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初級者結果発表

2022年11月20日週の兼題

落葉

【曜日ごとに結果を公開中】

【優秀句】

  • じゅじゃと踏む水の匂いの落葉かな

    外鴨南菊

  • ブックオフに本がねぇじゃん落葉風

    きしん12才

  • 一封の手紙へたぐひなき落葉

    麦のパパ

  • 伴走のペース明るく落葉踏む

    あおい結月

選者コメント

家藤正人

初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。


「伴走のペース明るく落葉踏む   あおい結月」

マラソンや自転車競技などで選手と共に走る「伴走」。この句の場合は下五から察してマラソンでしょう。重く引きずるような足音ではなく、そのペースは溌剌と明るく路面の落葉を踏んでいきます。「明るく」が音・状況・心理、全ての好調さを予感させて気持ち良い中七です。


「ブックオフに本がねぇじゃん落葉風   きしん12才」

聞き覚えのあるCMのセリフからの一句かもしれません。まず、日常の言葉へ12歳の作者がアンテナをはっていることを評価したいところ。乱暴気味な言葉遣いがつい出てきてしまう状況に共感するやら笑えるやら。中古の本屋に探しにきたものの、お目当ての本は見つからず。しかも道中は木から葉を落とすような寒々とした落葉風の一日です。なーんにも手に入らないままもう一度来た道を戻る侘しさといったら耐えがたいものがあります。嗚呼、やるせない落葉風。


「じゅじゃと踏む水の匂いの落葉かな   外鴨南菊」

「じゅじゃ」は濡れた落葉を踏んだ感触のオノマトペ。今回は誰もが体験した記憶のある季語だっただけに多くの擬音語・擬態語が寄せられましたが「じゅじゃ」は実にリアリティとオリジナリティがあります。まだ新しい落葉と古い落葉が共に足裏で潰れる感触。一歩ごとに足下から立ち上る匂いを捉える俳人センサーが秀逸です。


「一封の手紙へたぐひなき落葉   麦のパパ」

手紙や本と落葉の取り合わせは多数ありました。その中で掲句が抜きん出たのは要所での言葉の押さえ方。特別な「一封」だからこそ「たぐひなき」一枚を選び、同封しようとする。完璧な色と形を保った落葉と出会った高揚と、それを誰かに伝えようとする素朴な幸福。麦のパパさんからは「自選する能力をしっかりと付けなければ中級へ進めないと思い、今回から一句出しです!」とコメントも。自選眼、バッチリです!



いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!

  • 落葉焚く祖母もおとんももういない

    Karino

  • 窓外の落葉や胎動で目覚め

    可秘跳

  • 絢爛を生きて落葉の軽さかな

    リコピン

  • 傷つけず傷つかぬ距離降る落葉

    胡桃ぼたん

  • 着弾に震ふ旅鞄へ落葉

    野点さわ

  • 落葉噛みつつ自転車の下り坂

    せとみのこ

  • 最低賃金の分だけ掃く落葉

    磯むつみ

  • 火のような落葉や家庭裁判所

    松 山陽兵

  • ブーメランの光の軌跡落葉風

    みくにく

  • 虫食ひの落葉細密画の余白

    井仲めい

  • 初落葉サファリランドの仔虎の手

    黒猫かずこ

  • 落葉ひろふ隣り町から来たをんな

    さふぁい庵

  • 落葉や包丁研ぎの皺深し

    高頼かづき

  • 落ち葉たちそれぞれの樹のはなしなど

    青木みかん

  • ジッポーのこれ見よがしに落ち葉焚く

    中平保志

  • 落葉ただ踏む到着が早すぎて

    彫刻刀

  • 家計簿に落葉と風と雲の影

    長月晴日

  • 落葉踏むデモ隊結婚の自由とは

    帝菜

  • 落葉風酌の作法を子に伝え

    蓮田忍

  • 耳塞ぎたき夜は強く落葉踏む

    髙橋好美

  • 落葉踏む実朝果てた段辺り

    岳 ゼン

  • 落葉や真鍮色の猫を抱き

    ねうねうこ

  • 知らぬ間にトートの底にゐた落葉

    金田由香

  • こしかたの話山積みぬれ落ち葉

    みっちゃん

  • 捨て猫を飼ふ相談や落葉掻

    藤井天晴

  • 西は黄の東は紅の落葉掻

    小川しめじ

  • 用務員いや教頭の落葉掻き

    唯果

  • 鳥の声降り注ぐ朝川落葉

    風間 燈華

  • 陽に落ち葉かつて車で来し肉屋

    香田 野分

  • 落葉踏み集団墓地を掘り起こす

    森嶋 理子

  • 神苑の木橋に積もる落葉かな

    カバ先生

  • 寡婦となり店主となりて落葉掃く

    水野 寿香

  • 落葉鳴る「縄文展」は昨日まで

    十月小萩

  • 鉄柵にからむ落葉の薄きかな

    千原 十吾

  • 山覆ふほどの落葉を踏みゆけり

    室井双月

  • ワイパーに絡む八重洲の落葉かな

    でんきゅう

  • 落葉降る星の名前の書店まで

    小田緑萌

  • 庭落葉池の魚のヒゲが見え

    篭山眺望

  • 喃語しか話せぬ子らと落葉愛づ

    白月 かなで

  • 落葉時椅子に詩集とウヰスキー

    神谷元紀

  • ジムニーに2回踏まれてまだ落葉

    味噌山鱶

  • 探査機は月へ届かず落葉かな

    麦吉

  • 落葉踏む崩る背骨の音のよう

    亀亀子

  • 膝抱いて落葉に擬態してゐたる

    樋口滑瓢

  • 柩降ろす滑車の軋み落葉降る

    東歩

  • つま先へ小さき落葉の渦二つ

    なつふじ

  • 落葉や野に一台の錆びたバス

    風虎

  • 物臭に落葉を山へ返しけり

    川魚鮎

  • 白杖の先より落葉匂ひけり

    キートスばんじょうし

  • 進学を諦めし友おち葉おち葉

    せんだ ゆう

  • 野兎の群れゆくごとき落葉かな

    だがし菓子

  • 落葉の時雨解熱剤五日分

    ひな子桃青

  • 落葉ぞざぞざ靴を潜水艦のごと

    音羽実 朱夏

  • 落葉掃く音は仏語のさようなら

    喜祝音

  • 落葉風音楽室のショパンの絵

    南 楕円

  • でたらめの住所落葉はどこまでも

    八田昌代

  • 巫女の出す淡き蕎麦茶や落葉風

    望月 円

  • 大通りからの落葉や庭を掃く

    北欧小町

  • 落葉ふむ辞表を左手のなかに

    鈴木秋紫

  • 落葉掃く石段に良き禿び帚

    阿波の安藝

  • 落葉だけ踏んで帰るの泣くもんか

    藍創千悠子

  • 四限へと教授落葉の近道を

    蒼空蒼子

  • 落葉カシャカシャ補聴器のハウリング

    ギボウシ金森

  • 落葉踏むこの子のパパはだれだろう

    あらせもんじ

  • 路地裏に山積みの古書落葉散る

    中藤古希

  • 詩のつづき覚えられなく落葉風

    ここあ10才

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