薄暑
加藤遊鹿
響楽境
かい みきまる
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「鶏糞のなんと重たき薄暑かな 響楽境」
堆肥として製品化された鶏糞を使う場面とも読めますが、個人的には自ら世話をしている光景と読みたい。薄暑の鶏小屋の乾いた埃っぽさ、独特の匂い、足下を逃げ回る鶏たち。スコップで掬い取る鶏糞は湿って、見た目以上にずっしりと持ち重ります。なんと重いことだろう、という率直な感慨は「薄暑かな」の詠嘆によって、作者との共通体験として読者へと手渡されます。
「日輪の淵に薄暑の鯉澱む かい みきまる」
日輪とは太陽のこと。天のお日様を描写しているかと思いきや、下五で、鯉の棲む水面の日輪ですよ、と展開する語順が上手い。格調高い言葉で的確に映像化できています。薄暑の日差しが形作る日輪のエッジ、ちょうどそこに重なるように沈んで動かない鯉の巨体。鯉の様子は「澱む」の一語に託し語りを最小限にすることで「薄暑」が主役の座を占めています。
「薄暑けふ大樹の下に指す将棋 加藤遊鹿」
この句の世界には他の季語も存在し得るはずです。大樹の存在を活かすなら「緑陰」や「木下闇」だってあり得た。ですが今回の主役は「薄暑」なのです。今日はまた一段と好天、将棋をするにも汗ばむほどです。陽の下じゃたまらん、樹の下でやろうかい、とでも示し合わせたか。そんな人物のやり取りや、昨日との環境の違い。人の営みの背景を想像させる余白を「薄暑」がもたらしてくれました。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!
三杏樹
近江菫花
若林かな
すみれ(6さい)
いぬいぬい
夏村波瑠
永田すずらん
古川 寿々恵
広ブロ&新蕎麦・摂田屋酵道
案山子>広ブロ俳句部
澤木樹心
直海麻乃
いとう小枝
雨水 二三乃
青星ふみる
美竹花蘭
毬雨水佳
いもがらぼくと
堕なの。
藤井かすみそう
ねうねうこ
サツキトラヲ
森ともよ
はちわれ猫
あまのようこ
ichihoppe
小田緑萌
喜祝音
選者コメント
家藤正人選
初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。
「鶏糞のなんと重たき薄暑かな 響楽境」
堆肥として製品化された鶏糞を使う場面とも読めますが、個人的には自ら世話をしている光景と読みたい。薄暑の鶏小屋の乾いた埃っぽさ、独特の匂い、足下を逃げ回る鶏たち。スコップで掬い取る鶏糞は湿って、見た目以上にずっしりと持ち重ります。なんと重いことだろう、という率直な感慨は「薄暑かな」の詠嘆によって、作者との共通体験として読者へと手渡されます。
「日輪の淵に薄暑の鯉澱む かい みきまる」
日輪とは太陽のこと。天のお日様を描写しているかと思いきや、下五で、鯉の棲む水面の日輪ですよ、と展開する語順が上手い。格調高い言葉で的確に映像化できています。薄暑の日差しが形作る日輪のエッジ、ちょうどそこに重なるように沈んで動かない鯉の巨体。鯉の様子は「澱む」の一語に託し語りを最小限にすることで「薄暑」が主役の座を占めています。
「薄暑けふ大樹の下に指す将棋 加藤遊鹿」
この句の世界には他の季語も存在し得るはずです。大樹の存在を活かすなら「緑陰」や「木下闇」だってあり得た。ですが今回の主役は「薄暑」なのです。今日はまた一段と好天、将棋をするにも汗ばむほどです。陽の下じゃたまらん、樹の下でやろうかい、とでも示し合わせたか。そんな人物のやり取りや、昨日との環境の違い。人の営みの背景を想像させる余白を「薄暑」がもたらしてくれました。
いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!