潮ベルト
長野 雪客
駒村タクト
半ズボンおじいさん
藤 えま
村岡花風
どこにでもいる田中
彫刻刀
望月ぽん
大井ゆめか
みつき 夏
スモールちもこ
千歳みち乃
中 はじめ@木ノ芽
里山まさを
放浪者
かねつき走流
渡野しえん太
おのまい
ハルノ花柊
みなみほ
春羽さゆみ
佐伯仙明
外鴨南菊
山姥和
根なし草
小迫さこ
伊予素数
蒼空蒼子
川上美馬
小栗あきこ
泥塗れのポスト
けしみずちゃん
アナミスト
あらあらた
美村羽奏
磯貝あさり
すずき 弥薫
石井茶爺
頭足人
服部 あや
オーガストスガワラマサト
南 楕円
松 山陽兵
ミエコハマタニ
ナタデココ
和田まさやん
ららやにほ
ひろ笑い
桃園ユキチ
喜祝音
薩克期風
西森笙
江澪
蓼科 嘉
嶋村らぴ
みくにく
天風
ゴリコのむすこはだれだ?9才
水上ルイボス茶
選者コメント
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「百千鳥鳴く鳴く五百二十色 半ズボンおじいさん」
賑やかに入り混じる「百千鳥」の声。その多彩な音色は音の一粒一粒まで色を持つかのよう。「五百二十色」と明確な数を言い切る詩心が読み手をうっとりとさせます。「鳴く鳴く」のリフレインも効果的。「百」の字が二回登場する表記の工夫もにやりと楽しい。
「竹林の陽のをとあはし百千鳥 駒村タクト」
一瞬、仮名遣いを間違っているのか? と調べてしまいましたが、さにあらず。「をと」とは「彼方」を意味する古語なのだそうです。言葉がわかると画布に絵が浮かび上がるように光景が見えてきます。竹林に射す陽光、春の瑞々しい大気、淡く霞む竹林の奥行、見えつ隠れつ鳴き交わす百千鳥の数はうかがい知れず……と。幽玄な空間の入口に佇むような魅力がありました。
「百千鳥逸れて二羽の追いあへり 藤 えま」
百千鳥はある種正体不明な季語です。多くの鳥が鳴き交わしている集合体こそが「百千鳥」。しかしなにかの拍子で集団から抜け出した「二羽」が追いあいを始めた。様子を眺めていると、追って逃げての声は確かにさっきまでの「百千鳥」の一部を構成していた音に違いない、と確信するわけです。聴覚と視覚で観察する一物仕立て。
「飯盒の火の落ち着きよ百千鳥 長野 雪客」
懐かしいなあ。飯盒で米を炊いて、しばらくひっくり返して置いておくんですよね。飯盒を熱くねぶっていた火勢は衰え、辺りには米の煮えた甘い匂いが漂って。そんな待ちの時間を愛しむような余韻を中七の「よ」が生んでくれます。静かで満ち足りた上五中七と「百千鳥」との取り合わせも◎。飯盒を開くまでのワクワクするような期待は明るい鳥の騒ぎ声にも似て。
「月の香を皆で喰うたか百千鳥 潮ベルト」
詩の感覚に強い魅力を感じます。「きっと鳥たちは月の香を喰ったのだろうよ」なんて台詞の登場する小説が生まれそうだなあ。夢枕獏先生、いかがですかね。(個人の趣味)
詩語「月の香」への想像も豊かに広がります。出初めの淡い月か、はたまた昨夜の見事な月が心に落とした余韻のようなものでしょうか。百千鳥の声の一つ一つが月のつやめきを手にしたような、独特の響きを夢想する豊かさ。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!