎてつるしびな

    水鏡新

  • 座布団の傾ぎてしづか雛祭

    渡野しえん太

  • 知らぬ名の母への文や雛飾り

    杜乃しずか

  • 骨壺と犬の写真とひな祭

    佐藤夏みかん

  • ひなまつり名付け辞典のいろふせん

    大山和水

  • 駄菓子屋の母待つ椅子や雛祭

    さかえ八八六

  • 雛祭欠けたる指のゆゑ伝ふ

    八十六九

  • 横顔に夜明けの早き雛祭

    伊藤佃

  • 部屋いっぱい広がる歌や雛祭

    神ヤ飛ビ魚

  • 耳かきのひざをこつちにひなまつり

    片岡六子

  • 雛祭暮れゆく居間の広さかな

    侍真満陽陰

  • ままごとの小さき器ひなまつり

    勝本熊童子

  • 雛祭り性善説派だった頃

    在在空空

  • 履歴書のアタシ何者雛祭

    めりっさ

  • 雛祭り喧し貝の口が開く

    森春雷

  • 吸物をスプンに冷ます雛祭

    内田こと

  • 幾重にも荷解き楽し雛飾る

    野々りんどう

  • 病室に飴行き渡る雛祭

    加藤ゆめこ

  • 初孫の乳の匂ひや雛祭

    真咲よしの

  • ピアノの黒過り雛祭の赤へ

    青居 舞

  • 闇市を抜けて曙雛祭

    神津草茶

  • 旧街道あかるき一夜雛祭り

    門前町光乃

  • 雛祭鎮静剤の白湯を請ふ

    深川佳子

  • ひそひそと雛祭の夜姉たちは

    斧的部

  • 雛祭右大臣にもある故郷

    浦上啄鶴

  • 雛祭り少女側転して立てり

    蒼空蒼子

  • 雛壇のふもと薄日の低さかな

    清水奈々子

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