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初級者結果発表

2023年3月20日週の兼題

野遊

【曜日ごとに結果を公開中】

【優秀句】

  • 尾てい骨きよく正しく野に遊ぶ

    シュレディンガーの獏

  • 野遊びやカバの欠伸のような晴れ

    花蜜伊ゆ

  • 野遊びは星ほろぶ日の午後のごと

    川屋水仙

選者コメント

家藤正人

初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。



「野遊びやカバの欠伸のような晴れ   花蜜伊ゆ」

語順の展開が独特な比喩を活かしています。上五「野遊びや」で広々とした空間を強く詠嘆。続く描写では、カバの大きな大きな欠伸がクローズアップされる……かと思いきや、中七の終わりには比喩であることがわかります。空間の広さ、カバの欠伸の巨大なのどかさ、それらが全て比喩の終着点である「晴れ」へと結びついていきます。野の水平方向の広がり、空への垂直方向の広がり。空間の立体的な広さが見えてきます。


「尾てい骨きよく正しく野に遊ぶ   シュレディンガーの獏」

いったい「尾てい骨」をどう使っているのか。具体的な描写はありません。読み手は「きよく正しく野に遊ぶ」姿を「尾てい骨」という部位をキーワードに想像して楽しみます。ただ草に寝転んでいてもいい。転げ回って尻を草の汁に染めてもいい。強い尻餅に尾てい骨を痛めてもいい。その躍動感や自由を全て保証することが「きよく正しく野に遊ぶ」ことなのです。


「野遊びは星ほろぶ日の午後のごと   川屋水仙」

明るく描かれることの多い「野遊び」ですが、こんな屈折した描き方もできるのか、と唸らされました。もう星がほろぶのだとわかっている日。その午後。明日の予定もない。時間の制約もない。インフラだって死んでいるでしょう。誰からの連絡もない。滅びを受け入れて、ただ最後の時を心ゆくまで過ごす春の野。草の青い匂いに囲まれ、退廃的な明るさのなかで過ごす姿は印象派の絵画のようですらあります。



いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!


  • 野遊にヨガ教室の始まりぬ

    かりそめのビギン

  • 野遊の子の巧みなる牛の声

    清瀬朱磨

  • 親友と呼んでも良いか野に遊ぶ

    緩木あんず

  • 野遊のここから先へ行けば落ちる

    紗千子

  • 野遊の紙鉄砲に空昏む

    浩子赤城おろし

  • 野遊びや少年空へバック宙

    しみず 茜湖

  • のあそびやどろだま15こつくるまで

    すみれ(5さい)

  • 野遊やリボンは少女の羽である

    ヒマラヤ杉

  • いつまでも夫は恋人野に遊ぶ

    竹内ダイアナ

  • 野遊やわりと本気な父の球

    ヒマラヤ杉

  • 野遊のぼた山拍動取り戻す

    周防の鼠

  • オーボエのファに震えたる野に遊ぶ

    ゆうゆう朔ら望

  • 野遊は光が風を食んだ色

    足立とんび

  • 足裏に君の黒子やピクニック

    しぶ亭

  • 野遊や防空壕の闇に入り

    永井無々

  • 野遊びの指はひかりを記憶せり

    星詩乃すぴか

  • 野遊びや母が座った場所が芯

    ぴょんばぁ

  • 野遊びやリュックを見張る学級旗

    へたおかまこ

  • 野遊のオカリナ小鳥抱くように

    あらあらた

  • 野遊を獣害柵の囲みたる

    金子加行

  • 野遊や鬼の影だらだら長い

    慈夢りん

  • 山いさみ神様の木に会いに行く

    みなみほ

  • 野遊や鳥水掻きを開きおり

    ねうねうこ

  • 野遊びの極意時計を持たぬこと

    椿 律

  • 子と行けばそこがまほろば春遊

    加田紗智

  • 野遊びや怪獣の木に十七時

    伊予素数

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