麦の秋
能研ショテカ
林 壽
喜祝音
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「麦秋や風にあらがふ大鴉 能研ショテカ」
時候の季語である「麦の秋」は具体的な映像を持ちません。映像を持たない季語と取り合わせるには具体的な映像を描写するのがセオリー。天を仰いだ視線の先には、向かい風に飛ぶ一羽の鴉。翼満々に風を受ける様を伝えて「大」の一字が効いています。風に抗う鴉の目線からは、遠く麦の熟れる広大な景色も見えているのでしょうか。
「靴音の明るき画廊麦の秋 喜祝音」
視線を誘導する語順の展開も上手い一句。足下を連想させる「靴音」から始まり、様々な靴が行き交う「画廊」という空間が立ち上がります。「明るき」は靴音の軽快さだけでなく、画廊を満たす光量や朗らかな雰囲気も伝えます。時候の季語である「麦の秋」の初夏の季感を活かしつつ、農耕と「麦」そのものからは距離を置いた描き方が内容に似合います。
「信州に荒神をりて麦の秋 林 壽」
荒神さま、荒神さん、とも呼ばれる存在は複雑な成り立ちを持つ神様です。一説には農業全般の神や竈の神とされ、火災や厄難から守ってくれるそうです。豊かな信州の地にもたらされる恵みは荒神さまの加護の賜物か。強い断定ではなく「をりて」と軽く受けて下五へと繋ぐ語りのさりげなさも上手い。ゆるっと視線が移り変わるように、広大な実りの遠景へと映像が結ばれていきます。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!
しろくも
三尺玉子
荒星笑石
一寸雄町
染野まさこ
福原あさひ
水無瀬りりー
馬場めばる
浩子赤城おろし
町田明哉
禅心大河
布施 木啄
紫月歪丸
水桜
夢々
シュレディンガーの獏
足立とんび
アナミスト
輝久
葱ポーポー
花見鳥
岩橋夕紀
佐野すずめ
玉家屋
道将 ミチ
藤原涼
紗千子
選者コメント
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「麦秋や風にあらがふ大鴉 能研ショテカ」
時候の季語である「麦の秋」は具体的な映像を持ちません。映像を持たない季語と取り合わせるには具体的な映像を描写するのがセオリー。天を仰いだ視線の先には、向かい風に飛ぶ一羽の鴉。翼満々に風を受ける様を伝えて「大」の一字が効いています。風に抗う鴉の目線からは、遠く麦の熟れる広大な景色も見えているのでしょうか。
「靴音の明るき画廊麦の秋 喜祝音」
視線を誘導する語順の展開も上手い一句。足下を連想させる「靴音」から始まり、様々な靴が行き交う「画廊」という空間が立ち上がります。「明るき」は靴音の軽快さだけでなく、画廊を満たす光量や朗らかな雰囲気も伝えます。時候の季語である「麦の秋」の初夏の季感を活かしつつ、農耕と「麦」そのものからは距離を置いた描き方が内容に似合います。
「信州に荒神をりて麦の秋 林 壽」
荒神さま、荒神さん、とも呼ばれる存在は複雑な成り立ちを持つ神様です。一説には農業全般の神や竈の神とされ、火災や厄難から守ってくれるそうです。豊かな信州の地にもたらされる恵みは荒神さまの加護の賜物か。強い断定ではなく「をりて」と軽く受けて下五へと繋ぐ語りのさりげなさも上手い。ゆるっと視線が移り変わるように、広大な実りの遠景へと映像が結ばれていきます。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!