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初級者結果発表

2023年1月20日週の兼題

鳥雲に入る

【曜日ごとに結果を公開中】

【優秀句】

  • からの巣も光満つ鳥雲に入る

    満生

  • Zealousのページに付箋鳥雲に

    鳴海薫子

  • マウスレシーバーを抜く鳥雲に入る

    天水郷

  • 廃鶏の渇き一聲鳥雲に

    川内佳代

選者コメント

家藤正人

初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。



「廃鶏の渇き一聲鳥雲に   川内佳代」

排卵期間を終えた雌鶏は鶏舎を出され「廃鶏」と呼ばれます。昔実家では鶏を飼っていたので個人的にも強く共感します。水飲み器の底は白っぽく乾いてしまっているんだろうなあ。新しい命を繋ぐために北へと帰る鳥達の自由と、地上で乾く家禽の対照的な取り合わせが切なさを増します。地上から上空への立体的な空間が見えてくるのも上手い。


「マウスレシーバーを抜く鳥雲に入る  天水郷」

「鳥雲に入る」と環境の変化を取り合わせた句は類想類句が山ほどありました。この句もその一つですが、些細な物を切り取ることで離職を連想させるささやかさが絶妙。しかも素材が現代的かつ共感度が高いのです。無線マウスの受信機は一度環境が整うとずっと差しっぱなしが基本ですからねえ。類想も描き方次第だというお手本のような一句。


「からの巣も光満つ鳥雲に入る  満生」

鳥の生態に詳しい人なら巣を見ただけでどの鳥のものかわかるかもしれませんが、そうでない人間にとっては無関係な「からの巣」だって豊かな想像への起点です。雲へ消える鳥を見上げる視線の先に発見する、樹上の不自然な木の枝の一塊。あら、ひょっとしてこれが? なんて好奇心で見つめると、枝を透けてくる光すら好奇心を満たしてくれる句材なのです。


「Zealousのページに付箋鳥雲に  鳴海薫子」

Aから始まりZで終わるアルファベット。単語帳や参考書でしょうか。数少ないZの項目に見つけた「Zealous」は「熱心な」を意味する単語です。進学や受験を控えた学生の心には、勉強に向かう熱心さを励ましてくれているように映ったかもしれません。中七名詞止めでの切れから五音「鳥雲に」と省略した形で言い止めるカッチリした展開も内容に合っています。



いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!


  • 鳥雲に入る流されしままの橋

    山田由紀子

  • 東京へ「あずさ」は傾ぎ鳥雲に

    鯨尺

  • 三合の米や鳥雲に入る日に

    古舘粋狂

  • 鳥雲にチョコレートが苦いだなんて

    兵頭紫峰

  • 鳥雲に入る蹲の細き罅

    まさを

  • 頬杖の指ひんやりと鳥雲に

    れい

  • 鳥雲に入る山靴のほてりかな

    守田jj

  • 贈らるるアメジスト鳥雲に入る

    愛ちゃん

  • 鳥雲に入る図書券の0に穴

    柳川薬缶

  • 鳥雲に入り牛は壁画に戻りけり

    手毬まりこ

  • 鳥雲に入る自由なる薬指

    あらあらた

  • 波砕け鳥雲に入る孤島かな

    嶺乃森夜亜舎

  • 鳥雲に入り栓開く炊飯器

    吉沢樰

  • 鳥雲にいりて釣竿よく垂れて

    こがね男爵

  • 鳥雲に入る口笛は羽根になる

    八田昌代

  • 鳥雲に入りてキーキー鳴る艀

    渓翠@青東高

  • 鳥雲にガイドブックは海の色

    露草

  • 鳥雲に入る行け新型の陸蒸気

    松 山陽兵

  • 鳥雲に入りタワマンの足場かな

    だいだい

  • 人柱伝へる城址鳥雲に

    金子加行

  • 十二時のアトムの調べ鳥雲に

    円錐角膜

  • 鳥雲に入る答え合わせはせぬがよい

    ギボウシ金森

  • 鳥雲に入る龍の子は乗っているか

    毬雨水佳

  • 鳥雲に入る廃戦車に描く鳩

    松山ぴの

  • 鳥雲に入り文集の荷の届く

    カフェオレ草

  • 鳥雲に入りて休講持て余す

    小藤たみよ

  • 高くたかくはしゃぐ重さよ鳥雲に

    吹田よしよし

  • 鳥雲や教会で会うひとの妻

    伊藤一翁

  • 鳥雲に入る新しき姓の印

    高保ちこ

  • 保護猫の柔らかき腹鳥雲に

    猫舌扁平足

  • 鳥雲にいづれが高き双耳峰

    矢口知

  • ひかり来て鳥雲に入る早さかな

    花はな

  • 転校の友の「ほな」の手鳥雲に

    仮名鶫

  • 牛乳の蓋わちゃわちゃと鳥雲に

    三群梛乃

  • 鳥雲に入る餅好きの父九十

    酒井香静

  • 屋上のロングトーンや鳥雲に

    三毛山タマ子

  • 信号の古き地名や鳥雲に

    角田 球

  • ステージの王よ王子よ鳥雲に

    丙 颯子

  • 戒名の「史」の字「心」の字鳥雲に

    山田どゞこ

  • 鳥雲に入る撫牛の輝輝の刻

    華風ルナ

  • 尾根に立ち外すゴーグル鳥雲に

    樋口滑瓢

  • 鳥雲に入る母子ともに無事の報

    いぬいぬい

  • 寅さん像の雪駄に触れて鳥雲に

    ViVi杏梨

  • 三年分のだるまのけぶり鳥雲に

    せんだ ゆう

  • 竪穴のかまどの跡や鳥雲に

    白川ゆう

  • 故知れぬ婚家の家紋鳥雲に

    春花みよし

  • 鳥雲に父の湯呑みの重さかな

    茨木れん

  • 鳥雲に入る育休が終わるのか

    守々胡公

  • 絵手紙の花はうす紅鳥雲に

    渡海灯子

  • 悪いのは私でしょうか鳥雲に

    土井あくび    

  • 鳥雲に入るや一人称の湖

    麦のパパ

  • 鳥雲に今朝の紅茶の柔らかし

    金治宜子

  • 城址石塁々と鳥雲に入る

    小川英坊

  • 上ばかり見てると転ぶ鳥雲に

    夏目あかり

  • 鳥雲に入る瞬間の欠伸かな

    膝丸佳里

  • 円周率は無限鳥雲に入る

    北田立緒

  • 諍いに返せぬ本や鳥雲に

    古乃池糸歩

  • 鳥雲に入るや古墳の掘静か

    PONホンダ

  • 残り火にかすかな煙鳥雲に

    竹東子

  • 鳥雲に入るコーヒーを挽く音色

    東狼

  • 鳥雲に入るパン生地に深く指

    小栗あきこ

  • 鳥雲に入る十字架の木目かな

    喜祝音

  • 道端に隻眼達磨鳥雲に

    かまど猫

  • 鳥雲に見返れば部屋がらんどう

    高山夕灯

  • 鳥雲に入る親方の止め鋏

    清瀬朱磨

  • 鳥雲に入る家なのに帰りたい

    渡辺香野

  • 消毒の鶏舎は無言鳥雲に

    山清

  • 鳥雲に入りて教習の坂上

    山月 無辺

  • 鳥雲に入りておやつにさくらラテ

    青い小鳥

  • 鳥雲に錫いろの目の犬ぽつり

    佐藤さらこ

  • 鳥雲に外に出られぬ砂時計

    福花

  • 鳥雲に入るや子の進路の意外

    野間 薫陶

  • まだ捜す次の素数を鳥雲に

    野口雅也

  • 鳥雲に古書に大きな蔵書印

    みくにく

  • 戒名のことのはななつ鳥雲に

    煉獄佐保子

  • シンバルの一打響かせ鳥雲に

    わきのっぽ

  • 鳥雲に老いて知りたる鳥のこと

    真心素秋

  • 紫煙の輪ほっほっと父や鳥雲に

    水木花水木

  • 「沈黙」に神はおるらし鳥雲に

    古賀鈴奈

  • 鳥雲に入る藍吸い上げるガラスペン

    巳智みちる

  • 鳥雲にハミング馥郁と雨気

    シュレディンガーの獏

  • 鳥雲に入り流木の溜る池

    花弘

  • 君のドナーになれず鳥雲に入る

    アナミスト

  • 鳥雲に入り木彫の鳥彫りて

    NOWARもとみな

  • 猿岩の微かな笑みよ鳥雲に

    じゅんこ

  • 鳥雲に入る戦地へと打つ「アナタ」

    タツキヨシコ

  • 鳥雲やマリーナの帆は白き列

    どこにでもいる田中

  • 鳥雲に入る鳶色の瞳を濡らす

    はたやま こう

  • 鳥雲に入り爪痕のご神木

    はちわれ猫

  • 鳥雲に入る父の骨さえ頑固

    ミテイナリコ

  • 白壁に光の斑ら鳥雲に

    宇野翔月

  • 剃り上げし首清々し鳥雲に

    浦見 若菜

  • 鳥雲に入る餞別の花重し

    研亭

  • 鳥雲にジンジャーエールの泡幽か

    広ブロ&新蕎麦 摂田屋酵道

  • 鳥雲に尼僧も双の乳房かな

    高山玲徹楚々

  • それ鼠講だよね鳥雲に入る

    山月

  • 鳥雲に入るや決算書の不思議

    山本八

  • 鳥雲に入る黒板が眠る時

    水底みみず

  • 鳥雲に入るや烏城は黒く映え

    晴矢

  • 起こされし大地歌うや鳥雲に

    想予

  • こんじきのとりこんじきのくもにいる

    足立とんび

  • 鳥雲に入る唐臼の音かろき

    竹原かよこ

  • 鳥雲に月忌の空の晴れ渡る

    加藤暖

  • 鳥雲に入るを見送るまた給油

    竹八郎

  • 右耳に海の気や鳥雲に入る

    バーバラ

  • 鳥雲に祖父の添ひ寝に聞く落語

    風蘭智子

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