シュレディンガーの獏
山月
杏乃みずな
横山雑煮
りぷさりす園芸店
花根ひろこ
ふくろう悠々
土井あくび
舞童あづき
しまのなまえ
さきとみつきのジジ
こまの
岸 小広
松山のとまと
あねもねワンヲ
せんだ ゆう
大山和水
金井登子
ねこか花はっか
水取 象
蒼空蒼子
アナミスト
磯花 珊瑚
駒村タクト
空想婆
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松 山陽兵
笑田まき
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風かおる
つまりの
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憩 真七桜
康寿
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与野小町
阿部八富利
青に桃々@いつき組俳句迷子の会
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出楽久眞
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ひめのつばき
堀本チャイニーズハット
パンの木
村上 雪笹
ゆきなごむ
ぽんたちん
悪七兵衛
荒井まき子
佐々木四郎
山姥和
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青嵐
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村田のりと
泰山木
冬井三月
鳥羽蒼香
うえばまさき
かさ野ろく11才
亘航希
長田写々
とまや
六地蔵と狛犬
芝G
イドウタ
くぅ
ひろ笑い
十月小萩
藤 えま
富土真木
本村なつみ
愉来理あゆむ
齋藤ちの
選者コメント
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「少年にメロスの踵骨夏の海 シュレディンガーの獏」
踵骨とは文字通り、踵の骨。夏の海にいる人物、その肉体の小さな部位へと映像の焦点を絞って描きます。健康的な「少年」の踵と、友を救うため駆け通した「メロス」の取り合わせ。なにをしているなどと語らずとも、この少年が躍動する様を読者は脳裏に思い描けます。砂を蹴立てる傍らには夏の海が青々と寄せています。
「夏の海白いモスクのやうな船 杏乃みずな」
読者が俳句を読む時、上五から順に脳内に映像を組み立てていきます。まず「夏の海」がどかんと広がる。次になにやら「白」いもの。その白は「モスク」に例えられ、その白の正体は「船」であることが明らかになります。「夏の海」という舞台にミニチュアが配置されていくような語順が楽しい。青と白とのコントラストが明るい。
「夏の海はつと冷たき沖の水 横山雑煮」
肉体感覚に強い共感を覚えます。気持ち良く沖へと遊んでいると、ある地点を境に急に水温が変わる。その瞬間、今まで意識しなかった恐怖がはっと心に兆します。同じ内容を描くにあたり季語は「遠泳」などでも成立するかもしれませんが、「夏の海」は行為ではなく光景に比重があります。楽しい「夏の海」からの変転が眼目。
「夏の海ここはくじらのいるふかさ 山月」
夏の海の深さや冷たさに驚く気持ちも、こどもの目線で捉えると全然違った表情を見せてくれます。足がつかない深さ、海底が見えない深さ。そんな未知の「ふかさ」には「くじらがいる」に違いないのです。童心を思い出した大人の句か、こどもの言葉を聞き取ってあげたおしゃべり俳句か。体験の中に詩は育っていくものですね。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!