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初級者結果発表

2024年6月20日週の兼題

夏休

【曜日ごとに結果を公開中】

【優秀句】

  • 病院の枕は低い夏休み

    髙田佳典

  • 野暮に鳴る取る切る怒る夏休

    渡辺純全

  • 夏休ニワトリ小屋の鍵の熱

    みたまん

選者コメント

家藤正人

初級コースの金曜日掲載は中級への昇級の目安。中でも特に目を惹く句についてピックアップコメントをお届けします。



「夏休ニワトリ小屋の鍵の熱   みたまん」

「夏休」の間、学校の鶏の世話当番を任されたのか、あるいは田舎の家に帰っているのか。その頃の記憶と実感を指先に留めているような一句です。ニワトリが逃げないように下ろした金属の鍵。陽に灼けた鍵に触れた瞬間の、熱に反射的に手を引っ込める動きまで追体験させてくれます。小さな体験がもたらす強いリアリティの力。


「野暮に鳴る取る切る怒る夏休   渡辺純全」

俳句のいわゆる定石の一つに「一句一動詞」という言葉がありますが、そんな定石一切無視! 「鳴る取る切る怒る」と動詞を四つも畳みかけております。それでいて破綻しておらず、季語「夏休」が背景を想像する余白を生み出しているのだから驚きです。夏休中のレジャー? 甘酸っぱい青春の一場面? どんな場面を邪魔する「野暮」でありましょうかねえ。うふふ。


「病院の枕は低い夏休み   髙田佳典」

多くの人が「夏休み」に対して抱くであろう溌剌とした明るさや楽しさを逆手にとったタイプの句。せっかくの夏休みを病院で過ごす境遇のなんとお気の毒なことか……。そんな中でも発見を忘れないのが見上げた俳人精神です。家の枕とは違う「病院の枕」の低さ。見慣れない天井の下に仰臥する不安。「夏休み」に得たほろ苦い経験知が平易な言葉だからこそ沁みます。



いずれもお見事でした。自信がついたら中級にもぜひ挑戦してみましょう!

  • 海牛を踏んでもひとり夏休

    孝崎有辺

  • 不機嫌な犬を預かり夏休

    北田立緒

  • 金色の蛹を見たよ夏休み

    安曇 平

  • 夏休み島を出るには四時間半

    永田すずらん

  • 夏休み借りた本に詩の書き込み

    ドキドク

  • 夏休赤城はすでに暮れにけり

    うどん大明神

  • あの子のね瞳は翡翠夏休

    城扇尋

  • 暗記帳繰る深爪や夏休

    飯沼深生

  • 病室で友達出来た夏休

    髙田 佳歌

  • どの木ともおしゃべりしたい夏休

    むさし野まさこ

  • 校門の赤錆熱き夏休

    九天

  • ぽんこつな空うかうかと夏休み

    蝦夷野ごうがしゃ

  • 夏休家も苗字も変わる友

    芝歩愛美

  • 砂文字の消えゆくやうに夏休

    千華

  • 雲に名が星に名があり夏休み

    風薫子

  • 夏休み籠に造花の満つるまで

    かときち

  • ギプス痒し二階から見る夏休

    霧賀内蔵

  • 夏休み神社の裏の杉切られ

    高田多寡太

  • 担任の奥さんきれい夏休

    風かおる

  • トランペットに負けた日の疵夏休

    小田緑萌

  • 夏休はひんやりマットの気怠さ

    むらのたんぽぽ

  • 愛犬を埋めたスコップ夏休

    足立とんび

  • 夏休千本ノックのごとドリル

    三角山子

  • 山羊の目がはにかんでいる夏休み

    夢散人

  • ソース味の祖母の焼きめし夏休み

    どれみすみ

  • この定理美しいよね夏休

    藤すみ

  • 錆付きし雲梯長し夏休み

    月奈利

  • 淋しさに輪郭は無く夏休

    濱野 五時

  • 兄ちゃんとハスキー洗う夏休

    花星壱和

  • はるちゃんに秘密ができた夏休み

    岡田一竿

  • けんだまのおしえしはんだなつやすみ

    なのはな(6さい)

  • 箸置きは昨日の貝がら夏休み

    藤田かのん

  • 飯盒のめしに芯あり夏休

    尾花照子

  • 夏休み上手になった卵焼き

    そら野なずな

  • 夏休み草軽の駅星だらけ

    渡邉 まつぼっけ

  • 哲学のぐにゃりと曲がる夏休み

    寸草

  • 百五十餃子を包み夏休

    寺尾向日葵

  • 四つ這いで登る砂丘や夏休

    千和ニノ

  • 夏休み村一番の水旨し

    ハマゴー大佐

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