俳句ポスト365 ロゴ

初級者結果発表

2024年4月20日週の兼題

薄暑

【曜日ごとに結果を公開中】

【優秀句】

  • 薄暑けふ大樹の下に指す将棋

    加藤遊鹿

  • 鶏糞のなんと重たき薄暑かな

    響楽境

  • 日輪の淵に薄暑の鯉澱む

    かい みきまる

選者コメント

家藤正人

初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。



「鶏糞のなんと重たき薄暑かな   響楽境」

堆肥として製品化された鶏糞を使う場面とも読めますが、個人的には自ら世話をしている光景と読みたい。薄暑の鶏小屋の乾いた埃っぽさ、独特の匂い、足下を逃げ回る鶏たち。スコップで掬い取る鶏糞は湿って、見た目以上にずっしりと持ち重ります。なんと重いことだろう、という率直な感慨は「薄暑かな」の詠嘆によって、作者との共通体験として読者へと手渡されます。


「日輪の淵に薄暑の鯉澱む   かい みきまる」

日輪とは太陽のこと。天のお日様を描写しているかと思いきや、下五で、鯉の棲む水面の日輪ですよ、と展開する語順が上手い。格調高い言葉で的確に映像化できています。薄暑の日差しが形作る日輪のエッジ、ちょうどそこに重なるように沈んで動かない鯉の巨体。鯉の様子は「澱む」の一語に託し語りを最小限にすることで「薄暑」が主役の座を占めています。


「薄暑けふ大樹の下に指す将棋   加藤遊鹿」

この句の世界には他の季語も存在し得るはずです。大樹の存在を活かすなら「緑陰」や「木下闇」だってあり得た。ですが今回の主役は「薄暑」なのです。今日はまた一段と好天、将棋をするにも汗ばむほどです。陽の下じゃたまらん、樹の下でやろうかい、とでも示し合わせたか。そんな人物のやり取りや、昨日との環境の違い。人の営みの背景を想像させる余白を「薄暑」がもたらしてくれました。



いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!

  • 鉛筆を雲に突き刺す薄暑かな

    三杏樹

  • 厨薄暑砥石に流る水の音

    近江菫花

  • 雲の名の答え合わせをして薄暑

    若林かな

  • ほどうきょうダッシュはくしょのげこうはん

    すみれ(6さい)

  • 水兵の帽子眩しき薄暑かな

    いぬいぬい

  • 床薄暑吾から薬のにほひして

    夏村波瑠

  • 薄暑かな光の重さ手のひらに

    永田すずらん

  • 薄暑来る装具外せば膝ひやり

    古川 寿々恵

  • 夕薄暑まあるく滲みて河童臭

    広ブロ&新蕎麦・摂田屋酵道

  • あかるさや鏡のうしろにゐる薄暑

    案山子>広ブロ俳句部

  • 提琴の弓に揺らるる背や薄暑

    澤木樹心

  • たましいがドーナツくぐる薄暑かな

    直海麻乃

  • 白ワイン選ぶ薄暑の帰り道

    いとう小枝

  • 鎌倉や薄暑の落雁は甘く

    雨水 二三乃

  • 地球儀のロシア小さき薄暑光

    青星ふみる

  • みどり子の耳ほの匂ふ薄暑かな

    美竹花蘭

  • 背表紙の退色あをき薄暑光

    毬雨水佳

  • 眠る子に肩を貸したる薄暑かな

    いもがらぼくと

  • 薄暑光洗い損ねたガラスペン

    堕なの。

  • 先生とまだ話せない薄暑かな

    藤井かすみそう

  • 薄暑なりヨコハマの路地坂ばかり

    ねうねうこ

  • 東京は風止まぬ街薄暑来ぬ

    サツキトラヲ

  • 理科室のとがつたにほひ薄暑かな

    森ともよ

  • 夕薄暑指すべらかに点字読む

    はちわれ猫

  • ハイボール九十円也夕薄暑

    あまのようこ

  • 軽子坂下りキネマへ薄暑かな

    ichihoppe

  • 薄荷飴てふ輝石あり薄暑光

    小田緑萌

  • カーテンの区切る薄暑の寝息かな

    喜祝音

投句はこちら