夜長
金子加行
櫂野雫
音拍
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「父を待つ孫と星釣る夜長かな 櫂野雫」
俗に「孫俳句は難しい」と言われますが、こういう佳句を見ると要はやり方次第なのだと改めて思わされます。登場人物の関係性と背景がわかる前半、静かな時間を共有する後半。「星釣る」は海面あるいは湖面に散らばる星月の光を映像化する美しい詩語。詠嘆がしっとりと夜長の湿った闇を纏わらせて現実感を強めます。
「犬の来た日いなくなった日夜長し 音拍」
犬が来た日からいなくなった日まで、どれくらいの時間だったのかは読み手の鑑賞に委ねられています。数日の出会いと別れか、長年の家族か。あるいは犬と関わる仕事の一環なんて読みもできるかもしれません。いずれにせよ心寂しく思い出のパズルを抱えて夜長を過ごしているのです。上五をあえて字余りにして表す繊細な心模様。
「本を読む勘を夜長に戻しつつ 金子加行」
本好きとしてほろ苦く共感……。しばし読書から遠ざかり、久々に本を手に取ると自らの読書体験に違和感を感じます。身体の動かし方を忘れてしまったような感覚はまさに「勘」とも呼ぶべきもの。もどかしくもページを捲り、失った勘を取り戻そうと時間をかけてもがく。そんなままならなさも含めて愛しい、読書の秋のとっぷりと深い夜長であります。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!
三緒破小
煉獄佐保子
山内蛙
秋月あさひ
粒野 餡子
田中つきひ
緑 萃生
川屋水仙
窪田よっこばあ
賀茂ももか
赤坂みっけ
柚子 檸檬
松山松男
木化石
花蜜伊ゆ
山月
花咲春
高保ちこ
となりの天然石
アナミスト
水上ルイボス茶
すずき 弥薫
ひな子桃青
高山冷徹楚々
志都はねこ
高原未春
鳥乎
あらあらた
花星壱和
田中知宏
灰田兵庫
満月堂
ひめのつばき
しまのなまえ
咲間元文
花見鳥
dare!?のがれ 明美
ピノ ピノ子
かなの りえこ
選者コメント
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「父を待つ孫と星釣る夜長かな 櫂野雫」
俗に「孫俳句は難しい」と言われますが、こういう佳句を見ると要はやり方次第なのだと改めて思わされます。登場人物の関係性と背景がわかる前半、静かな時間を共有する後半。「星釣る」は海面あるいは湖面に散らばる星月の光を映像化する美しい詩語。詠嘆がしっとりと夜長の湿った闇を纏わらせて現実感を強めます。
「犬の来た日いなくなった日夜長し 音拍」
犬が来た日からいなくなった日まで、どれくらいの時間だったのかは読み手の鑑賞に委ねられています。数日の出会いと別れか、長年の家族か。あるいは犬と関わる仕事の一環なんて読みもできるかもしれません。いずれにせよ心寂しく思い出のパズルを抱えて夜長を過ごしているのです。上五をあえて字余りにして表す繊細な心模様。
「本を読む勘を夜長に戻しつつ 金子加行」
本好きとしてほろ苦く共感……。しばし読書から遠ざかり、久々に本を手に取ると自らの読書体験に違和感を感じます。身体の動かし方を忘れてしまったような感覚はまさに「勘」とも呼ぶべきもの。もどかしくもページを捲り、失った勘を取り戻そうと時間をかけてもがく。そんなままならなさも含めて愛しい、読書の秋のとっぷりと深い夜長であります。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!